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平成28年(2016年)3月20日(日) / 日医ニュース

運動器検診等新たな健康診断開始に向けて活発に議論

運動器検診等新たな健康診断開始に向けて活発に議論

運動器検診等新たな健康診断開始に向けて活発に議論

 平成27年度学校保健講習会が2月21日、日医会館大講堂で開催された。
 道永麻里常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長(今村聡副会長代読)は、「学校保健安全法施行規則の改正に伴い、本年4月からスタートする運動器検診を始めとする新たな健康診断は、家庭、学校、養護教諭、学校医等の緊密な連携が重要になってくる。本日得られた成果を、ぜひ、地域の学校保健活動に役立てて欲しい」と述べた。
 講習会では、まず、松永夏来文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課学校保健対策専門官が、最近の学校健康教育行政の課題について解説。
 健康診断の目的は、細かく専門的な診断を行うことではなく、学業に支障があるかどうかといった観点で実施することにあり、子どもの成長を評価する上では、座高より身長曲線・体重曲線が重要であるため、座高の検査を必須項目から削除したと説明した。
 また、本年4月から始まる新たな健康診断に関しては、「四肢の状態を確認することになっており、学業に差し支えがあるような疾病・異常をスクリーニングして欲しい」とした。
 新井貞男日本臨床整形外科学会副理事長は、「学校健診での運動器(四肢)の検診の進め方(簡便法)」と題して講演。
 運動器検診のポイントとして、(1)検診前の保健調査表の情報の整理、(2)養護教諭や校医は『児童生徒等の健康診断マニュアル』やビデオ等で検診の手段を確認する、(3)児童生徒も検診前に検診の手順に慣れておく、(4)保護者のチェックがある箇所を検診前に担任または養護教諭が再チェックした後、学校医が検診を行う、(5)学校医の検診チェックの診断基準を明確にしておく─の5つを挙げた。その上で、新井理事長は、「運動器検診は、養護教諭や学校医及びその関係者が検診の内容を理解することが重要である」として、関係者への更なる協力を求めた。
 「IT機器(パソコン、スマホ、携帯等)の使用による弊害とそれの対応」と題して講演した佐藤和夫国立病院機構九州医療センター小児科医長・周産期センター長は、メディア等の長時間視聴が、生活リズム・基本的生活習慣が形成される乳児期に及ぼすさまざまな悪影響について説明。
 その予防のためには、電子メディアの子どもへの影響を認識し、メディアリテラシー(情報を評価・識別する能力)教育を推進することが重要であるとして、学校やPTAとの協力の下、年齢に応じた電子メディアの制限や使用に関するルールづくり、電子メディアに頼らない生活づくりを呼び掛けた。
 午後からは、「小児肥満・やせ・女性の健康と学校医の関わり」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
 まず、村田光範東京女子医科大学名誉教授が、「身長・体重成長曲線基準図と肥満度曲線基準図(肥満とやせの判定基準)は、今後も変更されることはない」とした上で、「身長・体重成長曲線と肥満度曲線に基づいて検討しない限り、身長と体重の成長に関する正しい評価はできない」として、両曲線作成の意義を説明するとともに、作成時にはパソコンの活用を求めた。
 吉永正夫鹿児島医療センター小児科医は、小児期の肥満の要因として、小学生時代が肥満形成時期にあることを問題視。その上で、自身が代表者を務める厚生労働科学研究班で、健康増進のため推奨される運動とされている「歩行(散歩)」について検証を行い、行動療法による小児肥満治療が効果的であること等を研究成果として取りまとめたことを報告した。
 「小児生活習慣病検診」と題して講演した青木真智子青木内科循環器科小児科クリニック副院長は、『今日からできる小児生活習慣病の対策マニュアル』を用いながら実際の検診の流れについて解説。
 小児生活習慣病検診では、(1)学校での小児生活習慣病への教育を充実させ、子ども自身が自分の健康に関心を持つ、(2)医療現場や社会での小児生活習慣病に対する関心を増やす、(3)学校医・かかりつけ医が日常生活で改善できる問題点を指摘すると同時に、子ども達に声掛けを行う─ことが重要であるとした。
 栗田大輔浜松医科大学精神医学講座助教は、肥満とやせは、精神科では、体型・体重の異常ではなく、食欲の異常(拒食・過食)を主訴に受診することが多いとした上で、浜松医大精神科の包括的診療プログラムを紹介。今後は、精神科スタッフも摂食障害の身体治療に積極的に関わる診療体制を整えるとともに、静岡県摂食障害診療ネットワークを県外にも広報し、摂食障害診療の均てん化を図っていきたいとした。
 岡野浩哉飯田橋レディースクリニック院長は、思春期の肥満とやせと月経について、産婦人科医の立場から講演を行った。
 やせの問題点として、(1)食行動の異常、(2)体重や体型についての歪んだ認識、(3)やせの原因と考えられる器質性疾患がない─を挙げ、中でも無月経は「婦人科医の視点からすると避けては通れない非常に重要な症状の一つである」と説明。
 思春期の女子の月経状態を把握することは、正常発育・発達を評価するため、かつ重大な病的状態を将来引き起こさないために有効な手段であるとした。
 引き続き行われた総合討論では、運動器検診や身長・体重成長曲線等に関して活発な質疑応答が行われ、講習会は終了となった。

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