中医協総会が9月10日に開催され、(1)歯科医療(その1)、(2)調剤(その1)、(3)費用対効果評価専門組織からの報告―について、それぞれ議論が行われ、次期改定に向けた1巡目の総論的な検討を終えた。
総会の最後には、令和3年に就任以来、長きにわたって中医協委員を務め、当日退任することになった長島公之常任理事があいさつを行った。
同常任理事は冒頭、「国民の幸福という同じ目標に向かい、緊張感を持ちながら、真摯(しんし)な議論を行う貴重な時間を共に過ごすことができた」として、関係者に謝意を示した。
その上で、中医協委員の任期中を振り返り、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから5類感染症への移行やインフレの進行など、医療を取り巻く大きな変化があった中で、特に印象に残っていることとして医療DXの急速な進展を挙げ、①コロナ禍を契機にして、ごく短期間にオンライン資格確認等システムが全国のほとんどの医療機関・薬局に導入され、日本中をつなぐ医療専用の安全なネットワーク網が整備された②患者自身もマイナポータルを通じて情報を把握できるようになり、患者が医療の主役となる環境が整備された―ことに言及。「30数年間にわたって思い続けてきた夢が実現できたことで、大変感激している。これからの日本の医療の大きな変革期になった」とした。
また、今後については、医療DXや遠隔医療、生成AI、ビッグデータ、PHRなど、新技術を適切に活用することが医療に良い方向の変革をもたらす一方で、中医協でも重要なテーマになると指摘。「スピード感は重要だが、拙速(せっそく)に進めて国民や医療現場に混乱や不安・不信を招けば最大のブレーキとなる。また、医学的な有効性や必要性、特に安全性を優先すべきであり、利便性や効率性のみを重視した安易な拡大はすべきではない」と釘を刺した。
その他、同常任理事は「公的医療保険により、国民に安心・安全で質の高い地域医療を安定的に継続して提供することこそが国民にとっての最大の幸福・利益である」と強調。「皆保険の持続に当たって財政は極めて重要であるが、財政のみを重視して必要な医療が提供できなくなれば、国民にとっては不幸なことであり、本末転倒である」とした。
更に、医療機関の経営が危機的な状況にある中で、中医協で決める診療報酬改定が地域医療に与える影響は今まで以上に大きくなっているとし、中医協委員と事務局に対して、「診療報酬改定の結果が地域医療に与える影響、特に悪影響については、その決定を行った者が責任を負うことを自覚すべき」と強調。中医協委員に対しては、冷静な頭と温かい心、広い視野と高い志を持ち続けることを、また、中医協に対しては、外部からの制限を受けることなく、その本来の役割を十分に発揮し、国民の幸福を守っていくことを、それぞれ求めた。
調査実施小委、薬価専門部会、費用対効果評価専門部会を担当―黒瀬常任理事
なお、長島常任理事に代わって、中医協委員には黒瀬巌常任理事が就任し、9月17日に開催された総会から出席した。
委員交代に伴い、茂松茂人副会長は引き続き、診療報酬基本問題小委員会、保険医療材料専門部会を、江澤和彦常任理事は調査実施小委員会、基本問題小委員会、薬価専門部会、費用対効果評価専門部会を、黒瀬常任理事は調査実施小委員会、薬価専門部会、費用対効果評価専門部会を、それぞれ担当することになった。