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令和4年(2022年)1月13日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

新型コロナウイルス感染症の現況について

 中川俊男会長は1月12日の定例記者会見で、沖縄県の新型コロナウイルス感染症の感染状況を報告した上で、国内のオミクロン株の感染状況やワクチンの追加接種及び経口薬等について説明するとともに、日本医師会の見解を示した。

 中川会長は冒頭、全国で新規感染者が急増し、政府が1月9日に広島県、山口県、沖縄県に対して、まん延防止等重点措置を適用したことに触れるとともに、沖縄県の感染状況について、沖縄県立中部病院の勤務医である高山義浩日医総研客員研究員からの情報提供を基に以下のとおり報告した。

・沖縄県の感染状況
 ほぼオミクロン株に置き換わっており、新型コロナウイルス発生後の2年間で最大規模の流行となっている。過去の流行と比べて若者の感染捕捉率が上がっていることについては、検査を無料化したことにより検査を受けやすくなったことが考えられる。また、沖縄県の疫学分析チームでは、今後も感染が拡大するものの、依頼件数が検査体制の上限に達する後には、新規感染者数が横ばいになるとの推定から、新規感染者数が減少に転ずるのは今月末まで掛かると見込んでいる。

・オミクロン株とデルタ株の臨床上の違い
 沖縄県内で1月以降に8000人以上の感染者を確認しているが、重症者は1人も発生していない。特に若者ではオミクロン株のほとんどが軽症か無症状で終わっている。ハイリスク者、特に高齢者の症例が少ないために、現時点での判断は困難であるが、県立宮古病院と県立八重山病院の限定的な臨床報告では80歳以上の感染者のうち30.8%が酸素投与を要する状態であり、今後の高齢者への感染拡大した場合には、医療がひっ迫する恐れがある。

・確保病床の状況
 即応病床として439床を速やかにコロナ患者に対応できる体制をとっている他、段階的な病床拡張の後、最終的には第5波を上回る924床の確保を目指し、更なる感染拡大に対応できる体制をとっている。しかし、このうちの準備病床209床については、コロナ以外の患者さんの診療から一定期間で即応病床に転換できるが、極めて速い新型コロナの感染の勢いに、病床の転換が間に合わなくなりつつあるという課題が生じている。

・医療従事者の感染状況等
 1月12日の昼時点のコロナ患者の入院治療に当たる医療機関だけで、医師、看護師を始め事務職員など濃厚接触者を含めて、628人が働けない状況であるとし、病床を確保しても医療従事者が確保できずにコロナ診療だけでなく、通常医療すら維持することが困難となっている。

 こうした状況から医療供給体制を維持するために、濃厚接触者となった医療従事者のうち、無症状の場合には、毎日業務前にPCR検査または抗原定性検査で陰性を確認することで就労を認めている。介護従事者でも同様の対応を取らなければ、容易に介護崩壊が発生し、ドミノ式に医療危機が生じる懸念がある。加えて、既に学校や保育園での感染が広がり始めていることで、子どもが登校停止により出勤できなくなる医療従事者が増加すれば、再び人材不足が加速しかねず、社会全体の機能を維持する観点から、オミクロン株の病原性を踏まえて、濃厚接触者の就労制限・外出自粛の考え方を再検討する必要がある。

・検査体制
 連日、多数の感染者の確認されている背景の一つに軽症者、無症状者の高い捕捉率があると思われるが、検査体制の限界として1日に26,000件程度が上限として、仮に10%の陽性率であったとしても1日の新たな陽性者として捕捉できるのは2600人程度であり、数日のうちに突破される可能性がある。

 中川会長は、こうした状況を踏まえて、「沖縄県は全国の先行事例となる状況にある」とした上で、これまでのコロナ医療とは異なるオミクロン株特有の医療のあり方を考える時期に来ていると指摘。まずは、全国的に検査体制の更なる拡充が求められるとして、今まで以上にハイリスクの方、高齢者に重点を置いたコロナ医療の提供が必要になると強調した。

 オミクロン株については、1月6日に開催されたアドバイザリーボードの資料などを基に、これまで新型コロナの特徴的な症状とされていた嗅覚障害・味覚障害は1名であることなどを説明。現時点での感染の中心は若者であり、基礎疾患を持っている方や高齢者の症例が少なく、重症化リスクの評価は困難であるとする一方で、WHOからは「オミクロン株は、特にワクチン接種を受けた人は、デルタ株と比べて重症化リスクが低いとみられるが、軽度と分類されるべきではない」との見解も示されていることを紹介し、「オミクロン株が例え重症化しにくいとしても、感染者が激増すれば、一定の割合で重症者数が増加する。現時点でオミクロン株を楽観視するべきではない」との見方を示した。

 また、ワクチンの追加接種が先行する欧米でも医療提供体制のひっ迫が深刻であり、日本ではより深刻な状況に陥る恐れがあることから、早期に追加接種を進める必要性があるとともに、地域の医療機関での接種が追加接種の大きな推進力となることを指摘。そのためにも国に対して、ワクチンの円滑な供給を要請する意向を表明した。具体的には、全国の自治体などの約900万回分の在庫の実態と接種予定を明らかにすること、更に、ワクチンの在庫がなく供給を申し込んでいる医療機関に供給予定をきめ細かく伝えることで、地域の実情にあった計画的な接種をより加速することができるとした。

 更に、経口薬のモルヌピラビルについては、現状では、重症化リスクの高い方に限定的に投与するとされ、重症化リスクを30%減少させるというものであり、医療提供体制のひっ迫の軽減につながるとする一方で、特効薬とまでは言い難いと説明。季節性インフルエンザのタミフルやリレンザのようにすぐに使用できるような認識が広がっていることに対して、国に正しい情報提供をするよう求めた。

 最後に中川会長は、「オミクロン株の感染力の高さは、感染拡大の勢いからも明らかであり、医療従事者の感染が深刻化すれば、医療提供体制のひっ迫が起こり、医療従事者に限らずエッセンシャルワーカーの感染者が増加すれば、社会機能の維持も困難になる。国が感染者や濃厚接触者の対応を適時見直し、ウイルスが変異を繰り返す過程に柔軟に対応していることは評価するが、更なるスピード感をもった対応をお願いしたい」と述べるとともに、「正しいマスクの着用、手洗いや手指の消毒、密になる場面を避ける、換気をしっかり行うなど、引き続き、これまでの基本的な感染対策をしっかりと続け、オミクロン株の正体が分かるまで正しく恐れることが重要である」と改めて訴えた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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