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令和2年(2020年)8月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

乳腺外科医控訴審判決に対する見解を示す

日本医師会・日本医学会合同記者会見

 中川俊男会長と門田守人日本医学会長は7月22日、準強制わいせつ罪で起訴され、東京地方裁判所で無罪判決を受けていた乳腺外科医に対し、東京高等裁判所が7月13日に逆転有罪判決を言い渡した控訴審判決について合同で記者会見を行い、それぞれの見解を説明した。
 中川会長は、7月15日の定例記者会見における主張を改めて述べた上で、同会見後も、日本医学会や日本乳癌学会、全国の日医会員から、日医の主張に賛同する意見が多数寄せられたことを紹介。門田医学会長との協議の結果、本控訴審判決は学術的にも問題が多いと判断したことから、本合同記者会見を開催したとその経緯を説明した。
 その上で中川会長は、判決は学術的に問題があると強調するとともに、担当看護師の法廷での証言を、カルテに記載されていないとの理由で信用できないとした裁判所の判断を問題視。「医療現場のスタッフは術後の対応に忙殺され、全てをカルテに記載できないことはよくあることだ」とした。
 更に、「このように出来事全部をカルテに記載しなければ、裁判所で信用してもらえないとなれば、医療現場に大混乱を来す」と指摘。「一人の外科医が、裁判による不当な冤(えん)罪で苦しんでおり、また、控訴審判決の不当性は判決文を一読すると明らか」として、改めて強い抗議の念を示した。
 引き続き、門田医学会長が見解を発表し、まず、日本医学会が目指すのは、"医学・医療における真理の追求"であり、利害や損得は行動の目的ではないなど、日本医学会としての基本的なスタンスを説明。今回の控訴審判決については、(1)行為に蓋然性(がいぜんせい)がないこと、(2)せん妄の有無に関する科学的根拠、(3)検査結果の正確性―の3つの問題点があると指摘した。
 (1)については、外科医である自身の経験から考えても、問題となった行為に及ぶようなことがあり得るのかが甚だ疑問であり、医療現場の実情に鑑みても、考えられないとした。
 (2)に関しては、今回採用されたと思われるせん妄状態に関する検察側の証人の意見に対し、その根拠が果たして科学的なものであるのかと指摘。「推測だとしたら許されるものではない」と強調した。
 (3)では、検査結果が正確であるということがそもそもの検証のスタートであるとした上で、「遺伝学的な検査の科学的評価をもう少し正しく示して頂きたいというのが学術団体としての考え方だ」と述べ、納得できる情報の提供を求めた。

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