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令和元年(2019年)8月20日(火) / 日医ニュース

マスギャザリング災害医療体制の充実と災害対応能力の向上を目指して

あいさつする横倉会長あいさつする横倉会長

あいさつする横倉会長あいさつする横倉会長

 令和元年度都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会を兼ねた「マスギャザリング災害(CBRNEテロ含む)対策セミナー~ラグビーワールドカップ2019に向けて~」が7月25日、日医会館小講堂で開催された。
 石川広己常任理事の司会で開会。冒頭あいさつに立った横倉義武会長は、7月18日に起きた京都アニメーションの放火火災に触れ、「近年、さまざまな所でマスギャザリング災害が起きており、それに伴い、一般医療機関もその事態に備えた研修を実施しておくことが重要になっている」と述べ、本セミナーが全国のマスギャザリング災害医療体制の充実と災害対応能力の向上に資するとともに、ラグビーワールドカップの成功に寄与することに期待を寄せた。
 続いて、あいさつしたラグビーワールドカップ2019組織委員会の河野一郎事務総長代行は、9月20日から始まるラグビーワールドカップの開催に向けて、会場及びキャンプ地の医療体制を含めた体制整備は詰めの段階を迎えているが、マスギャザリング災害への備えが不足していると指摘。医師会、自治体に対して更なる協力を求めた。

医師会が災害医療に関わる意義を強調―石川常任理事

190820e2.jpg 次に、日医と東京都医師会監修で刊行した『大規模イベント医療・救護ガイドブック』を参考テキストとした講演が行われた。
 まず、石川常任理事が「各地域におけるマスギャザリング対策の実情と本セミナーの狙いについて」と題し、(1)医師会によるマスギャザリング対策の意義と本セミナーの狙い、(2)各地域におけるマスギャザリング対策の実情、(3)日医のラグビーワールドカップ2019に向けたマスギャザリング対策―について解説。「日本は大規模自然災害が発生する確率が高い上にテロリズムの発生リスクもある。災害医療では一般の医療機関の役割が重要となっており、各医療機関を取りまとめ、専門機関との連携を果たせる医師会がその対策に関わる意義は大きい」と述べた。
 また、参考テキストから医師会の立ち位置と組織体制等について紹介するとともに、日本医師会総合政策研究機構が行った「ラグビーワールドカップ2019開催地におけるCBRNEテロ災害対策の現状把握調査」結果の概要を説明した。
 山口芳裕日医救急災害医療対策委員会委員長・マスギャザリング災害に備えた医療体制ワーキンググループ座長/杏林大学高度救命救急センター長は、「大規模イベントのリスク」として、自身が編集代表として携わり、参考テキストにもなっている『大規模イベント医療・救護ガイドブック』の概要を説明。マスギャザリングのリスクはイベント特定と環境因子によって規定されることから、「医療体制を整備するに当たっては、悪意のないマスギャザリング(日常診療で対応できる自然発生的な救急患者の増加)と、悪意のあるマスギャザリング(テロのように日常診療では対応できない集団災害)の二つの側面のリスクを考えなければならない」と述べた。
 箱崎幸也元気会横浜病院院長/元自衛隊中央病院第一内科部長は、「マスギャザリング(CBRNEテロを含む)災害の基礎知識」として、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて化学・生物・爆弾テロへの医療対応について講演。(1)英国で起きたノビチョク(第4世代神経剤)を使用した元ロシアスパイ暗殺事件と化学剤推定補助ツールであるCHEMM―ISTの仕組み、(2)欧州での注射炭素の確定症例や天然痘感染患者の症例等、(3)ボストンマラソンでのターニケット止血の有用性―についてそれぞれ概説し、市民・実地医家での対応が緊要であると強調した。
 田邊晴山日医救急災害医療対策委員会委員/救急振興財団救急救命東京研修所教授は、「マスギャザリング(CBRNEテロを含む)災害の基本対処法」として、CBRNEを疑うためのポイントや安全確保のための避難・脱衣・除染の重要性について説明した後、マスクやビニール手袋、ティッシュを用いて乾式除染の実習等を行った。
 次に、山口日医救急災害医療対策委員会委員長による「爆傷・銃創と止血」の講義に続き、2種類のターニケット(CAT・SOF)を用いた止血法の実習が行われた後、各講師への質疑応答が行われた。
 続いて、石川常任理事がラグビーワールドカップに向けて、開催地を所管する医師会と日医との危機発生時の情報共有等を目的として設置したSMSを使用した一斉送信システムを紹介するとともにその実演を行った他、山口日医救急災害医療対策委員会委員長からは、競技会場の救護所・医務室の出務者をサポートするワンストップ窓口を開設することについて報告した。

マスギャザリング災害への対策を進化させる―中川副会長

 最後に、総括を行った中川俊男副会長は、「本年9月のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2025年の大阪万博を控え、日本国民や訪日外国人の生命、社会の安全を守るために、一般の医師・医療機関、専門機関の連携が重要になっている」と述べ、日医としても、更にマスギャザリング災害への対策を進化させていく考えを示し、理解と協力を求めた。出席者は97名。

キーワード:マスギャザリングとは
190820e3.jpg 一定期間に、限定された地域に、同じ目的で、集合した多人数の集団のこと。
 単なる人の集まりはマスギャザリングとは呼ばず、共通の動因があることが要件である。
 「1,000名以上」を基準とする定義が多いが、医療対応準備は「25,000名以上」の場合に必要となる(『大規模イベント 医療・救護ガイドブック』より)。
キーワード:CBRNEとは
 化学:Chemical、生物:Biological、放射性物質:Radiological、核:Nuclear、爆発物:Explosiveを指す。従来の"NBC災害"の核(N)から放射性物質®を分離させ、更に爆発物(E)を新たに加えたもの。

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