閉じる

令和4年(2022年)5月5日(木) / 日医ニュース

「児童・生徒をとりまく課題」をテーマに情報共有を図る

「児童・生徒をとりまく課題」をテーマに情報共有を図る

「児童・生徒をとりまく課題」をテーマに情報共有を図る

 令和4年度学校保健講習会を4月10日、WEB会議で開催し、539名が聴講した。
 講習会は、渡辺弘司常任理事の司会により開会。冒頭あいさつした中川俊男会長は、まず、コロナ医療とコロナ以外の通常医療、ワクチン接種等への協力に感謝の意を表した上で、長期にわたる生活環境の変化が子ども達の発育に与える影響に懸念を表明。また、ロシア軍によるウクライナ市民への無差別攻撃にも触れながら、「人生100年時代において、子ども達が健やかに育っていくためにも、平和な社会が続いていくことを願う」と述べた。
 続いてあいさつを行った中川日本学校保健会長(弓倉整日本学校保健会専務理事代読)は、学校保健の推進への尽力に謝意を示し、社会環境や生活環境の急激な変化、新型コロナウイルス感染症による長期にわたる制限によって、子ども達にさまざまな健康課題が生じているとして、「組織的連携の一層の強化が求められており、学校医の果たす役割はますます重要なものになっている」と強調した。
 その後は、松村誠学校保健委員会委員長/広島県医師会長を座長として、宇高章広文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課企画官、山田泰造文科省初等中等教育局特別支援教育課長からそれぞれ中央情勢報告が行われた。
 宇高企画官は、学校保健に係る取り組み状況として、児童生徒の新型コロナウイルス感染症感染者の推移や感染経路等について概説するとともに、(1)学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル、(2)感染が確認された場合の対応ガイドライン―を作成したとして、その内容を紹介。この他、今年度の事業検討案についても報告した。
 続いて、山田課長は、特別支援教育の動向として、その現状について触れた上で、(1)医療的ケア児への支援、(2)教員の専門性向上、(3)通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査の実施、(4)学校教育法施行規則の一部改正、(5)特別支援学校設置基準―について説明した。
 その他、弓倉専務理事は日本学校保健会の取り組みとして、学校生活管理指導表の改訂や感染症対策等を概説した他、新たに開発したマップビューシステムを紹介。
 また、渡辺常任理事からは、文科省の中央教育審議会(以下、中教審)の概要やこれまでの中教審に対する日本医師会の対応、第3次学校安全の推進に関する計画の策定などについて報告が行われた。
 その後、浅井秀実学校保健委員会副委員長を座長として、松村委員長から日本医師会学校保健委員会の答申報告及び4名のシンポジストによる講演が行われた。

講演1

 蓜島尚範文科省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室いじめ・自殺等対策専門官は、(1)いじめ、(2)自殺、(3)不登校―の3点について解説。
 (1)では、いじめ防止対策推進法やいじめに関する調査等について説明。教職員が子どものサインを見逃す恐れや、時代とともに変化する子ども達の様子に合わせた対応の困難さを指摘し、「子どもの健康、医療、心理と多様な面からサポートして欲しい」と呼び掛けた。
 (2)では、コロナ禍における児童生徒の自殺者は増加傾向にあるが、その背景には複雑な要因があるとして、自殺予防教育の重要性を強調。この他、自殺予防に係る子どもSOSダイヤルやSNSなどのツールを紹介した。
 (3)では、不登校の現状や要因等について説明し、学校医に求められる支援として、「不登校の児童生徒へのアセスメントに医療の力を貸すこと」「教育以外の視点からアドバイスをすること」を挙げ、協力を求めた。

講演2

 内尾彰宏厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課虐待防止対策推進室長補佐は、(1)児童虐待、(2)ヤングケアラー―の現状について説明。
 (1)では、「虐待相談対応件数は増加傾向にあるが、気付いていない虐待事案も多くある」「複雑な事情から自ら適切な支援を求められない」といった問題を指摘した他、要保護児童対策地域協議会に所属している医師会の医師が、個別ケース会議に参加できていない現状があるとして、その改善に努める考えを示した。
 (2)では、「負担や責任の重さによって、学業や友人関係等に影響が出る」「本人及び家族の自覚、社会的な認知度の低さ」といった問題を危惧し、「日常的に接する患者さんの日々のケアを担っている人が誰か探ることでヤングケアラーを把握し、さまざまな福祉機関につなげて欲しい」と要望した。

講演3

 丸山耕一日本眼科医会理事は、ICT化に伴う目の健康について、新型コロナウイルス感染症によってパソコンなどの画面を見る機会が増加する一方、屋外活動が減少したことで、近視の他、眼精疲労やドライアイの発症・症状が進んでいることを報告。今後は目の健康リテラシーの向上や各家庭・学校関係者・眼科学校医の連携が重要になるとした。

講演4

 衞藤隆東京大学名誉教授は、エコチル調査の概要について解説した上で、学校保健の観点からエコチル調査に期待する点として、(1)さまざまな化学物質の成長発達、(2)地球環境の気候変動の成長発達―への影響に関する調査で得られた成果を児童生徒への保健教育に役立てることがあると説明した。
 その後の総合討論では、シンポジストの間で活発な意見交換が行われた。
 最後に渡辺常任理事が「本日の講習会で研鑽(けんさん)を積まれた成果を地域医療の現場や学校現場において役立てて頂きたい」とあいさつし、講習会は終了となった。
 なお、当日の映像は、後日に日本医師会ホームページのメンバーズルーム内の「学校保健のページ」に掲載予定となっている。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる