閉じる

令和7年(2025年)10月20日(月) / 日医ニュース

被爆80年で思うこと

 今年は広島と長崎に原子爆弾が投下されちょうど80年の節目の年であり、広島では8月6日にさまざまなイベントがあった。
 最も印象に残ったのは、恒例の平和記念式典での湯崎英彦広島県知事のあいさつである。「抑止とはあくまで頭の中で構成された概念または心理、つまりフィクションである」「もし核による抑止が破られて核戦争になれば、人類も地球も再生不能な惨禍に見舞われる」「抑止力から核という要素を取り除かなければならない」「人類の、地球の生と安全を勝ち取ろう」と語った。
 最後に「被爆で崩壊した瓦礫(がれき)で身動きが取れない被爆者が暗闇の一筋の光に向って這(は)い進み、生を掴(つか)んだ」「諦めるな。押し続けろ。進み続けろ。光が見えるだろう。核廃絶という光に向かって這っていけ」と締めくくった。
 知性で語りかけたこの素晴らしいメッセージが、核保有国元首や自信過剰な指導者にも届いてもらいたいと願う。
 もう一つ、広島県、広島市両医師会も、「ヒロシマ医師の被爆80年・あきらめない、やめない、終わらない」という県民向けのイベントを8月3日に開催し、被爆伝承コーナーもリニューアルした。被爆者が高齢化し少なくなる中、94歳の医師で元広島大学学長の原田康夫氏が自らの被爆体験を若い聴衆にもしっかりと語り、感銘を与えた。
 ただし、年齢的に被爆伝承者は10年後にはほぼ皆無となる。被爆を体験した広島だからこそ、今後も不屈の精神で世界に平和と核廃絶を唱えていかなければならないと再認識した。

(グリーン)

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる