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令和8年(2026年)3月5日(木) / 日医ニュース

今改定の検証をしつつ、医療界が一丸となって国民の生命と健康を守っていく姿勢を示す

今改定の検証をしつつ、医療界が一丸となって国民の生命と健康を守っていく姿勢を示す

今改定の検証をしつつ、医療界が一丸となって国民の生命と健康を守っていく姿勢を示す

 中医協総会が2月13日に開催され、令和8年度診療報酬改定に関する答申が取りまとめられたこと(別記事参照)を受けて、日本医師会では同日に日本歯科医師会、日本薬剤師会並びに四病院団体協議会と相次いで合同記者会見を開催した。
 松本吉郎会長は、「インフレ下での『道しるべ』となる大変重要な診療報酬改定となった」との認識を示した上で、今回の改定が国民へのより良い医療提供につながるように検証を行いながら、引き続き医療界が一丸となって国民の生命と健康を守っていく姿勢を示した。

三師会合同記者会見

 松本会長は令和8年度診療報酬改定の改定率決定までの議論に関して、(1)「骨太の方針2025」を踏まえ、インフレ下における賃金・物価上昇への対応を「別枠」で確保する、(2)適正化等の名目により医療費のどこかを削って財源を捻出するのではなく、純粋に財源を上乗せする、いわゆる「真水」による思い切った対策を行う、(3)令和7年度補正予算の土台を「発射台」とする―ことを各方面に求めるとともに、昨年には「国民医療推進協議会総会」を複数回開催した他、11月には「国民医療を守るための総決起大会」を開催。医科・歯科医療機関及び薬局等が置かれている難局を乗り越えるべく、43団体が一丸となって対応してきたことなどを説明。
 「その結果、公定価格で運営されている医療・介護分野は、賃金・物価上昇分を価格に転嫁することができないため、経営状況が著しく逼迫(ひっぱく)しているという窮状に理解が得られ、令和8年度診療報酬改定は、『別枠』『真水』『発射台』の三つの主張に対応した、インフレ下での今後の『道しるべ』となる極めて重要な改定となった」として、高市早苗内閣総理大臣を始めとする国会議員、行政関係者、その他、医療界にとって力強い後押しとなった各方面の関係者に改めて感謝の意を表明。その上で、「国民の生命と健康を守るという、我々医療者の使命に対する大きな期待の表れであり、日本医師会は総力を挙げて取り組んでいく」とした。
 今回の改定の大きなポイントについては、社会保障審議会医療部会・医療保険部会で取りまとめられた、「令和8年度診療報酬改定の基本方針」において重点課題として位置付けられた「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」であると指摘。
 賃上げについては、病院における入院ベースアップ評価料の届け出が9割を超えていることを受け、令和6・7年度分は入院料に溶け込ませ、令和8・9年度分の評価が新たに設定されることとなった一方で、外来・在宅ベースアップ評価料については、医科診療所では4割の届け出にとどまっていることから、初・再診料に溶け込ませることができなかったことに言及。「今後、更に外来・在宅ベースアップ評価料の届け出が増え、各医療機関等の従事者の賃上げにしっかりと反映され、人材流出に一定の歯止めが掛かるよう、日本医師会としても、各医療機関への周知徹底、届け出の呼び掛けに努めていく」とした。
 物件費対応については、「これまでの消費税対応を参考に、令和8年度以降の物価上昇への対応を、施設類型ごとの費用関係データ等に基づき配分するとともに、令和6年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応も行われ、各医療機関に、できるだけ公平に配分されるよう検討されたものであると理解している」とした上で、十分とは言い切れないが、一定の評価になったものとの認識を示した。
 ICT、AI、IoT等の活用について、業務効率化やカンファレンス等、連携強化が図られるような対応が行われることになった点に関しては、以前より新たなシステム導入において、導入費用のみならず、ランニングコストや機器の入れ替え費用についても医療機関等の負担となっていたことから、今回、一定程度の前進が見られたとの認識を示した。
 入院については、「『新たな地域医療構想』に先行して対応する部分もあるように思われる」とした上で、これまでの看護師配置だけでの評価区分に加え、①他の医療職種が協働して病棟業務を行う新たな体制の評価②救急搬送件数や全身麻酔手術件数に視点を置いた病院機能に着目した施設基準の設定③専従要件の緩和―など、今後の生産年齢人口の更なる減少に備えた、新たな評価体系を取り入れた点について触れ、「今後、しっかりと検証していく必要がある」とした。
 その上で松本会長は、「今回の改定がインフレ下での『道しるべ』となる大変重要な改定になった」と改めて述べるとともに、「インフレ下において、賃金上昇・物価高騰を価格に転嫁できない公定価格で運営されている医療機関等に対し、今回の対応が医療現場でどのように反映されるのか、今後、中医協等で検証・分析していく必要がある」とし、「我々、医療団体としても、しっかりと足元の状況を捉え、議論の場に届けていく責務があると考えている」と強調。同時に、今回の改定に関わった関係者に改めて謝意を示し、国民の生命と健康を守る安心・安全の医療提供体制が引き続き実現されるよう、日本の医療を支える三師会として、相互に連携し、団結していく決意を示した。

