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令和5年(2023年)11月5日(日) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「医療用医薬品不足の現状と問題点について~緊急アンケート集計結果(速報)~」を公表

日本医師会記者会見 10月6日

「医療用医薬品不足の現状と問題点について~緊急アンケート集計結果(速報)~」を公表

「医療用医薬品不足の現状と問題点について~緊急アンケート集計結果(速報)~」を公表

 宮川政昭常任理事は、日本医師会が緊急で行った「医薬品供給不足 緊急アンケート」結果(速報)の概要、並びに、日本製薬団体連合会(日薬連)が行っている「医薬品供給状況にかかる調査」結果との比較分析の説明を行った。医薬品製造企業と実際の医療現場で実態が異なる部分があるとして、その改善を求めるとともに、長期にわたる医薬品不足問題がなかなか解決されないことに懸念を示し、「真摯(しんし)に向き合って問題点を明らかにし、国だけではなく、医療関係業界も一緒になって対策を考えていかなければならない」と強調した。
 まず、宮川常任理事は、今回のアンケートについて、不足している医薬品や流通偏在等を把握し、国や対象業界団体に対して改善要望等を働き掛けるため、8月9日~9月30日の期間で実施し、9月30日時点で6773医療機関から回答が得られたとして、協力医療機関に感謝の意を示した上で、アンケートの主な結果を以下のとおり説明した。
 院内処方を行っている医療機関で入手困難な医薬品の有無を聞いたところ、「入手困難である」と回答した割合が90・2%と全国で医薬品が困窮している状況にあり、また、「卸に発注した医薬品の納入状況」については、「発注しても納品されない」状況が49・7%あった。
 「院外薬局からの医薬品在庫不足に関する連絡の有無」に関しては、「疑義照会等も含めた医薬品不足の連絡があった」と回答した割合は74・0%であった。
 また、これらの結果を基に比較分析した結果、①日本医師会のアンケートで院内処方において「入手困難」として回答のあった2096品目のうち、日薬連の調査で各医薬品製造企業が「通常出荷」として回答している品目は670品目あった②日薬連の調査では、トラネキサム酸錠250ミリグラム「YD」が、同一成分の他社の品目が全て「限定出荷」となっている中「通常出荷」となっていたが、日本医師会のアンケートでは供給不足の上位に挙がっている―などのギャップがあった。
 これらの結果について、宮川常任理事は、①に関しては、「通常出荷」の定義が非常にあいまいであることを批判。「新型コロナウイルス感染症や新型インフルエンザ等の感染症が同時流行した場合、医薬品の需要は非常に高まる一方、在庫の余剰生産は難しくなることは明らかであり、医薬品業界は世情や医薬品の在庫状況などを踏まえてしっかりとした対策を立てるべき」との考えを示した。
 ②については、「原因の一つとして、感染症のために処方するだけでなく、自由診療の中で美白目的等による長期使用が考えられる」と指摘。また、院外処方に関する品目別の傾向分析(内用薬)では、去痰剤、解熱鎮痛剤が上位を占めていることに触れ、去痰剤に関しては、より多くの急性期患者や呼吸器疾患の患者に行き渡るよう、日本医師会から厚生労働省に対して申し出を行い、60日処方や90日処方といった長期処方は控えるよう通知を発出してもらったことを明らかにした。
 今回のアンケートの分析にも協力し、会見に同席した坂巻弘之公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授は、まず、オーソライズド・ジェネリック(AG)の問題について言及。薬局等では先発品と同じ製品でありながら価格が違う一物二価のAGが大きなシェアを占めることで、一般の各ジェネリックメーカーが競争するとともに、市場のニーズと自社の価格設定等の予測が難しくなるため、全体的な安定供給が困難になっていることを説明した他、先発品企業もライセンス料等を得ることが可能であるため、長期収載依存を助長する原因にもなっているとして、その改善を求めた。
 また、口腔内崩壊錠(OD錠)の開発により、複数の剤形が存在していることについて、「OD錠の製造負荷や安定供給を鑑みれば、必要ないものは整理するべき」と主張。その他、共同開発の問題については、製造設備を持っていない企業が多く参入しているため、日本全体の製造キャパシティは増えず、供給不足が起こっていると指摘。更に、委受託製造の問題に関しては、何か問題が起きた際に、どこで製造しているのか、どこの企業が製造しているのかが分からず、対応が取りにくくなるといった問題が発生しているとして、トレーサビリティの確保の必要性を強調した。
 最後に、宮川常任理事は、「薬の適正使用や生産体制の確保の検討は今後非常に重要な課題となる」とした上で、「平時だけではなく、感染症まん延時や災害などの有事の際にも、状況に合わせた供給体制や生産体制を確立しておくべき」とした他、「供給不足は後発医薬品だけの問題ではない」として、国や産業界等が一丸となって考えていくことを要請。一方、坂巻教授は「供給不足はさまざまな要因が絡んで起きているということの認識」とともに、「問題に対して適切で迅速な政策対応を行うこと」が必要とした他、医薬品の出荷の状況に関しては、「企業の出荷情報だけではなく、医療現場の供給情報についても定期的に調査する必要がある」とした。

医薬品不足で緊急対応策を公表―厚労省

 なお、医薬品不足の問題に関しては、10月18日、武見敬三厚労大臣が緊急対応策を公表。不足している薬を製造する主要メーカー8社に対し、在庫の放出や緊急の増産を要請した他、年明け以降の更なる増産に向けて、必要となる人員の確保や生産設備の増強などを行うメーカーへの支援を、政府が策定する新たな経済対策に盛り込む方針を明らかにした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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