右から2人目阿部先生、3人目井上先生
右から2人目阿部先生、3人目井上先生
| 日本医師会では、若手医師の医師会活動への参画支援の新たな取り組みとして、世界医師会(WMA)理事会・総会に併せて開催される医学部卒後10年以内の医師を対象とした会議に若手会員(医学部卒後10年以内の日本医師会員)を派遣することにいたしました。全国から幅広く希望者を募るため、全国六つの地域ブロックに対し、推薦の協力をお願いしたところです。 2025年度の派遣者の推薦は、関東甲信越及び近畿ブロックにご協力を頂き、10月にポルトガルで開催されたWMAポルト総会に併せて開催された若手医師(WMAジュニアドクターズネットワーク:WMA―JDN)の会議には、神奈川県及び京都府医師会のお力添えの下、2名の若手会員を派遣しました。今号ではその先生方の報告を掲載します。 |
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横浜市立大学附属病院 阿部茉莉愛(関東甲信越ブロック推薦)
ポルトガルで開催された世界医師会若手医師の会議は、世界各国の若手医師と交流し、医療制度や労働環境、医師の価値観などを学ぶ貴重な機会となりました。
アジア、欧州、北米、南米、アフリカなど多くの国から若手医師が参加し、薬剤耐性と医学教育、医療倫理、パンデミックや、プライマリ・ヘルスケアと非感染性疾患(NCDs)・プラネタリーヘルス(地球規模の健康)など、世界的な問題について議論を行いました。
例えば、今回の会議の開催国である、ワインの生産が盛んなポルトガルでは、アルコール摂取の是正についての意見が挙がり、韓国からは若年層の自殺問題が報告され、メンタルヘルス対策の必要性が指摘されました。
日本は高齢化が進んでおり、高血圧症や糖尿病などの非感染性疾患が増加しているものの、必ずしも適切なコントロールが行われているとは言い難い点を指摘し、どのように解決できるか議論しました。
更に、日本では労働における安全性が担保されていますが、国によっては戦争や政情不安により、病院施設が崩壊するような過酷な環境で働く医師の実態も報告され、労働環境の改善が望まれると強く感じました。
若手医師の会議に続いて開催された世界医師会理事会では、若手医師会議の議長が、世界医師会のメンバーの一員として意見を述べており、若手の視点が世界医師会の議論の中で尊重されていることを目の当たりにして、感銘を受けました。
今後は今回の学びを日本の現場に生かし、医療の実現に貢献していきたいと感じております。
最後に、このような大変貴重な機会を頂きまして、日本医師会の先生方や関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
京都第二赤十字病院 井上芳樹(近畿ブロック推薦)
世界医師会若手医師の会議に参加させて頂きました。初期臨床研修医として働き始めたばかりの私にとって、初めての国際会議での交流は非常に貴重な経験となりました。
WMA―JDNは卒後10年以内の若手医師で構成され、教育や労働環境の改善、国際協力を目的としたネットワークです。
ポルトで開催された今回の会議では、各国の代表者が自国の若手医師の勤務環境の課題を共有し、議論を交わしました。私は日本の「医師の働き方改革」を中心に発表し、改革後も長時間労働が続く場合があることや、メンタルヘルス支援、ICTの活用、主治医制からチーム制への移行など、現場での改善策を紹介しました。
会議を通して、過重労働を規制する制度があっても、実際の働き方との間には大きなギャップがあることを実感しました。
例えば、EU諸国では若手医師の週ごとの労働時間上限は48時間と定められていますが、実際の平均労働時間はこれを10時間以上超える場合もあり、過重労働や待遇への不満から他国へ移住する医師もいるとの報告もありました。若手医師の労働実態を客観的に把握し、国際的に比較可能なデータを整備することが重要であると感じました。
この会議はこうした課題を共有し、国際的に解決策を模索する場として大きな意義があると実感しました。
今回の経験を通じて、自国の医療制度を客観的に見直すとともに、医師の健康を守るには制度の導入だけでなく、文化や意識の変化も必要であることを再確認しました。国境を越えて同じ志を持つ仲間と出会えたことは大きな財産であり、この経験を糧に、国際的な視点を持って成長していきたいと考えております。
最後に、この機会を下さった日本医師会の皆様に心より感謝申し上げます。



