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令和7年(2025年)11月26日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

インフレ下における賃金・物価上昇への次期診療報酬改定での対応について

 松本吉郎会長は11月26日、定例記者会見で、インフレ下における賃金・物価上昇への次期診療報酬改定での対応について、日本医師会の考え方を説明した。

 会見の冒頭、松本会長は、10月1日の定例記者会見で、次期診療報酬改定に向け、改定2年目における物価・賃金の上昇に適切に対応するための方策として、(1)次の改定までの2年間をしっかりとみた改定水準、(2)2年目の分を2年目に確実に上乗せする改定―の2案を示し、いずれかの対応を明確化して行うべきであると提案したことに触れた。

 その上で、11月20日に開催された社会保障審議会医療保険部会で示された、令和8年度診療報酬改定の基本方針についての骨子案において、「3.今後の課題」に関して、「現下のような持続的な物価高騰・賃金上昇局面において、諸経費や設備投資の増加及び処遇改善に対応するための支援を、保険料負担の抑制努力の必要性にも配意しつつ、報酬措置においても適時適切に行えるよう検討する必要がある」と記されたことに言及し、"適時適切"と明記されたことは非常に重要だとした。

 更に、日本医師会として、(1)の案が理想的で望ましいものの、2年目の予算を先取りすること等もあり、(2)が現実的と考えているとした。2年目(令和9年度予算)での対応とする場合には、大臣折衝等で明確化して対応すべきとの認識を示した他、特に賃金に関して、ベースアップ評価料は対象職種が限定されている等の課題があることから、基本診療料を中心として上乗せする必要があると主張した。

 また、同日午前に開催された中医協総会において発表された「第25回医療経済実態調査報告」の結果について、医療法人(一般診療所)の令和6年度における損益率(中央値)が2.7%になっていたことにも言及。「MCDBや日本医師会等の調査と比べて大きな違いはない」と述べるとともに、「何より、診療所の約4割が赤字という現在の状況は看過できない」とし、「このままでは閉院する医療機関が増え、地域医療の崩壊を招く」と危機感を示すとともに、赤字の診療所から赤字の病院への財源の移転は医療提供体制の改善につながらないと主張。改めて、財源の純粋な上乗せによる対応が不可欠との認識を示し、「病院と診療所あっての地域医療だ」と強調した。

 更に、「骨太の方針2025」における、次期報酬改定に関する記載に触れた上で、まず、補正予算によって過年度の不足分に対応し、大量出血の状態にある医療機関を一時的に「止血」する必要があるとした。

 最後に、「大切なことは、出血を止めた上で、令和8年度診療報酬改定での根治治療を行うことであり、次の改定までの2年間をしっかりとみた改定水準が必要である」とし、補正予算の経済規模を土台とした上で、更なる力強い物価高騰・賃上げへの対策が不可欠であると主張するとともに、この土台を発射台として、令和8年度診療報酬改定が行われるものと考えているとした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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