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令和4年(2022年)1月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

新型コロナウイルス感染症の現況について

日本医師会定例記者会見 1月6日

新型コロナウイルス感染症の現況について

新型コロナウイルス感染症の現況について

 中川俊男会長は、東京や沖縄を始め、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の新規感染者が各地で増加傾向であることに加え、国内でもオミクロン株の感染が広がりつつあることから、自宅療養を推進することの重要性について日本医師会の見解を述べた他、第6波に備えた都道府県医師会の取り組みを報告した。

感染状況は全国的に「第6波」に突入

 冒頭、同会長は国内の感染状況について概説。1月5日の全国感染者数は、空港検疫の147人を含め、合計2638人確認されたことを報告した。
 特に沖縄県で623人、東京都で390人、大阪府で244人、広島県で138人、山口県で104人の新規感染者が確認されたことの他、6日の沖縄県の新規感染者数は980人前後で過去最多になる見込みであること、広島・山口・沖縄の3県へのまん延防止等重点措置の適用が検討されていること等について説明した(同措置は1月9日から実施)。
 オミクロン株については、昨年11月30日に空港検疫で1例目が確認されてから1月5日までの間に、36都道府県、検疫を含めて1480人の感染が確認されたことを踏まえ、「全国的に『第6波』に突入したと考える」との認識を示すとともに、新規感染者数の増加スピードが極めて速いことへの危機感をあらわにし、想定を超える急激な感染拡大が起きた場合、必然的に重症者数も増加するため、医療機関が対応しきれなくなる可能性を示唆した。
 また、このような状況下において、岸田文雄内閣総理大臣が1月4日の年頭記者会見において、オミクロン株による市中感染が急速に拡大する最悪の事態に備えるために、予防、検査、早期治療の枠組みを一層強化し、国内対策に重点を移す準備の開始を表明したことに言及。
 日本医師会としても、全国の医師会と連携し、危機感をもって政府の方針に全面的に協力していく意向を示した。

