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令和5年(2023年)10月20日(金) / 南から北から / 日医ニュース

あだ名のお話

 暮れに中学の同級生と会う機会があり、久々に「葉子ちゃん」と呼ばれ、そういえば名前で呼ばれることが少ないなと気が付いた。
 思えば昔から私にはあだ名が常にあったような気がする。
 小学生の時は「おだんご」と「かおまるり」。身体的特徴をこれでもかという程的確に捉えていて、今ならいじめの対象と思われかねない。でも当時悪意はみじんも感じられず(私が鈍感だったのかは別として)、当然のように皆あだ名で呼び合っていた。ちなみに「かおまるり」の友達には「とんころり」や「とっと」「ひこたん」などがいた。
 中学になると女子は皆「葉子ちゃん」と言ってくれたが、なぜか一部の男子は「ギョロ目ギツネ」とか「大怪鳥(だいかいちょう)」とか勝手にあだ名を付けていた。たぶん自分では気が付かなかったが、「ぎょえ~」というイメージだったのかも知れない。私の彼らに対する当たりの強さがうかがわれる。
 大学では、8月8日生まれの葉子なので「はっぱ」と、初めて可愛いあだ名を頂いた。今でも大学の同級生や医局や部の先輩後輩に「はっぱ」「はっぱさん」と呼ばれることは多く、違和感なく使われている。
 今の小中学校であだ名はいじめの温床として排除されている感がある。「ちゃんと名前で呼びましょう」。それは良いのだが、あだ名があってこそ友達同士が同じ仲間意識の中で楽しく付き合えることもあったと思うのだ。優しい気持ちであだ名を呼び合えない関係性の方が問題なのだ。何と窮屈なことだろう。昔で良かった。
 今年気が付いたら還暦だった。まさか、そんなはずはないと思うのだがやはりそうだ。
 娘には「還暦で『はっぱ』なんてあだ名で呼ばれてるの、ちょっと痛いよ」と言われてしまった。そうかなあ、自分の中では今も「おだんご」のままの私がいるんだけどなあ。
 人間、本質的にはそんなに変われないんだよ。大事なものは変わらないんだよ。
 次の12年後も「はっぱばあちゃん」でいさせてもらうよ。

岩手県 いわて医報 NO.860より

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