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令和5年(2023年)5月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

医者と童顔

 私は、医者という職業に童顔(若く見える)は百害あって一利無しだと思っています。私は童顔でしたが、残念ながら決して美男子ではありません。一言で言うと貫禄が無かったのです。
 私の入局直後は当然ですが、入局して3~4年経ち、後輩達が入局してきて少しだけ偉くなっても、担当病室の患者さんから「先生が一番上だったんだ。下なのに上の先生方に随分と態度が大きいと思っていました」と言われた時にはへこんでいました。
 昔、「貫禄がある(老け顔の)新入医局員が教授診の時に書記役で教授の向かいに座っていたら、入ってきた患者さんが、新入医局員の貫禄に惑わされて新入医局員の前に座ったため、教授の方が渋い顔をした」という伝説を先輩に聞き、その新入医局員の先生の実名を聞いて妙に納得した覚えがあります。
 しかし笑い話なら良いのですが、自分がいつまでも若造に見られているのはさすがにつらいものです。
 実際の診療でも、たとえ正しい診断であっても患者さんにとってうれしくない場合は、なかなか納得してもらえないことが数多くありました。そのような時、ひげを生やしてみたり、太ったりと無駄な努力はしたのですが、当時は効果はありませんでしたし、今も、その時の後遺症で肥満に悩まされています。
 その私もついに70歳になり、童顔とは言えなくなりました。鏡の中には、私の祖父や父にそっくりな薄い白髪頭でしみだらけの顔があります。
 そのためか、最近はムンテラが非常に楽です。診断する時はもちろんのこと、たとえ診断が分からなくて、「ゴメン、分からない。医者としての型式が古くなったからかな?」と言っても患者さんは許してくれ優しくしてくれます。診療がスムーズで楽しくてたまりません。医師としての寿命のろうそくの火が消える寸前に、一瞬、明るくなるような、神様からのご褒美でしょうか。
 ここで童顔に生まれてきてしまった後輩諸君にアドバイスします。医者は老けて見える方が絶対に得です。決して、女性にもてようなどと煩悩をもってはいけません。アンチエイジングなどもっての外、髪の毛や眉毛を剃ったり、特殊メイクをしたり、せめて年齢不詳に見えるように、あらゆる努力をしましょう。太るのは生命予後に影響するのでお勧めできません。
 また、これは、あくまでも男性医師に限定のアドバイスです。美魔女の先生方にはお勧めできません。

岩手県 いわて医報 NO.855より

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