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平成29年(2017年)10月5日(木) / 日医ニュース

人の尊厳が生涯にわたって大切にされる社会の実現を目指し会務に取り組む決意を示す

人の尊厳が生涯にわたって大切にされる社会の実現を目指し会務に取り組む決意を示す

人の尊厳が生涯にわたって大切にされる社会の実現を目指し会務に取り組む決意を示す

 平成29年度第2回都道府県医師会長協議会が9月19日、日医会館小講堂で開催された。
 当日は、「医師の偏在対策」「これからのICTシステムの利活用」など、10府県医師会から出された質問並びに要望に対して担当役員からそれぞれ回答した他、日医からは都道府県医師会に対し、「医師の働き方改革」に関するアンケート調査への協力依頼等を行った。

会長あいさつ

 今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、医療・介護の提供体制をより効果的・効率的なものへと転換していく必要性を指摘するとともに、「その検討に当たっては、医師の働き方改革に則した勤務環境改善に向けての視点を忘れてはならない」と強調した。
 また、安倍晋三内閣総理大臣が消費税率の増税分の使い道を見直すことなどを国民に問うため、衆議院を解散するとの報道がなされていることにも言及。「社会保障の充実により国民不安を解消することが経済の好循環につながると考えている。受益と負担の関係を明確にしつつ、増税の結果として安心して社会保障を受けられ、国民負担の軽減につながったという成功体験を持てることも重要であり、消費税収の使途を債務返済から社会保障の充実に変更することも一つの方法ではないか」との考えを示した。
 その上で、「このような政局にも注視しながら、引き続き対応していく」とし、まずは、国民医療推進協議会総会を10月3日に開催し、国民運動の一環として、総決起大会の開催(11月22日に憲政記念館講堂にて)を提案する意向であることを報告。「承認された際には、協力をお願いしたい」と述べた。
 最後に、横倉会長は、「今後も『日本医師会綱領』が掲げる理念、すなわち、人の尊厳が生涯にわたって大切にされる社会の実現を目指し、広く皆さんの意見を聞きながら会務を推進していく」と述べ、更なる理解と支援を求めた。

協議

(1)教育現場における養護教諭の活動実態と今後の支援対策について

 養護教諭の過重労働を指摘し、その改革に向けた日医の見解を問う茨城県医師会の質問には、道永麻里常任理事が回答した。
 同常任理事は、養護教諭の負担増についての認識を示すとともに、横倉会長も中央教育審議会(以下、中教審)の場で、メンタルの不調で休業する教職員がこの20年で約5倍に増加していることから、産業医、健康管理医の活用の重要性を指摘していること等を説明。その上で、「養護教諭が健康でなければ、子どもの健康を守ることはできず、学校保健関係者の連携を進めていく際にも養護教諭は大切な存在となっている。今後も日本学校保健会と連携し、中教審も含め、さまざまな場面で養護教諭の複数配置基準の引き下げ、働き方改革、健康管理などについて意見を述べていきたい」とした。

(2)次期診療報酬改定での「遠隔診療」に対する拙速な評価の導入は阻止すべき

 次期改定における「遠隔診療」の診療報酬上の拙速な評価導入は避けるべきとの山口県医師会からの指摘には、松本純一常任理事が、遠隔診療はあくまでも直接の対面診療の補完であることを改めて強調。中医協においても、「遠隔診療の診療報酬上の評価のためには、対面診療に比べて患者に対する医療サービスの質が上がるという科学的なデータが必要」というスタンスで対応しており、今後も厚生労働省としっかり連携・相談して対応していくとした。
 その上で、「ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の進歩に決して浮足立つことなく、利点と問題点を明確に指摘しながら、地域医療の進化に貢献していく」との決意を示し、理解と協力を求めた。

