日本医師会はこのほど、「令和9年度 医療に関する税制要望」を取りまとめ、8月4日に開催された第13回常任理事会で了承を得て、24日に厚生労働省に提出した。
本要望は会内の医業税制検討委員会での検討を経て、執行部で取りまとめたもの。「1 社会保険診療等に係る消費税制度の見直し」「2 医業承継時の相続・贈与に関する税制措置」「3 医療機関に対する事業税特例措置の存続」「4 働き方改革・医師偏在対策を支援するための税制措置」「5 医療DXに関する設備投資を支援するための税制措置」「6 医療提供体制の強靭(きょうじん)化を支援するための税制措置」の6項目から成っている。
「1 社会保険診療等に係る消費税制度の見直し」の(1)では、懸案の控除対象外消費税問題について、昨年度と変わらず「社会保険診療等に係る消費税について、診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めること」を要望している。
その上で、近年の建築費を始めとした物価高騰により、病院は存続に関わる状況にあり、病院を中心としたキャッシュフローの悪化への対応は急務であるため、今年度は(2)として、(1)が実現するまでの間、補助金、融資等を含めた特段の対応を早急に国に求めている。
「2 医業承継時の相続・贈与に関する税制措置」の(1)では、「持分あり医療法人」の出資に係る相続税等について、中小企業の事業承継税制と同様の制度の創設を要望。(3)では、昨年度、認定医療法人制度に係る税制措置の延長が実現したため、制度の拡充を求めるものとなっている。
「3 医療機関に対する事業税特例措置の存続」では、「社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置」「医療法人の社会保険診療報酬以外の部分に係る事業税軽減措置」の2点について、その存続を強く求めている。
「4 働き方改革・医師偏在対策を支援するための税制措置」では、まず、(1)で勤務時間短縮用設備等の特別償却制度の拡充と延長を要望。今年度は、税額控除の導入、特別償却率の引き上げに加え、業務効率化の観点からより広く適用できるよう、適用範囲の拡大とともに、適用期限の延長を求めている。
(2)では、生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置が適用期限を迎えることから、非営利法人を適用対象に加えるとともに、期限の延長を求めている。
(3)では、医師が不足する地域の医療機関及び医療従事者に関する税制措置について、登録免許税・不動産取得税の軽減措置が昨年度実現したことから、今年度は医療従事者への所得税軽減措置、診療所への固定資産税軽減措置の2点を要望している。
また(4)では、賃上げ促進税制における税額控除上限額の引き上げに加え、適用期限の延長を求めている。
「5 医療DXに関する設備投資を支援するための税制措置」では、医療DX等の業務効率化を支援することを目的として、設備投資等(器具備品やソフトウェア)について、即時償却または税額控除を選択適用できる措置及び一定期間の固定資産税の軽減措置の創設を求めている。
「6 医療提供体制の強靭化を支援するための税制措置」の(2)では、高額の医療用機器の特別償却制度が適用期限を迎えることから、延長及び拡充を求めている。
また、(3)では地域医療構想に適合する病院用建物等の特別償却制度に関しても同様に延長・拡充を要望し、今年度は、適用範囲に老朽化施設の建て替えを含める要望を追加している。
(6)は、社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(四段階の概算経費の特例)の存続を強く要望するものである。
(7)に関しては、医師会が自治体等の健診等の事業を直接受託して、会員に再委託する場合、免税事業者の会員からはインボイスを受け取ることができないため、医師会に多額の消費税負担が生じる場合があることから、免税事業者等からの仕入れに係る経過措置について、大幅な延長を求めるものとなっている。
また(8)では、訪日外国人患者の診療に係る社会医療法人等の非課税要件に関して、昨年度には訪日外国人患者に対し請求できる価格の要件が社会保険診療の最大3倍まで等に緩和された一方、「社会保険診療等が収入の一定割合を超えること」という要件は引き続き課されていることから、その緩和を求めている。
日本医師会では今後、本要望の実現のため、年末の与党税制改正大綱の決定に向けて、政府・与党を始め、関係各方面に働き掛けを行っていくこととしている。
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令和9年度 医療に関する税制要望
令和8年8月
公益社団法人日本医師会 1 社会保険診療等に係る消費税制度の見直し
(1)社会保険診療等に係る消費税について、診療所においては非課税のまま診療報酬上の補てんを継続しつつ、病院においては軽減税率による課税取引に改めること (2)上記(1)が実現するまでの間、医療機関の建物等を含む高額投資に対する特段の対応 ―消費税― 2 医業承継時の相続・贈与に関する税制措置
(1)医療法人の出資に係る相続税及び贈与税の納税猶予制度の創設 (2)基金拠出型医療法人における負担軽減措置の創設等 (3)認定医療法人制度に係る税制措置の拡充 (4)出資額限度法人の持分の相続税・贈与税課税の改善 ―相続税・贈与税・所得税― 3 医療機関に対する事業税特例措置の存続
(1)社会保険診療報酬に係る事業税非課税措置の存続 (2)医療法人の社会保険診療報酬以外の部分に係る事業税軽減措置について地域医療の確保を図る趣旨に沿って存続 ―事業税― 4 働き方改革・医師偏在対策を支援するための税制措置
(1)勤務時間短縮用設備等の特別償却制度について、医師等勤務時間短縮計画の事後承認化、税額控除の導入、特別償却率の引き上げ、適用範囲の拡大の措置を講ずるとともに適用期限を延長すること (2)生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置について医療法人等の非営利法人を適用対象に加えるとともに適用期限を延長すること (3)医師が不足する地域(重点医師偏在対策支援区域等を含む)の医療機関及び医療従事者に関する税制措置の創設 (4)賃上げ促進税制における税額控除上限を引き上げるとともに適用期限を延長すること ―所得税・法人税・固定資産税― 5 医療DXに関する設備投資を支援するための税制措置
医療機関における医療DXへの対応等の業務効率化に資する設備投資等に関する税制措置の創設 (1)即時償却又は税額控除(10%)を選択適用できる措置 (2)一定期間の固定資産税の軽減措置 ―所得税・法人税・固定資産税― 6 医療提供体制の強靭化を支援するための税制措置
(1)医療機関における防災・感染症対策に資する建物、設備等に係る税制上の特例措置の創設 (2)高額の医療用機器の特別償却制度について、適用対象となる取得価額を160万円に引き下げ、即時償却又は税額控除(10%)を選択適用できる措置を講ずるとともに適用期限を延長すること (3)地域医療構想に適合する病院用建物等の特別償却制度について、税額控除の導入、特別償却率の引き上げ、適用範囲の拡大の措置を講ずるとともに適用期限を延長すること (4)中小企業投資促進税制の適用期限を延長すること (5)病院・診療所用建物の耐用年数の短縮 (6)社会保険診療報酬の所得計算の特例措置の存続 (7)消費税インボイス制度における免税事業者等からの仕入に係る経過措置の延長 (8)訪日外国人患者の診療に係る社会医療法人等の非課税要件の見直し ―所得税・法人税・相続税・贈与税・消費税・登録免許税・固定資産税・不動産取得税― |