5医師会からのヒアリング結果を紹介

 更に中川会長は、岸田総理が、オミクロン株の感染者は全員入院、濃厚接触者は全員宿泊施設での待機とする現行の措置を、自治体の判断で重症度に応じて宿泊療養や自宅療養を認めるとの考えを示したことにも触れ、「日本医師会としても、次の感染拡大では自宅療養が大変重要になると考える」との認識を示すとともに、昨年12月より、大都市圏を中心とした10の都道府県医師会との間で、自宅療養、宿泊療養、療養先調整への対応に関するヒアリングを進めていることを報告。既にヒアリングを終えた5都道府県医師会の結果を下記のように紹介した。
●北海道医師会
 自宅療養者の約1割が要入院となった第4波、第5波の経験を踏まえ、最大想定数の6695人の約1割、700人に対応できるよう「自宅療養者等の健康観察・診療で連携する医療機関数」を約440施設確保。大規模臨時医療施設に転用可能な宿泊療養施設を継続して運営していくことになった場合は、北海道医師会によるCOVID―19JMATの派遣を検討する。
 更に、医療の逼迫(ひっぱく)度をリアルタイムで把握できるシステムを札幌医科大学が構築し、全道に展開されている他、札幌市内では、自宅療養者に訪問診療を実施する医療機関も増えており、これまで以上に体制が強化されている。
 また、妊婦の患者を受け入れる医療機関の役割分担と拡充についても、第4波で北海道大学が産科病棟にコロナ病床を設置し、中心となって対応したが、その後は他の医療機関でも受け入れ体制を整えている。
●東京都医師会
 医師会員に限らず、総力を挙げて突破していくとの危機意識をもって対応している。
 東京都の新たな事業として、各診療・検査医療機関が診断後、早期から患者に対して定期的な健康チェックを行うことを予定している。
 宿泊療養については、今後、宿泊施設を増やすに当たり、都職員の業務負荷を軽減するため、一つのホテルにつき一つの医療法人を割り当て、その斡旋(あっせん)は東京都医師会と東京都病院協会が行う予定としている。
●埼玉県医師会
 自宅療養者の最大想定数21000人のうち、軽症者や基礎疾患のある1800人を地元の医師会が対応。発熱外来を行っている医療機関のうち、573施設が自宅療養への取り組みに手を挙げ、1施設で平均3人を診る体制となっている。
 感染疑い患者向けの病床は県内の広範囲に51医療機関、291病床確保され、オミクロン株患者の場合は経過観察、濃厚接触者の受け入れを行う等、柔軟かつ効果的な病床の活用が期待される。
 その他、埼玉県独自の取り組みとして、県医師会長と県知事の考えで、かかりつけ医が罹患後症状の患者を診られるよう、症例集を作成するとともに、八つの専門病院による支援体制の構築が進められている。
●大阪府医師会
 大阪府としては、第6波について、それほど重症者がおらず、経口治療薬が登場すれば、往診や発熱外来で治療できると考えており、往診医療機関は府全体で661施設確保している。
 また、自宅療養・宿泊療養について、第4波を踏まえ体制を強化した結果、昨年8~9月の第5波対応時には、第4波に比べて5倍近い診療実績を積み上げた。
 大阪府医師会としては85の医療機関を登録し、必要な往診ができる体制を取っている他、「感染管理区域で従事する医師・看護師のための研修会」を開始。院内にインフェクションコントロールドクターや感染管理認定看護師がいない病院で、現在あるいは今後、感染対策を担う医師・看護師を対象に現場研修を継続的に実施し、感染管理の対応ができる人材を確保していく。
 また、通常医療については、多くの民間病院が救急医療を担っており、対応可能である。
●沖縄県医師会
 病床確保については、災害医療で利用する独自のシステムが2020年4月に構築されており、同システムに各病院が実際に受け入れ可能な患者を、中等症、重症、人工呼吸器、ECMO等を分類して入力可能。リアルタイムで、どの病院にどれだけ空きがあるのか、どれくらいの負荷が掛かっているのか把握できるようになっている。
 更に、沖縄県医師会が中心となって、病院長会議を繰り返し開催し、入院を要する患者が入院することができない事例を防いでいる。
 また、北部地区医師会では、全ての陽性患者をいったん医師会病院や県立病院の医師が診察し、評価する仕組みを取っているため、自宅療養中に悪化しても、そのリスクや、やるべき治療が分かり、すぐに対応できる。
 これらのヒアリング結果を受けて、中川会長は「各医師会に共通していることは、医師会と行政、医療総括の担当者との間でしっかり議論を行い、各地の実情に応じた体制を構築しながら第6波に備えていることだ」と総括した上で、「日本医師会としても、危機意識を新たにし、地域医師会の取り組みを最大限支援していく」とした。

国民の生命と健康を守るため精一杯尽力する

 加えて、中川会長は昨年12月28日に行われた後藤茂之厚生労働大臣と、日本医師会、日本薬剤師会、日本看護協会との意見交換会(別記事参照)において、大臣より第6波に備え、健康観察・診療医療機関増加等の協力要請があったことにも言及。日本医師会として各都道府県医師会に対し、郡市区医師会と協議の上、対応を進めるよう依頼していることを報告した。
 経口薬については、①メルク社のモルヌピラビルが1月4日に供給先として登録された1万の医療機関・薬局の半数に対して供給がなされた他、ファイザー社製についても、2月中の速やかな実用化を目指すと岸田総理が表明している②厚労省が、自宅療養者に速やかに投与できる体制を確立する方針を示している―ことに言及。「投薬対象患者の安心のためには、自宅よりも医療機関で対応・治療できる体制が不可欠」との認識を示すとともに、経口薬が重症化リスクを軽減し、医療機関の逼迫が軽減されることに期待感を表明。「国には、地域の多くの医療機関で経口薬をより多くの患者に提供することができるよう、供給量を大幅に確保する等の配慮をお願いしたい」と要請した。
 その上で、中川会長は、これからの新型コロナとの闘いは、基本的な感染対策に加え、ワクチンの追加接種の普及や経口薬の開発等により、刻々と変化していくとし、「日本医師会としても、国民の命と健康を守り、新型コロナが早期に収束に向かうよう、本年も引き続き精一杯、尽力する」との決意を示した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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