(3)医師の適正配置のためのデータベース化について

 国から提案のあった「医師の地域的な適正配置のためのデータベース」の構築等、医師偏在対策に対する日医執行部の方針を問う大阪府医師会からの質問には、釜萢敏常任理事が回答した。
 同常任理事は、まず、現在は、どこにどういうキャリアを持った医師が働いているかを把握する手段がないことを指摘。「今回のデータベースは、全国医学部長病院長会議と共に行った合同緊急提言の『医師キャリア支援センター(仮称)』構想の一部が形になったと言えるものであり、医籍登録番号を使って情報収集力を高めるものである」と説明した。
 その上で、同常任理事は、「日医としては、引き続き、医師が自主的・自律的に偏在解消の取り組みに関与することを第一義とし、国による強制配置などが起こることのないよう、厳重に対処していく」として、理解を求めた。

(4)「地域包括診療加算:地域包括診療料」に関する研修について

 地域包括診療加算、地域包括診療料の算定要件となっている研修方法の見直しを求める広島県医師会の要望に対して、鈴木邦彦常任理事は、これらの報酬を創設した際に、日医が責任を持って受講管理を徹底することを条件に、日医が開催する研修会を都道府県医師会に同時中継することについても、「座学の研修会」として、厚労省に認めさせた経緯があることを説明。理解を求めるとともに、「これまでの都道府県・郡市区医師会の先生方、事務局の努力により、受講管理を厳密に実施していることが、厚労省や厚生局からの医師会実施の研修に対する信頼にもつながっている」として、感謝の意を示した。
 その上で、同常任理事は、「先生方が研修に参加したために、地域の救急体制に支障が生じるようなことがあってはならない。日医でも開催支援金等による支援を行っていくので、引き続き、地域の実情に応じた形での研修会や分割研修(一つの研修会を複数日に分けて開催する)など、柔軟な対応をお願いしたい」と述べた。

(5)コンピューター審査の大幅導入について

 三重県医師会からは、国が進めようとしている支払基金改革により、レセプト審査にコンピューター審査を大幅に導入すれば、国民皆保険が潰れてしまうとの懸念が示された。
 これに対して、松本(純)常任理事は、「改革案は支払基金の理事会でブラッシュアップすることになった」と報告するとともに、改革モデルとされた韓国の審査に比べてわが国の審査の優れた点として、①訴訟が極めて少ない②医学的判断が尊重されている―ことなどを挙げ、その点について関係者に理解を求めていると説明。
 その上で、「審査支払機関の弱体化は国民皆保険を壊しかねず、審査の効率化・合理化を進めることで、わが国の社会保障・税一体改革を阻害することになっては本末転倒だ」とし、「支払基金改革には地域医療の確保に尽力している現場の医師達の納得が不可欠であり、日医としてもその実現に向け、引き続き対応していきたい」とした。

(6)これからのICTシステムの利活用について

 滋賀県医師会からの「日医にORCAとデータ連携等を可能としたシステム開発と今後のレセコン開発を一体的に展開して欲しい」との要望には石川広己常任理事が、①医療・介護の会計処理エンジンとして組み込みが可能なものにすることも視野に入れて展開を進めている②電子カルテのない医療機関においても、電子化された医療情報で地域医療連携を行うことができるようなツールを開発・提供していく予定である―ことなどを説明。「相当な部分で一体的な展開を図っている」とした上で、これらの展開を更に進化させ、地域医療情報連携システムとの連携をより簡便に行えるよう、引き続き努めていきたいとした。

(7)病院薬剤師のワークシェアリングに係る増員対策に関して

 岡山県医師会からの薬剤師に関する四つの質問には、市川朝洋常任理事が回答した。
 薬剤師が病院を辞めて高給の調剤薬局などに転職することについては、医療機関の経営に影響を与えているという観点からその問題を国に強く訴えていく考えを表明。「院内処方と院外処方の調剤報酬の差が大き過ぎる」「病院薬剤師が薬剤費の節減等に資する業務を行った場合の診療報酬上の評価を更に高めるべき」との指摘に対しては、医療機関内の薬剤師業務は調剤報酬財源を活用するよう、国に求めていることを説明した。
 また、病院薬剤師を増やすために、国家試験のハードルを下げるとの考え方については、薬剤師の質を保つ観点から否定的な考えを示した。
 その上で、同常任理事は、病院薬剤師の不足は薬局の多さによる薬剤師の確保競争にその原因があると指摘。日医としては、引き続きチーム医療に貢献する薬剤師を医療機関で十分確保できるよう、調剤報酬の適正化を求めていくとした。

