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令和2年(2020年)2月20日(木) / 南から北から / 日医ニュース

診察とチューインガム

 10年以上前になりますが、中年の女性が外来に来院されました。どこかをぶつけたらしく、前日夜に、救急である病院を受診したとのことなのですが、当直の先生がガムをくしゃくしゃ嚙みながら「いいんじゃないの」と言われたと憤慨(ふんがい)されていました。
 「前日の医者は信用できない。再度レントゲン検査をして欲しい」と来院されたのでした。腫脹や内出血もなく、骨にも異常がないことを説明しましたが、その間中ずっと「昨日の医者はガムを嚙みながら診察、説明をした」と、かなりの剣幕で怒り続けていました。
 大学病院に勤務していた頃、夕刻に医局の研究室の片付けをしていたら、割れたガラスで手を切創し、出血が止まらなくなってしまいました。近くにいた講師の先生を見つけ、すぐに処置をお願いしました。その時、その先生が「今、ガムを嚙んでいるのだけど」。私はとっさに、「別に構いません。早く縫合して下さい」と言い、すぐ病棟の処置室で縫合してもらったことを思い出しました。
 最近は野球選手やサッカー選手の試合をテレビで見ていると、ガムを嚙みながらプレーをしているのを時々見掛けます。全身に強く力を入れる時、顎の歯の負担軽減、緊張を和らげる、集中力を高める作用があると言われています。
 診察室という比較的狭い空間で、医者の場合は患者によっては不快感・不信感を与える可能性があると思われます。
 では、逆の場合はどうでしょうか。患者がガムを嚙みながら診察室に入る場合はどうでしょうか。知人の医師の中にも、患者がガムを嚙んでいると注意し、診察の前にガムを出させてから診察するという先生もいます。以前、私のクリニックで働いていたべテランの看護師は、診察室で患者がガムを嚙むのを見ると、「診察ですからガムを出して下さい」とすぐにティッシュを渡し、ガムを出させていました。
 正直、私自身も患者さんがガムを嚙みながら診察を受けられると、やや不快感を覚えます。私のクリニックは整形外科なので、痛みがあり来院される患者さんが多いのですが、「本当に痛くて受診したのかな」とも思ってしまいます。ただ、大の大人に注意をするのもどうかと思いますし、普通は何も言いません。けれど、子どもの場合や注射などの処置をする場合は別で、ガムを出してもらっています。
 皆さんはどうなさっているのか知りたいと思います。

(一部省略)

神奈川県 横浜市医師会報 No.916より

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