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令和元年(2019年)12月20日(金) / 南から北から / 日医ニュース

金継ぎに挑戦

 金継(きんつ)ぎをしている。始めたばかりである。
 以前から興味をもっていたが、そのうちにと思って何年も経ってしまった。
 割れたり欠けたりしても捨てられないでいた器が増えて収納に困るようになってしまい、「使えないものは捨てれば!」と言われ続けてきた。薄らいでいた興味に火がついたようである。
 金継ぎは割れたり欠けたりした器を漆(うるし)で貼り合わせ修復する技法である。器には多くの種類があり、割れや欠けには一つとして同じものはなく、かなり複雑で細かい作業である。
 しかし、その仕上がりは驚くほど多彩で、偶然の美しさに感動する。まさに一期一会である。あの茶人、古田織部だって日常の茶碗を割ってまでして金継ぎで新たな価値を見いだしたではないか。
 金継ぎには全ての工程に漆が使われる。漆の木から採取された樹液は、ある一定の温度と湿度のバランスで硬化し、極めて強い接着剤となる。
 漆器を海外ではJAPANと呼ぶように、私達日本人と漆には深いつながりがある。
 すでに縄文土器には漆が使われ、平安時代には蒔絵(まきえ)が生み出された。室町時代になって、この蒔絵の技術が茶道の茶碗や花器の修復に生かされるようになり、金継ぎとなった。金継ぎは茶道の世界に端を発した日本独自の美意識とともに芸術として現代に引き継がれている。
 最近は新しい素材を使って手軽に修復する方法もあるが、あえて漆を使う昔ながらの方法に挑戦している。お気に入りの織部の感性に触れられるように。
 漆を使った金継ぎは、完成までに約3カ月掛かる。割れた面を漆で貼り合わせ、2~3週間乾かす。欠けた部分は、木粉(もくふん)や砥(と)の粉(こ)などを漆に混ぜ合わせて補う。ひび割れには、松精油などで薄めた漆を吸い込ませる。貼り合わせた部分は、何度も漆を塗り重ね、表面を滑らかに整える。最後に金粉を蒔く。
 手間暇掛かる作業である。夢中になって漆を素手で触ってしまい、たびたびかぶれに悩まされる。それでもこの工程が楽しい。壊れた器がよみがえり、偶然の美しさに出合うことが期待できるから。

愛媛県 松山市医師会報 第325号より

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