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平成30年(2018年)12月20日(木) / 日医ニュース

全医師会員が医療に関する理念を共有するための講演会を開催

全医師会員が医療に関する理念を共有するための講演会を開催

全医師会員が医療に関する理念を共有するための講演会を開催

 全国医師会・医師連盟 医療政策研究大会が11月25日、都内で開催された。
 本大会は、会内に設置された前期の「医師会将来ビジョン委員会」からの提言に基づき、日医役員、都道府県医師会長及び郡市区等医師会長らが一堂に会し、医療の今日的課題に立ち向かうための理念を共有することを目的として開かれたもので、約700名が参加した。
 小玉弘之常任理事の司会の下、松原謙二副会長の発声により開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、日医の会員数が昨年初めて17万人を超えたことに触れ、組織強化への協力に謝意を示すとともに、「医師会組織強化の目的は、国民視点に立った医療の実現のためであり、医師会設立の本位である、国民の生命と健康を守り続けていくという一点に尽きる」と強調。
 その実現に向けて、医療政策をリードし続ける強い組織づくりが不可欠であるとする一方、国民視点に立った医療についての理念と具体的な施策を各会員に周知する努力も必要であるとし、初の試みとして、全国の医師会長を招いた本大会を企画したことを説明した。
 その後、2題の講演が行われた。
 横倉会長は、「日本医師会の医療政策」と題して、まず医師会の役割や成り立ちを概説。国民に信頼される医療の確立に向け、医師自らが医療の質保証に責任を負う体制を構築することが必要であり、それが医師会の存在意義でもあるとした。
 また、高齢社会において地域医療の要はかかりつけ医であるとし、日医はその定義を明確にするとともに、かかりつけ医機能研修制度を実施していることを紹介。人生100年時代を迎え、医療は、「予防・教育」「診断・治療」「再発重症化予防・見守り・看取り」と幅広さが増しているとし、各医師会が行政と協力して地域版日本健康会議を各地で立ち上げ、健康増進の取り組みを進めていくよう期待を寄せた。
 その上で、政府予算に占める社会保障関係費は1998年に19・1%(14・8兆円)であったものが2018年では33・7%(33・0兆円)に膨張していることに言及。財務省を中心として、財政を健全化する立場から社会保障費の抑制策が検討される中、医療側から過不足ない医療提供ができる適切な医療を提言していくことが重要であるとし、政府の政策に対して、「国民の安全な医療に資する政策か」「公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か」との観点から臨んでいくとした。
 更に、医療の拡充による国民の健康水準の向上が、経済成長と社会の安定に寄与するなど、社会保障と経済には相互作用があることを強調。健康寿命の延伸は雇用の延長をもたらし、税収増や社会保障財源の確保につながり、社会保障制度が堅持されていくとの見解を示すとともに、社会保障の充実による国民不安の解消のためにも、企業の内部留保を給与に還元するよう今後も主張していくとした。
 続いて、権丈善一慶應義塾大学商学部教授が、「日本の医療 その課題と展望」と題して講演。その中で、社会保障制度の効率化や給付の重点化を進める際、医療費の過大推計によって医療費抑制機運が高められていたことを批判し、その例として、2025年の医療費について、名目経済成長率の高かった1994年には141兆円と試算され、成長率の落ちた2000年には81兆円、更に成長率が鈍化した2006年には65兆円とされていたことを挙げた。
 同教授は、「将来見通しは対GDP比で示された実質値でなければ意味をなさない。財務省の給付抑制の議論はスタート地点から間違っている」と指摘。更に、メディアが不勉強なまま将来の社会保障費を名目値で論じる誤報が繰り返され、誤った政治的判断につながっているとし、政府が示した2040年の試算「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」でカッコ書きにされていた名目値から、「社会保障費、40年度6割増の190兆円」などの報道がなされたことを危惧した。
 また、忍び寄るポピュリズム医療政策の特徴として、(1)将来の医療費や社会保障費を名目値で示し、将来の負担はこんなに高くなると大衆を脅す、(2)終末期の医療費は、人が一生に使う医療費の半分ほどを使うと、エピソードベースの話をして大衆を驚かす、(3)医療費は予防で抑制できる、特に終末期の医療費を大幅に抑制できると大衆にデマを飛ばす、(4)終末期で浮いた財源を若い世代に持っていけば、全世代型社会保障も実現できると、大衆受けのする話で結ぶ―を列挙。(3)に関しては、予防で未病期間が長くなっても、医療給付が先送りされるだけであり、長期的には余命延長により生涯の医療費は増加するとし、人生100年時代を迎え、今後も医療費と介護費は増大し続けるとの見方を示した。
 その他、超高齢社会の終末期医療については、何かがあった時に救急車を呼ぶのではなく、まずはかかりつけ医に連絡を取る体制づくりが重要であるとし、日医が主張する地域医療の再興のためにも、医療・介護の一体改革が優先課題であると強調した。

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