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令和4年(2022年)10月5日(水) / 南から北から / 日医ニュース

患者さんに助けられて

 2021年10月に開業させて頂き、半年が経ちました。
 日々慣れないことばかりで周りの方々に支えて頂きながら診療をしていますが、周りの方という中に患者さんも含まれていることに開業して初めて気付かされました。
 今までは大学病院や総合病院で、次から次へと難しいもしくは重症の患者さんを診察していく中で、コメディカルの方達の力は偉大だなと日々思っていたのですが、開業してみると、毎日の患者さんにも心救われることが多々あります。
 まずは、子どもさん。いつも湿疹で受診されている小学生の女の子のお母さんが、「先生、この前動物を触ったら、くしゃみや鼻水が1日中止まらずに大変でした。アレルギーの血液検査してもらえませんか?」と尋ねてきました。女の子も採血を決意して受診されたようです。
 いざ、看護師さんが採血をしようとすると、大泣き。私は「無理しなくていいんだよ。また大きくなってからやろうか」と提案するのですが、女の子は首を大きく左右に振って諦めません。そんなことを数回繰り返しているうちにかれこれ30分。お母さんもお子さんを説得し、当日は一度帰って頂くことに。
 後日、湿疹の経過でまた女の子が受診してきました。「今日は採血できる!」と自分から言うので、また看護師さんが採血しようとすると、やはり怖いのか大泣き。「無理にやることないよ」と言っても悔しいのか、なかなか帰りません。
 そして、1カ月後。「先生、4月で〇年生になったよ! もう採血できる!」。私は心の中で、「今日もきっと難しいかな......」と勝手に思いながらも、本人の意思を尊重しようと処置室に案内しました。しかし、予想と反していつもの大泣きの声が聞こえてきません。すると女の子が「私、採血できたよ! だって〇年生だもん」とニコニコで報告してきてくれました。本人にとっても進級というエピソードは大きな後押しになったようです。
 子どもの成長は目まぐるしいものがあります。苦手なことから逃げずに自ら頑張る。そんな姿を見て、私もとても勉強になり、また心救われる思いになりました。
 その他にも、私よりも年齢が上の患者さんに「ちゃんとご飯食べてる? 休めてる?」と心配頂くことがあります。開業してみて初めて、コメディカルの皆さんだけではなく、患者さんにも私達は助けられていると改めて気付かされ、反省とともに周りの方々への感謝の気持ちを忘れず日々精進しなければと思う今日この頃です。

愛知県 岡崎医報 第384号より

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