日本医師会・四病協合同記者会見

260305a2.jpg 松本会長は、中医協で行われた令和8年度診療報酬改定の答申を受け、(1)物件費の高騰を踏まえた対応、(2)賃上げに向けた評価の見直し、(3)患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備(入院の見直し)、(4)かかりつけ医機能の評価―を医科部分のポイントに挙げた。
 (1)と(2)ではまず、診療報酬改定が長期間、デフレ下で行われてきたことで、近年の急激なインフレに診療報酬改定が対応できていないことによって、病院の約7割、診療所の約4割がそれぞれ赤字という、かつてない異常事態を生じさせたことなどに言及。特に多くの医療従事者を抱え、より高度な医療を提供するための人員配置、医療設備への投資が必要となる病院の経営に顕著に表れたとした。
 一方で、地域の医療は病院だけでは成り立たないとし、「病院と診療所が互いに役割分担や連携をしながら、地域を一体的に面として支えているものであり、その差はあっても病院・診療所共に配慮が必要だ」と指摘。その上で「今回の改定の物件費・賃上げの対応は、病院に重点を置きつつ、診療所に対しても評価されたものだ」と強調。今回の対応がしっかりと医療従事者の賃金改善に反映されるよう、各医療機関にその対応を要請した他、全ての医療機関で物件費や賃上げに関する評価が活用できるよう、日本医師会としても周知等を図る姿勢を示した。
 (3)では、今回の改定の特徴として、救急搬送件数がさまざまな項目の評価対象となっている点を挙げ、新設された「急性期病院一般入院基本料」などの要件に一定の救急搬送件数が求められていることに言及。この措置により、3次救急病院に救急搬送が集中すれば、2次救急を支える地域の中小病院が機能しなくなる恐れがあるとし、「地域の医療提供体制の崩壊を防ぐためにも、厚生労働省には十分な検証をお願いしたい」と述べるとともに、場合によっては軌道修正を図る対応を求める必要性も示した。
 加えて、生産年齢人口の減少に伴う医療従事者の確保の制約が増す中で、これまでの看護師配置による入院基本料の評価について、他の医療職種がそれぞれの専門性を発揮し、協働して病棟業務を行う体制を評価する「看護・多職種協働加算」が新設されたことは「新たな試みだ」として、評価する考えを示した。
 更に、若手の医師が減少しており、かつ医療提供体制の確保が必要とされる診療科の医師を対象として、勤務環境・処遇改善を行うとともに、研修体制を整えている医療機関を評価する「地域医療体制確保加算2」や、地域の基幹的な医療機関で、高度手術を実施する体制を整備し、外科医の勤務環境の改善を図った上で、当該手術を実施した場合の加算として「外科医療確保特別加算」が新設された点に言及。「これは特定の診療科について、特別な評価を行う新たな試みだが、具体的な対応はある程度、医療機関の裁量に委ねられていることから、対象の医療機関においては点数設定の趣旨をご理解頂き、医師の働き方改革及び診療科偏在対策としての効果が発揮されるよう、対応をお願いしたい」と呼び掛けた。
 加えて、今回の改定で導入された新たな対応については、今後しっかりと調査・検証を行い、次回以降の改定につなげていく必要性を強調した。
 (4)では、前回改定で大幅な見直しが行われた「生活習慣病管理料」などについて、検証調査の結果から不合理な取り扱いが見直されたことに言及。具体例として、①患者・医療機関の双方から「大変負担である」と指摘があった患者署名を不要とする②生活習慣病と直接的な関係の乏しい疾患に関する医学管理等について、包括範囲から除外とする―点を挙げた上で、「より質の高い疾患管理を推進する観点で見直されたことは評価できる」と述べた。
 最後に、今回の改定が国民へのより良い医療提供につながるように十分な検証を行いながら、三師会や四病協などの各種医療関係団体と共に、医療界一丸となって国民の生命と健康を守っていく姿勢を強調した。

