

Qこれまでの経緯について教えてください。
AOTC類似薬の保険給付の在り方の見直しに関しては当初、全てのOTC類似薬を保険給付の対象外とするとの案が示されていました。
日本医師会では定例記者会見などを通じて、この案に強く反対する意向を示すとともに、その問題点などを指摘したショート動画を3本制作。公式YouTubeチャンネルに掲載するなど、国民の理解を得るための活動も行ってきました。
日本医師会が反対した理由としては、主に(1)患者・家族の経済的な負担の問題、(2)アクセス等の問題、(3)医学的な見地からの問題―の3点が挙げられます。
まず、(1)に関しては、①医療用医薬品であれば1~3割の負担ですが、一般用医薬品ではその10~30倍の価格になるものもあり、その全てが患者さんの自己負担になってしまう②難病患者や心身障害者、小児の医療費で特に影響が大きく、全てのOTC類似薬を保険適用から除外してしまえば、医療費助成の対象外となってしまうなど、病気で苦しむ方々や経済的弱者の負担が極めて重くなってしまう―ことを、繰り返し説明しました。
また、(2)に関しては、「地方やへき地等では市販薬に簡単にアクセスできない地域もあり、そのような地域の患者さんは医療機関にアクセスできたとしても、薬の入手が困難になってしまう」「院内での処置等に用いる薬剤の他、薬剤の処方、また在宅医療における必要な薬剤使用にも影響が出る」ことなどを指摘しました。
さらに、(3)に関しては、「重篤な疾患の早期発見・早期治療の機会を失うことによって健康被害が生じるなどのリスクがある」「患者さんが何の薬を使われているのか、医療機関で把握できなくなる」などの問題も危惧されることを説明してきました。
その結果、これらの主張が理解され、最終的には昨年末の財務大臣と厚生労働大臣との合意によって、今回、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し(OTC類似薬の一部保険外療養)として、「新たな仕組み」が導入されることが決まりました。
Q「新たな仕組み」とは具体的にどんな仕組みなのですか?
AOTC類似薬のうちの一部について、薬剤費の4分の1(25%)を特別の料金として患者さんに自己負担(1~3割)とは別に負担してもらうという仕組み(下図)となっており、その実施は来年3月からとなります。本年5月29日に成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」にもこの仕組みが明記されています。
その目的としては、「医療用医薬品の給付を受ける患者さんとOTC医薬品で対応している患者さんとの公平性を確保する」「現役世代を中心とする保険料負担上昇を抑制する」ことが挙げられています。
対象医薬品は、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が異ならない医療用医薬品77成分(1,042品目)となっており、抗アレルギー薬、鎮痛消炎剤、胃腸薬、去痰薬、皮膚保湿剤等が含まれています。
ただし、対象医薬品であったとしても、対象医薬品の長期使用等が医療上必要と医師が判断した場合や、子ども、がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方、低所得者、入院患者などは適用除外となります。

Q国の審議会の議論の中で、日本医師会はどのような主張をしてきたのですか?
A「新たな仕組み」に関しては、中医協、社会保障審議会医療保険部会で議論が行われてきました。
その中では、同一のOTC類似薬であっても、病名により「新たな仕組み」の対象となる場合とならない場合があることなどを挙げて、非常に分かりにくい取り扱いとなることを指摘するとともに、これらの複雑な仕組みを診察の度に判断し、対応しなければならないことは日常診療に大きな支障を及ぼすことから、医師及び医療機関の窓口業務の負担増が少しでも軽減されるような対応を求めてきました。
また、紙カルテで診療している医療機関(現在、一般診療所の45%、一般病院の35%)ではこれらの判断は極めて困難となることから、その導入時期について、例えば経過措置を設ける等、柔軟な対応が必要であることも指摘しました。
さらに、具体的な症例として、小児のみならず、成人のアトピー性皮膚炎の患者さんの中にはステロイド外用薬を通年、長期使用することで症状をコントロールし、日常生活を送られている方々が一定程度おられることも説明。これらの長期療養を余儀なくされる患者さんに対する配慮も求めました。
その他、運用開始に向けては処方医や医療機関の事務負担がより少なくなるよう、簡略なチェックリストを作成することや、電子カルテやレセコンのベンダに対して必要な情報を迅速に提供することで負担軽減を図るばかりではなく、その際のシステム改修費用に対する特段の配慮も強く求めてきました。
また、各医療機関の診察から処方までの体制も様々であることを説明し、あらゆるパターンについて、制度開始前に試験運用と検証を行い、現場での問題点等を抽出し、制度の本施行までにできる限り問題点を解消することなども、強く要請してきました。
Q医療機関の負担軽減策として、国は現在どのようなことを考えているのですか?
A日本医師会などからの要望に応じて、厚労省では、医療機関の負担が過度にならないよう環境整備に努めるとしています。
例えば、紙カルテを使用する医療機関に対しては、診察時に「処方する医薬品が対象成分に該当するのか」「患者・療養者が追加負担を求めない要件に該当するのか」といったことが確認できる簡易なチェックシートを作成するとしています。
また、処方箋(せん)やレセプトの記載方法は既に通知で示されていますし、医療機関・医師による判断のばらつきが出ないよう、疑義解釈を出すとしている他、患者への説明資料なども今後作成されることになっています。
さらに、電子カルテやレセコンのベンダなどに対しても、「対象医薬品に関する薬剤コード」「医療用医薬品とOTC薬の効能・効果が対応しない疾病名の一覧」など、改修につながる情報を速やかに公表するとしています。
その他、追加負担を求めない指定難病患者さんの確認方法についても軽減策を講じることが決まっています。
Q今後の日本医師会の対応などについて教えてください。
A日本医師会といたしましては、患者さんに適切な処方を行うことができること、そして、医師並びに医療機関が過度な業務負担を強いられることがないようにすることが大変重要であると考えています。
そのため、来年3月の運用開始に向けて、引き続き、厚労省に万全の対応を取るよう強く求めて参ります。
また、これまで国の審議会でも繰り返し主張してきたように、国民の皆さんにも更なる負担を強いることになりますので、混乱が生じることのないよう、丁寧かつ分かりやすい周知・広報や相談窓口の設置などを強く求めていきたいと考えています。
なお、「新たな仕組み」の詳細につきましては、今後通知等でお知らせするとともに、日本医師会ホームページのメンバーズルームでも紹介して参りますので、厚労省のホームページ等と併せてぜひご覧ください。



