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平成28年(2016年)10月20日(木) / 日医ニュース

平成28年熊本地震のJMAT活動における課題等について協議

平成28年熊本地震のJMAT活動における課題等について協議

平成28年熊本地震のJMAT活動における課題等について協議

 平成28年度都道府県医師会JMAT担当理事連絡協議会が9月21日、日医会館小講堂で開催された。
 救急災害医療担当の石川広己常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、まず、本年4月の熊本地震でのJMAT(日医災害医療チーム)活動への協力に対して、改めて感謝の意を表するとともに、「今回の熊本地震での活動で指摘されたさまざまな課題を解決しながら、南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、次の大規模災害に備えていく必要がある」として、災害対策の重要性を改めて強調した。
 また、8月末の台風10号による被害に際しては、岩手県医師会による医療支援活動をJMATとして認めたことについても報告し、引き続き、JMAT活動への協力を求めた。

JMAT活動報告

 日医及び5都県から、JMAT活動についての報告が行われた。
 日医:石川常任理事は、今回の熊本地震での活動を中心に、これまでのJMAT活動について説明を行った。
 今後については、今回の熊本地震での活動において明らかとなった課題等を中心に、会内の「救急災害医療対策委員会」において検討を行う他、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)等との首都直下地震を想定した衛星利用実証実験防災訓練を11月16日に実施予定であることなどを報告した。
 熊本県医師会:西芳徳熊本県医師会理事は、派遣要請側の立場から、震災発生直後からの活動を詳細に報告。「被害状況に関する情報を収集できない状態で、当県だけでの対応では不可能と判断し、県外からのJMATの派遣を要請した」と振り返った。
 また、各エリアでの被災状況が多様で対応が難しかったこと、県と政令指定都市とで二重行政の壁があったことなどの問題点を指摘した。
 長崎県医師会:釣船崇仁長崎県医師会副会長は、九医連災害医療対策本部の立場から、「九州医師会連合会災害時医療救護協定」について解説した。
 本年度の幹事医師会である長崎県医師会では、対策本部を設置して対応に当たったが、①普段から担当者同士の顔の見える関係の構築と、さまざまな状況を想定した定期的な訓練②災害医療チームの派遣については、派遣される側の要請に柔軟に対応し、派遣先での不要なトラブルを極力避ける工夫③派遣先での各チームの役割分担・日程調整を行うリーダー的なコーディネーターの養成―が必要であるとした。
 東京都医師会:角田徹東京都医師会副会長は、5月1~31日に阿蘇地域を中心に行ったJMAT活動を踏まえた課題として、①JMAT派遣の契機②活動内容の認識の差③現地情報④現地医師会の認識(要望)等⑤JMAT構成メンバー⑥指揮・命令系統―の6つを挙げて説明した。
 静岡県医師会:レシャード・カレッド島田市医師会顧問は、5月2~6日に熊本県阿蘇市、大津町、西原村の避難所を中心に、健康チェック、容態の悪い患者の診療、衛生面の相談を行ったと説明。
 JMAT活動の解決すべき問題点として、①JMAT独自の調整員の教育と体制づくり②具体的な支援内容を定める③許容される投薬の範囲の確定④避難所で行う処置の指針の明確化⑤災害用処方せんの明確な基準、統一した形式、その保存先の確定⑥栄養面の管理と指導⑦介護施設や福祉施設との連携―を挙げ、「今後の災害におけるJMAT活動を充実させるためには、JMAT独自の調整機能を果たせる職員を養成し、各チームと本部との連絡が随時可能となる体制づくりが不可欠である」と述べた。
 兵庫県医師会:杉町正光兵庫県医師会理事は、JMAT兵庫について説明するとともに、熊本地震での益城町における活動について報告。今回の派遣では、医療ニーズがどんどん減っていき、十分な活動ができなかったとした上で、「日頃から地域保健担当医・学校医の視点、地域包括ケア活動の実践が必要であると感じた」と述べた。
 また、江口義光同県医師会主任からは、現地での事務(ロジスティクス)の活動は、さまざまな課題が浮上する中で、本部機能を担うための備品不足や情報共有ツールの継続的対応等が中心となったと報告した。

関係者指定発言

 関係者指定発言では、森川博司総務省消防庁救急企画室救急専門官が「救急業務」、坂上祐樹厚生労働省医政局地域医療計画課救急・周産期医療対策室長が「平成28年熊本地震への厚生労働省の対応等」、近藤久禎DMAT事務局次長が「熊本地震への対応」、曽我明裕内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(被災者行政担当)付企画官が「災害救助法との関係」について、それぞれ発言した。

協議

 協議では、各都道府県医師会から挙げられた「JMATのプロセス」「情報共有方法」「コーディネート機能」「他チーム・他組織との関係」「医薬品等携行品の費用」等に関する質問・意見に対して、石川常任理事が回答を行った。
 最後に、中川俊男副会長が、「日医にとって大変厳しい意見も頂いたが、貴重な教訓として、JMAT体制の見直しに役立てていきたい」と総括し、協議会は終了となった。
 出席者は、テレビ会議システムによる参加を含めて152名。

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