

城守国斗常任理事は5月19日、「健康保険法等の一部を改正する法律案」について審議が行われている参議院厚生労働委員会に参考人として招かれ、医療保険制度の給付と負担の在り方や、妊娠・出産に対する支援の強化などに関する日本医師会の考えを説明した。
城守常任理事はまず、国民皆保険制度の理念について、全ての国民が公的皆保険制度の下で何らかの保険に加入して、自らの疾患等のリスクに備えるとともに、他の人の疾患等のリスクを皆でカバーする、いわゆる「相互扶助」的役割を持つものであると整理。「所得の多寡によらず、受ける医療は公平に」という考え方であり、「小さなリスクは、受診時に自己負担分」で、「大きなリスクは、高額療養費制度」で対応するというものであるとした。
また、平成16年の大臣合意により、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」とされており、これが公的保険の考え方であると強調。財務省等を中心とする、「大きなリスクは共助中心、小さなリスクは自助中心」という民間保険の考え方が一部にあることを危惧した上で、「必要かつ適切な医療は保険診療により確保するということを、この場で改めて確認しておきたい」と前置きした。
財源の確保については、「税金・保険料・自己負担」の三つしかなく、このバランスを考え、病に苦しむ患者の自己負担のみを上げないことや低所得者等に配慮することが不可欠だと強調。「『所得の多寡にかかわらず同じ医療』と『金持ちほどいい医療』の、理想のバランス点はどこにあるのかという、まさに負担と給付の議論において現時点の一定の決着を図るのが、今回の健康保険法等の一部を改正する法律案である」との認識を示した。
その上で、以下のとおり、同法律案の内容に関して日本医師会の見解を述べた。
(1)OTC類似薬の保険給付見直し
保険適用内とはいえ、一定の患者自己負担が追加発生することは間違いない。子ども、がん患者や難病患者、低所得者、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える患者などへの配慮を改めてお願いしたい。
(2)妊娠・出産に対する支援の強化
一部では「出産の保険化」という誤った理解がされているが、正しくは「標準的な出産費用の自己負担無償化」である。検討会の議論において、赤字の産科医療機関が増加して地域医療から撤退したら、そもそも出産できる環境自体が消失してしまうことを調査結果等も踏まえて主張し続けた結果、産科医療機関の窮状が理解され、検討会の取りまとめには、「標準的な出産費用の自己負担無償化」と共に「安全で質の高い周産期医療提供体制の確保の両立」と記載され、妊産婦の経済的支援のみならず、産科医療機関の存続が明確化された。
具体的な給付水準については、法改正を踏まえ、秋以降に議論が本格化すると思うが、十分な財源を確保していただきたい。また、当分の間、現行の出産育児一時金の仕組みも併存し、施設単位で選択が可能となるが、可能な施設から新制度に移行していくこととされているので、国においてしっかりと周知を図り、混乱のないようにしていただきたい。
(3)国民健康保険制度改革の推進
国民健康保険組合に係る国庫補助率は平成28年度から5年掛けて13%にまで既に引き下げられているが、今後更なる引き下げが検討されていることに対し、合理的な基準を設定し、各組合が努力の結果によっては補助削減の対象とならないよう、松本吉郎会長が上野賢一郎厚生労働大臣に要望書を手交した。
医師国保組合には医師のみならず、医療機関に勤務する医療従事者やその家族も加入しており、従業員の福利厚生の面でも重要。補助率の削減については慎重な対応を求めたい。
(4)高額療養費制度の在り方
患者団体も参加している「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」での議論に委員として参画し、議論を尽してきた。医療費の財源は、「税金による公助」「保険料による共助」「患者の自己負担による自助」の三つしかなく、その中でどのようにバランスを取っていくか。病に苦しむ患者の自己負担のみを上げないことに加え、低所得者等にしっかりと配慮することも不可欠である。
(5)医療機関の業務効率化・勤務環境改善への支援
令和7年度補正予算において措置されたが、医療分野における生産性向上に対する支援については、補正予算ではなく当初予算で対応すべきである。
最後に城守常任理事は、「今後も給付と負担の議論は続くものと思われるが、その際は、デフレ下のコストカット型経済を踏襲するのではなく、高市早苗内閣総理大臣の掲げる『攻めの予防医療』など、インフレ下の令和8年度予算編成を踏襲した議論をしっかりと行っていただきたい」と要請した。
その後、城守常任理事を含む3人の参考人に対して、各党の代表者8人から質問がなされた。
医療費財源に関する質問に対しては、「税金・保険料・自己負担のうち、高額療養費では自己負担が問題になっており、保険料も現役世代の負担の観点から厳しい世論があり、残っている財源は税しかない」と指摘。国民皆保険制度を守るためにも、国民から財源割合に関する議論への機運が高まることが望ましいとした。
人口減少地域における医療機関の存続に関しては、民間では運営が厳しいため公的な医療機関が役割を果たすことになるとした上で、「オンライン診療など医療DXを活用した対応になる」との見方を示した。また、「国の支援は必要になる一方、中山間地域においては、住民側において集住化も一つの選択として検討が求められるのではないか」と述べた。
出産費用の無償化による医療機関への影響については、「出産に関する標準的な分娩(ぶんべん)費、さらには現金給付の水準がいくらになるのか、それによって運営できるのかというのが医師側の懸念だと思う」と述べ、各病院、地域の医療機関の状況も見ながら、今後の議論に臨んでいく姿勢を示した。
なお、当日の参考人質疑の模様を収録した動画は「参議院インターネット審議中継」に掲載されていますので、下記URLからご覧ください。
動画はこちらから:https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php



