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平成29年(2017年)9月20日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

臍帯血(さいたいけつ)の違法投与に対する声明を公表

日医定例記者会見 平成29年8月30日

 横倉義武会長は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」違反容疑で、民間の臍帯血販売業者と臍帯血を投与した医師が逮捕されたことを受けて、本件に対する声明(別掲)を公表した。
 横倉会長は、再生医療について、「難病治療への活用を始めとして大きな期待のかかる医療であるが、その一方で未解明な部分も多く、実施に当たっては安全性と有効性の慎重な判断と、治療を受ける患者に対する十分な説明と同意が医師に強く求められている」と強調。
 その上で、「今回逮捕された医師は、再生医療提供計画の届出違反のみならず、同法の適用除外となるよう、カルテの傷病名を改ざんしていたとの一部報道もあるが、これが事実だとすれば極めて悪質と言わざるを得ない」と述べた。
 また、横倉会長は、医学・医療の進歩と発展は、再生医療やゲノム編集などの新たな可能性を開き、国民にとって大きな福音となる可能性を秘めているが、同時に、医師には医療倫理や生命倫理に対する、より深い理解と責任ある行動が強く求められていることにも言及。日医では、平成10年、会内に「会員の倫理・資質向上委員会」を設置し、医師の倫理向上のための種々の取り組みを行っており、平成12年に採択した「医の倫理綱領」では、「医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める」こと、また「医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守(じゅんしゅ)および法秩序の形成に努める」ことなどを謳(うた)っていることを説明し、「改めて医師として持つべき倫理観と社会的使命を全ての医師が認識すべきである」との考えを示した。
 更に、今回医療機関が投与した臍帯血が、倒産した民間の臍帯血バンクが保管していたものを別の業者が販売したものであったとの報道については、「保管状況によっては深刻な感染症のリスクが懸念される」と指摘。「今回の事件によって、再生医療全体の進歩が阻害されることがあってはならない」と述べるとともに、国に対しては、「民間の臍帯血バンク等の業者による臍帯血などの人体組織の保管や流通に関して、法的な規制を含め厳格な監督・監視体制を早急に整備する必要がある。また、国民に向けた再生医療に関する正しい知識の普及と啓発にも、一層努力して欲しい」と要望した。
 最後に、横倉会長は、「国民の健康に資する再生医療の環境整備に向けて、今回の事件の真相が速やかに解明され、適切な再発防止策が取られることを望む」と述べた。

平成29年8月30日
 公益社団法人 日本医師会
臍帯血の違法投与に対する声明

 今般、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(以下、再生医療等安全性確保法という)違反容疑で、民間の臍帯血販売業者と臍帯血を投与した医師が逮捕された。この事件は、本年5~6月にかけて、再生医療等安全性確保法で義務付けられている第一種再生医療等提供計画を、国に提出せず臍帯血の投与をしていたとして、10以上の医療機関が同法の規定に基づく当該再生医療等の提供の一時停止命令を受けたことに関連するものである。
 再生医療は、難病治療への活用を始めとして大きな期待のかかる医療である。その一方で、再生医療にはまだ未解明な部分も多く、その実施に当たっては安全性と有効性の慎重な判断、治療を受ける患者に対する十分な説明と同意が、医師に強く求められることは論を俟たない。
 今回逮捕された医師は、再生医療等提供計画の届出違反のみではなく、再生医療等安全性確保法の適用除外となるよう、カルテの傷病名を改竄していたとの一部報道もある。事実関係の解明が急がれるが、これが事実だとすれば極めて悪質と言わざるを得ない。
 高い倫理観と医療安全の追求は、常に医師の根幹になければならない。日本医師会では平成10年に「会員の倫理・資質向上委員会」を設置し、医師の倫理向上のための種々の取り組みを行っている。平成12年に採択した「医の倫理綱領」では、「医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める」こと、また「医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守および法秩序の形成に努める」ことなどを、医師の持つべき倫理観として謳っている。
 医学・医療の進歩と発展は、再生医療やゲノム編集などの新たな可能性を開き、国民にとって大きな福音となる可能性を秘めている。しかし同時に、医師には医療倫理や生命倫理に対するより深い理解と責任ある行動が強く求められている。改めて、医師として持つべき倫理観と社会的使命を、全ての医師が認識すべきと考える。
 また、今回医療機関が投与した臍帯血は、倒産した民間の臍帯血バンクが保管していたものを別の業者が販売したものであると言われており、保管状況によっては深刻な感染症のリスクも懸念されるものである。
 今回の事件によって、再生医療全体の進歩が阻害されることがあってはならないと考える一方で、国は、民間の臍帯血バンク等の業者による臍帯血などの人体組織の保管や流通に関して、法的な規制を含め厳格な監督・監視体制の整備を早急に検討する必要があると考える。加えて、国民に向けた再生医療に関する正しい知識の普及と啓発に、一層の努力を傾注することを望む。
 日本医師会は、厚生労働省の厚生科学審議会再生医療等評価部会などの場を通じて、それらの実現に向けて積極的に発言していくとともに、国民の健康に資する再生医療の環境整備に向けて、今回の事件の真相が速やかに解明され、適切な再発防止策が取られるよう今後とも注視していきたい。

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