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令和8年(2026年)9月5日(土) / 日医ニュース

地域に必要な看護職養成機能の維持に向けて課題と方向性を共有

地域に必要な看護職養成機能の維持に向けて課題と方向性を共有

地域に必要な看護職養成機能の維持に向けて課題と方向性を共有

 令和8年度医師会立看護師等養成所会議(都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会)が7月31日、オンライン形式で開催され、人口減少下における看護職養成の方向性や、遠隔授業・サテライト化による地域の養成機能維持に向けた取り組みなどが報告された。
 会議は江澤和彦常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、7月28日に発生した令和8年熊本地震で被災した人々にお見舞いの言葉を述べ、JMATによる被災状況の把握と支援に万全を期す考えを示した。
 また、学生数の減少により養成所の閉校が相次ぎ、2025年から6年間で94課程が閉校予定となっている現状に強い危機感を表明。地元定着率の高い養成所への支援を急ぎ、地域に必要な養成機能を可能な限り残す必要性を強調した。

(1)2040年に向けた人口構造変化を踏まえた看護職養成の課題と方向性

 松本晴樹文部科学省高等教育局医学教育課企画官は、18歳人口の減少を踏まえた大学の機能分化と量的規模の在り方について概説。2040年には医療職を含む専門職が180万人不足する一方、事務職は437万人余るとの推計を示し、医療・保健系の養成規模を維持する必要があるとした。
 また、2035年頃までは18歳人口が大きく減らないものの、その後5年間で20%以上減少する見通しであり、「改革を先送りすれば地域の大学や養成所が共倒れしかねない」と指摘。看護職は地元で養成した場合に地域へ定着する割合が高いことから、個々の学校の存続だけでなく、知事の関与の下、都道府県、医師会、看護協会、大学、養成所等が医療提供体制と整合させながら、県全体で養成機能の配置や定員の再編を検討する枠組みが必要だとした。
 さらに、大学と養成所の連携や、小規模でも養成を続けられるサテライト化にも期待を示した。
 また、好事例として、県内出身者が約7割、県内就職率が約8割に上る鳥取看護大学で行われている「奨学金」「早期からの地域実習」「地域住民による学生支援」など、地域全体で看護職を育てる取り組みを紹介。さらに、地域に不可欠で県内就職率が50%以上の専門学校については、高等教育の修学支援新制度の対象継続を知事が判断できる特例があることなどを説明し、「地域枠やキャリア形成支援、教員確保、実践的な教育の充実を進め、2030年代半ばを迎える前に持続可能な養成体制を構築すべき」と訴えた。

(2)看護師等養成所における最近の動向と課題~遠隔授業・サテライト教室等のICT活用事例について~

 習田由美子厚生労働省医政局看護課長は、85歳以上の救急搬送が2040年に向けて2020年比で75%増加し、在宅医療の需要も拡大する中、地域で高齢者の状態を的確に判断できる看護職の確保が求められていると指摘。その一方で、看護職員の就業者は約174万人まで増えたものの、2020年から2023年までの増加は約1万人にとどまり、全国の有効求人倍率は2・04倍、訪問看護ステーションでは4・54倍に達していると説明した。
 養成面では、3年課程養成所の定員充足率が8割を下回り、受験者数も2015年の約8万7000人から約3万2000人に減少したことを報告。「新規養成、復職支援、定着促進を3本柱として、診療報酬や補助金による処遇改善などにも取り組んでいるが、地域の養成機能を守るためにも、学校同士や大学との連携、統廃合、遠隔授業、サテライト化を組み合わせる必要がある」とした。
 また、同時双方向型に加え、授業後の質疑応答や添削指導、学生同士の意見交換の機会を確保すればオンデマンド型も実施可能となっており、令和8年度はモデル事業として六つの学校グループを採択し、遠隔授業等の効果検証と手引きの整備を進めているとした。
 臨地実習については、養成所と実習施設の連携が円滑だと回答した割合が24・3%にとどまり、移動に2時間以上または宿泊を伴う養成所も約2割あるなど、教員と学生双方の負担が課題になっていることに言及。実習記録システム等のDXを活用した遠隔での指導や、教員配置の柔軟化、定年後の教員の再雇用、共通教材の導入などについても検討し、看護職の需給、地域・領域別の偏在、勤務環境の改善を含めた養成・確保策を取りまとめていく考えを示した。

(3)鹿児島県医師会「未来の芽プラン」について

 大西浩之鹿児島県医師会副会長は、小児・周産期医療を担う医師、看護師、助産師の確保と県内定着を目的とした「未来の芽プラン」を紹介した。
 大西副会長はまず、医療資源が鹿児島市に集中し、離島を含む地域での医師や看護職の確保が課題となっていたことから、県医師会では平成22年度以降、医師不足対策基金や、その前身となる「はやぶさプラン」により臨床研修医や産婦人科専攻医、助産学生や看護学生への助成金の支給など、支援を続けてきたことを報告。その一方で、助成対象者へのアンケートでは、回答者の91%が県内で勤務するなど、県内定着に成果を上げたものの、令和7年3月に県内の看護師等学校養成所を卒業した1140名のうち、看護師資格で県内に就業したのは596名にとどまるなど、依然として人材流出が続いていたことから、「未来の芽プラン」を創設した、といった経緯を説明した。
 同プランについては、①令和7年度に寄付を募り、個人・企業・団体から49件の寄付が寄せられた②令和8、9年度の2年間、県内で研修する産婦人科・小児科専攻医1年目に学習支援金として月3万円を1年間助成する③医師会立看護師・准看護師養成学校3校に教材を寄贈、令和8年度は妊婦体験スーツを贈呈した―ことなどを報告。その上で大西副会長は、「引き続き、必要な時に小児・周産期医療を提供できる体制を守るため、医師会が地域や企業に課題を発信し、県民と共に将来の医療人材を育てる取り組みを継続していきたい」と述べた。

(4)諸問題に関する協議

 協議では、日本医師会が実施した調査を基に、江澤常任理事が、①令和8年度に学生募集を行った医師会立養成所は准看護師課程100校、看護師2年課程44校、同3年課程72校、助産師課程4校となり、定員充足率はそれぞれ48・8%、50・1%、69・7%、73%台まで低下している②運営費補助の標準単価は21都道府県で昨年度分から、18都道府県で今年度分から増額される予定である―ことを説明。
 また、遠隔授業を実施しているとの回答が5件、実施に向け協議中との回答が6件あり、小泉ひろみ秋田県医師会長からは、令和9年度から由利本荘看護学校が学生の募集を停止し、同校内に秋田県立衛生看護学院のサテライト校が設置されることも紹介された。
 参加者からは、本校とサテライト校双方への財政支援、専任教員の柔軟な配置、実習施設との連携、学生の負担に配慮したカリキュラム評価、看護職の処遇改善等を求める意見が出された他、地域に養成機能を残すための制度・財政両面の支援について意見交換が行われた。
 最後に池端幸彦副会長は、看護職の偏在、学生・教員確保などの課題に対して、できない理由ではなく、実現する方法を地域全体で考える時代に入ったと指摘。「医療を守ることは地域を守ること」として、一歩でも半歩でも前へ進めるよう、日本医師会としても全力で支援する姿勢を示した。

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