260305a3.jpg 岡俊明日本病院会副会長は、①ベースアップ評価料における病院の事務職員の追加②入院物価対応料等の新設―を高く評価した上で、「令和9年度には、ベースアップ評価料、物価対応料が2倍になることが盛り込まれた点に関しても、物価や人件費が年ごとに上がっている中で、このような形で対応頂いたことは評価したい」と述べた。
 その一方で、物価高騰のスピードは我々の予想を上回っていることもあるとし、「今後の春闘や人事院勧告の数字を見て、本当に今回の対応で他産業に追い付いていけるかはしっかり検証していく必要がある」とした。
 急性期・高度急性期入院料の評価として新設された「急性期病院一般入院基本料」にも言及。救急車を受け入れることによって、利益率の悪化に歯止めがかかることに期待感を示すとともに、この措置についても検証の必要性を指摘した。

260305a4.jpg 猪口正孝全日本病院協会副会長は、今回の改定によって、特に急性期の入院料が改善することに期待感を示した上で、「急性期拠点を担うような大きな病院にはかなり手厚い評価となっていることは分かるが、民間の中小病院の2次救急レベルの病院にとってどうなのかは、今後シミュレーションをしてみないとよく分からない部分がある」と述べるなど、どの程度良い影響が出てくるか状況を見極める姿勢を示した。
 その他、ICTやAIの利活用による業務の効率化を図った場合に、配置基準を柔軟化する規定が盛り込まれたことなどについては、「ICT・AIを促進していくだけでなく、今までの診療報酬体系とは異なる視点が入ってきたと歓迎している。費用面に関しては特に診療報酬の中であてがわれているわけではないので、その部分も考慮して頂けるとありがたい」と述べた。

260305a5.jpg 太田圭洋日本医療法人協会副会長は、「急性期病院一般入院基本料」「急性期総合体制加算」「看護・多職種協働加算」の新設の他、「地域包括医療病棟入院料」の見直しなどを踏まえ、「見直しが多岐にわたる大規模な改定となった」と指摘した。
 更に、今回の改定率にも言及。近年にない高い水準に設定されたことに謝意を示した一方で、「本体3・09%は、令和8年度には2・41%、令和9年度は3・77%となっており、薬価等のマイナス0・87%を踏まえたネット改定率では令和8年度は1・54%の増加、令和9年度はそこから1・36%の増加に過ぎない。この数値は想定される令和8年度、令和9年度の物価上昇率以下だ」と説明した。
 更に医療費の対GDP比にも触れ、医療費の自然増分を考慮しても令和8年度以降も横ばいか、緩やかに低下していくことが予想されるとし、「決して医療機関にとって容易な経営環境にはない」として、引き続きの対応を求めた。

260305a6.jpg 平川淳一日本精神科病院協会副会長は、精神保健行政の方向性として、入院中心から地域生活支援がうたわれ、退院支援や病床削減ばかりを評価する改定が続いてきたとし、「小規模病院の多くが赤字病院であるという現実があり、ダウンサイズは病院存続の危機を招きかねない状況だ」と説明。その上で、今回の改定でダウンサイズやその先の小規模病院を評価した「精神科地域密着多機能体制加算」が新設されたことは「一つの希望ができた」と評価した。
 また、精神科の入院対応は精神保健福祉法にのっとり、人権に配慮した複雑な手続きが必要で、入院後も継続されることにも言及。「急性期の段階でかなりの手間が必要だが、現状では正当な評価になっていないと考えている。医療保護入院、措置入院など、本来国が行うべき法的な入院に対する評価については、今後も正当な評価になるように働き掛けていきたい」と述べた。

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