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令和3年(2021年)3月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

私の趣味、恐竜と化石

 子どもの洋服にはいろいろな絵柄がプリントされているが、恐竜は1、2を争う定番キャラクターである。やはり恐竜は子どもに根強い人気があるのだと思う。
 自分も子どもの頃は恐竜が大好きで、図鑑を見て絵を描いたり、夏休みに恐竜博に連れていってもらったのを覚えている。
 恐竜博の出口付近には大抵お土産屋があって、おもちゃなどと一緒に化石も売っており、その時に買ってもらった三葉虫とアンモナイトとサメの歯の化石が実家の自分の机の中に入っているのを見つけたので、今は自宅に飾っている。
 ある時、「三葉虫やアンモナイトだけではなく、本物の恐竜の化石って買えるのかな?」と思い、ネットで調べてみたところ、白亜紀の有名な肉食恐竜「スピノサウルス」、ジュラシック・ワールドで知名度が急上昇した海洋爬虫(はちゅう)類「モササウルス」の歯が大量に売られていることを知った。余談だが、当院かかりつけのお子さんにもモササウルスは意外と人気がある。
 「本物かな?」と疑いながら、思ったよりも安かったので試しにボロボロのスピノサウルスの歯を購入したのが、私の化石コレクションの始まりである。
 日本では化石コレクションという趣味はマイナーだが、米国ではニコラス・ケイジやレオナルド・ディカプリオといったハリウッドスターも化石をコレクションしており、意外とメジャーな趣味なのかも知れない。コレクター達はオークションで恐竜の全身化石や頭蓋骨化石などを数千万円~数億円で落札し、話題になっている。
 化石コレクションにはいくつか注意点がある。
 一つ目、違法に発掘されている化石がある。ニコラス・ケイジはオークションでタルボサウルスの頭蓋骨の化石を落札したが、違法に発掘され米国へ密輸されているものと断定されたため、モンゴルに返還することになった。
 二つ目、修復(加工)されたものや偽物が多い。化石は川や海の底、砂漠で採取されることもあるが、主に硬い岩場から掘り出されることが多い。そのため発掘の際にバラバラに割れたり、欠けてしまって一部しか見つけることができないことはよくある。修復(加工)したものを復元してしっかりと明示していれば全く問題はないが、より高く売るために樹脂で完璧な物として作り上げ売られていたり、完全に作り物の偽物が本物の化石として売られていることがよくある。
 先述のスピノサウルス、モササウルスの歯や三葉虫がたくさん発掘されるモロッコでは、化石が産業として成り立っている。発掘された化石を奇麗にプレパレーションする技術とともに、偽物を作る技術も発達している。素人には見た目で判別することは難しい。
 ごくまれに非常に良い保存状態で発掘され、手間と時間を掛けて丁寧にプレパレーションされた化石は数千万年~1億年以上前の物とは思えないような美しさを持っている。恐竜の歯は、ピカピカに照り輝く宝石のようなエナメル質とギザギザののこぎり歯がしっかり残っているのを見ると、本当に感動する。ちなみにオパール(たんぱく石)やアンモライトといった本物の宝石も、実は化石である。
 三つ目、化石は工業製品ではなく、原則1点物のため適正な値段が分かりづらい。近年はどんどんと高騰しているようである。
 四つ目、最初はボロボロの方が化石っぽいと思って購入したが、結局は美しく、大きな物、他の人が持っていない物の方が良いに決まっており、子どもの頃に憧れていたT―REXの歯やトリケラトプスの角、そして恐竜だけではなくいろいろな分野の化石にも手を出してしまうことになる。
 コレクションを始めてから10年ほど経ったが、よく見つけられたと感心するくらい、1センチ未満の小さな化石(ゴルゴサウルスという恐竜のべビーの歯)から自分一人で持ち上げるのが難しいくらい重く・大きい化石まで数えると400点を超えてしまい、置く場所にも困っている。一部をクリニックに展示しており、子どもだけではなく、家族の大人の方の目も引く。化石発掘関係、古生物関係の本もいろいろ読んで少し詳しくなったので、時間がある時には解説をしている。
 診察終了後に、あるお子さんの家族に「質問があるのですが、よろしいでしょうか?」と言われたので、病気のことについてかなと思い聞いたところ、「飾ってあるのは何の化石ですか?」という質問だった。正直少しうれしかった。

(一部省略)

東京都 武蔵野市医師会報 第626号より

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