(8)日医総研のあり方について

 鹿児島県医師会は、日医総研の「データ解析センター」の設置状況を問うとともに、都道府県医師会からの解析依頼にも対応できるようにして欲しいと要望。これに対して、石川常任理事は、要望の多いテーマについては集約化して分析することを前向きに検討したいとした。
 更に、厚労省等から提供されるさまざまなデータについても、都道府県医師会で活用するためのサポートをできる限り行っていく考えを示し、理解を求めた。

(9)有床診療所と准看護師課程の存在意義について

 有床診療所、准看護師課程の存続のため、日医の更なる支援を求める徳島県医師会からの要望には、釜萢常任理事が回答した。
 同常任理事は、本年3月の医療法施行規則の一部改正において、届出により病床設置が可能となる特例が拡大したことについて、「届出による設置ではあるが都道府県医療審議会の議論を経る必要があるため、都道府県医師会の理解が大変重要になる」と指摘。「病院からの早期退院患者の在宅・介護施設への受け渡し機能、在宅医療の後方病床機能など、地域で必要とされる機能を勘案し、前向きに審議をお願いしたい」と述べた。
 また、准看護師課程については、「医師会立の養成所が閉校すれば、その地域の看護職員の確保は一層厳しくなり、一度閉校してしまうと再開は困難である」として、准看護師の養成継続を要請。日医としても、准看護師の役割について発信してくとともに、その養成環境の充実に向けて各方面に働き掛けを行っていく考えを示した。

(10)全国健康保険協会のジェネリック医薬品軽減額通知事業について

 群馬県医師会は、全国健康保険協会のジェネリック医薬品軽減額通知事業の通知内容の是正を要望した。鈴木常任理事は、不十分な情報提供による不十分な理解によって、協会けんぽの加入者や医療機関に不利益が生じないよう、厚労省とも調整の上、その見直しを求めていくとした。
 更に、同常任理事は、院外処方において後発医薬品への変更不可とした場合以外や一般名処方をする場合、どの後発医薬品が調剤されたのか処方医が分からないなどの問題点を挙げ、「後発医薬品の使用促進は、患者に最も負担の少ない医療費節約の手段であり、日医としても協力しているがこうした問題点も理解してもらえるよう働き掛けていきたい」と述べた。

(11)医師の働き方改革について

 松本吉郎常任理事は、医師の働き方改革について、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」並びに日医会内の産業保健委員会や医師の働き方検討委員会での検討状況を説明。委員会では、今後、病院団体とも意見交換しながら議論を深めていく予定であるとした。
 また、さまざまな方面の意見を聞くため、都道府県医師会を対象とした調査を実施することになったとして、調査への協力を要請した。

その他

 今村常任理事は、11月26日に愛媛県西予市で開催予定の「第6回西予市おイネ賞事業表彰式・日本医師会女性医師支援シンポジウム」について、これまでの協力に謝意を述べるとともに、「自治体とのタイアップによるシンポジウムは初めての試みであり、厚労省も注目している。引き続きの協力をお願いしたい」と述べた。
 温泉川梅代常任理事は、本年4月から5月にかけて実施した「日本医師会雑誌、日医ニュースの提供方法に関するアンケート調査」の結果の概要を報告。「今回、回答頂けなかった先生方に対しては、日医ニュースに回答ハガキを同梱する形で再度調査を行う予定である」として、協力を要請した。
 羽鳥裕常任理事は、9月に行われた第27回全国医師会共同利用施設総会別記事参照における自身の発言について、「精度管理に関して、ある県医師会の内部管理が悪いとの誤解を生じさせる表現があった」として陳謝し、その真意を説明した。
 なお、当日は協議に先立って、本年7月の九州北部豪雨に対する全国の医師会からの支援に対して、松田峻一良福岡県医師会長並びに近藤稔大分県医師会長からそれぞれ謝意が述べられた。

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