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令和2年(2020年)5月5日(火) / 日医ニュース / 解説コーナー

特別寄稿 長崎県キャリア・デベロップメント支援事業スタート

 「離島・へき地で総合診療」を希望するベテラン医師へのキャリア支援がスタートしました。この支援事業は、都市部の病院で専門医として経験を積んできた医師に、地域を幅広く診る総合医としてのキャリアを発展していただき、離島やへき地での地域医療に携わっていただくことを目的としています。
 きっかけは、ながさき地域医療人材支援センターとして離島で勤務していただく医師を募集するために、各種学会で出している医師募集の展示ブースに来訪していただいた先生方とお話しする中で、離島・へき地での地域医療に踏み込むに当たり、専門性による不安があることが分かったことにあります。
 そのため、2017年度から長崎県と協議を続け、事業化が決まりました。2018年度には離島の診療所で勤務されている先生方に委員になっていただき、専門医の先生方が不安を軽減できるプログラム(表1)(URL:http://ncmsc.jp/cd_gaiyo.html)を構築し、2019年度には、キャリアを展開していただく4領域の研修項目を抽出しました。(URL:http://ncmsc.jp/cd_kensyu.html
 離島で勤務されている先生方からは、総合医としてさまざまな診療領域の知識・技術が必要になるとのことでしたが、診療を続けながら広がっていくことも多く、勤務開始に当たり、不安を軽減できる最低限の領域として、「内科」「外科」「整形外科」「小児科」の外来診療にまとまりました。
 研修される先生が何を学んだら良いのか、指導医側が何を教えるのか、を提示した方が良いとの提案をいただき、県・市町の予算化と並行して、専門領域の先生方に研修項目も抽出していただきました。
 支援の進め方としては、離島の診療所等に勤務していただく際に、当センターの専任医がご本人のキャリアを踏まえて、所属する市町の医師身分で事前に研修する「研修モジュール型」と診療所で勤務していただきながら研修する「研修日型」を決定します。更に、勤務していただく地域の基幹病院での研修を調整します。
 更に研修中も、定期的に当センターの医師が訪問し、ご本人と指導医との研修中のさまざまな事象を調整させていただくことになっています。
 「内科」「外科」「整形外科」「小児科」の中から勤務していただく先生に合った組合せを選びます。例えば、外科医として長年手術に携わってこられた先生であれば、「内科」「整形外科」「小児科」の外来診療を研修していただきます。
 長崎県の離島・へき地で地域医療をやってみたいとお考えの先生方で、事前に一定期間の研修を行わないと不安だと思われる先生には「研修モジュール型」を、地域医療についてある程度は自信があるが、例えば小児科診療には不安があるという先生方には「研修日型」をお勧めします。

表1 キャリア・デベロップメント研修プログラム

  1. 目的
    これまで都市部の病院で専門医として医療に携わってきた中堅・ベテラン医師で、地域を"幅広く総合的に診る"ことを志望する医師に対して、総合診療医へのキャリア・デベロップメントを支援し、地域医療を行う医師を確保する。
  2. 対象
    市町の公的な医療機関に勤務する医師
  3. 研修内容
    外来診療で必要な各診療領域の基本を学び、専門医に相談すべきレベルを学ぶ。
  4. 研修方法
    ①研修モジュール型(一定期間連続して研修)
    研修期間:3カ月
    モジュール:内科(2カ月)、外科(1カ月)、整形外科(1カ月)、小児科(1カ月)などから対象者の経験に合わせて組み合わせる
    ②研修日型
    研修期間:6~12カ月(研修施設で週1回半日もしくは全日実施)
    モジュール:内科(6カ月)、外科(6カ月)、整形外科(6カ月)、小児科(12カ月)
  5. 研修施設
    県北地区:平戸市民病院、生月病院、北松中央病院、柿添病院、青洲会病院、北川病院など
    宇久・小値賀地区:佐世保市総合医療センター、長崎労災病院、佐世保中央病院など
    上五島地区:上五島病院など
    五島地区:五島中央病院など
    壱岐地区:壱岐病院など
    対馬地区:対馬病院など

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