

長島公之常任理事は6月10日の定例記者会見で、去る5月26日に、金澤知徳医療IT委員会長(熊本県医師会副会長)から松本会長に答申が手交されたことを報告。答申については今期の諮問「医療DXを現場で活用するための医師会の役割」を受け、全9回の委員会を経て取りまとめられたもので、「総論(はじめに)」「各論」「提言」の3部構成となっているとして、その内容を項目ごとに次のように紹介した。
【総論】
政府が「医療DX令和ビジョン2030」の下、オンライン資格確認を始めとする基盤整備を急速に進めていることに触れた上で、医療DXについては構想から実装の段階に移行しつつあることに言及。医療DXは単なるデジタル化ではなく、医療の質向上と効率化を同時に実現する社会変革と定義している他、推進の背景には、「少子高齢化」「医師偏在・地域格差」「災害・感染症対応の必要性の高まり」が同時に進行していることが挙げられるとしている。
また、医療DXの実践の場となる医療現場に関しては、「診療所、病院、在宅医療、救急医療、災害・パンデミック対応時の避難所、介護施設など多様な医療提供を行う場」と定義。医療DXの目的は「医療の質・安全性向上」「医療従事者の負担軽減」と整理し、医療現場に混乱を来さないよう、拙速な導入を避け、慎重に進めるべきという日本医師会の基本姿勢を明示し、全国の地域の実情を把握できる日本医師会が医療DXを主導し、本答申を「現場の実践書」とするよう求めている。
【各論】
「2-1 現場の課題と医療DXの現状」では、医療DX施策と現場のギャップについて整理した上で、「2-2 医師会による具体的な取り組み事例」では、(1)各地域の地域医療情報連携ネットワーク、(2)医師会でのセキュリティ共同対応、(3)多職種によるDX対応事例―など、各委員が各地の具体的な活動・取り組みを紹介している。
【提言】
医療DXの推進に当たり、日本医師会は単なる情報提供者ではなく、現場実装を支える「調整者」「評価者」としての役割を担う必要があるとしつつ、三層構造からなる医師会組織がそれぞれ担う役割について、(1)日本医師会は政策提言と制度設計に関与するとともに情報発信の中核となる、(2)都道府県医師会は行政との調整と地域施策の推進を担う、(3)地域医師会は現場視点と課題の吸い上げを担う―ことをそれぞれ提言。この三層の連携により、制度と現場のギャップを埋めることが必要であるとしている。
また、今後の展望及び中長期的ビジョンに関する答申の基本的方向性については、「医療DXは義務ではなく、現場の実情に応じた段階的普及とすること」「中長期的には、全国医療情報プラットフォームと地域医療情報連携ネットワークは、競合ではなく相互補完の関係となるべき」等と整理している。
日本医師会に対しては、(1)標準型電子カルテ等に関する正確な情報提供の強化、(2)DX運用費用支援の強化、(3)サイバーセキュリティ対策の強化、(4)取り残さない制度設計―等、9項目を実現するよう具体的に提言。(2)では、特にクラウド化に伴う運用費の増加に対応するため、導入費だけでなく運用費を含めた支援の必要性を指摘している他、(4)では、高齢医師や小規模医療機関への配慮が必要なことを明確に示している。
また、締めくくりには、日本医師会が「制度と実装のギャップ」を埋める役割を担う必要があると指摘。さらに、日本医師会には、医療DXの導入・費用における現場の負担を軽減し、導入を希望する全ての医療機関が無理なく医療DXを実装できるよう導くためにリーダーシップを発揮することに期待感を示すとともに、日本医師会は医療DXの「推進者」であると同時に「現場を守る調整者」でなければならないとしている他、「委員長のあとがき」の中では、「医療の主役は、医療者自身であり、日常診療こそが地域で最も価値のあるものだ」として、持続可能な未来を創るように呼び掛ける医療機関へのメッセージが記されている。
今回の答申が取りまとめられたことを受けて、長島常任理事は、医療DXを取りまく諸課題により良い形で対応できるよう、委員会の中でも指摘のあった「現場を守る調整者」の役割についても今後鋭意検討していく考えを示した。
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