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平成31年(2019年)3月20日(水) / 日医ニュース

医師会入会の意義とメリット

勤務医のページ

少子超高齢社会と医療制度改革:医師会の役割

 わが国は世界に先駆けて誰も経験したことがない少子超高齢社会を迎えている。高齢者の増加による国民医療費の膨脹や医師の地域偏在と診療科偏在が深刻となり、地域医療構想、医師法及び医療法の改正、新専門医制度、医療事故調査制度などの医療制度改革が進められている。
 更に、「医師の働き方改革」が実行されれば、医療現場は混乱し、勤務医の業務や生活設計にも大きな影響が及ぶ可能性がある。
 どのような職業でも、そこで働く人々の思いが政策や行政に反映されなければ発展はない。個人や小さな組織からの発信はなかなか届かないし、利益誘導を目的とする組織からであれば国民の理解が得られない。
 私達医師は、崇高な職業倫理に基づいた団体である日医から総意を提言すべきだが、医師の4分の3を占める勤務医の医師会入会率は開業医に比べると、いまだに低い。日医会員の半数は勤務医であるが、更なる勤務医の参画を得る中で、開業医と勤務医がより一体となって医政に大きな影響力を持つ医師会組織になることが望まれる。

福岡県医師会勤務医部会の活動

 福岡県医師会勤務医部会は昭和54年に発足した。その前年に提出された勤務医部会設立委員会の答申書には、"勤務医の絶対数が開業医のそれを越えたにもかかわらず、医師会の組織、運営は状勢に対応しておらず、勤務医には発言の場が与えられていない。勤務医の声を聞き、医師会活動の中に取り入れることが必要であり、勤務医部会を設立して会員の声を吸い上げる窓口とする。"と記載されている。
 現在の勤務医部会委員会は県内の4ブロックから各2名、四つの大学から各1名、会長指名2名、県医師会理事6名、計20名の委員で構成されている。会長諮問を受け、2年間の協議を経て答申を建議することが使命である。
 前期の諮問『新しい医療事故調査制度と勤務医支援体制の熟成』に対しては、研修会の開催と、病院管理者と勤務医に対して行ったアンケート調査結果を踏まえて、制度の周知と普及対策や勤務医支援体制整備を求める答申を取りまとめた。
 今期の諮問事項『医師の地域偏在と診療科偏在を考える』に対しては、本年2月に男女共同参画部会委員会との共催で研修会を開催した。大学、行政、日医、県医師会から講師を招聘(しょうへい)し、"偏在"についてそれぞれの視点での講演を頂いた。
 研修会に先立ち、今回初めての試みとして、医学生、初期研修医、指導医、ファシリテーターに参加頂きワークショップ形式での交流会も開催した。
 昨年9月には、郡市医師会に対して研修医の会費免除と若手医師の会費減額の実態調査を行い、組織強化に向けた取り組みを促したところである。
 全国には、いまだ勤務医部会や勤務医委員会が存在しない県医師会があるが、経験論的には、医師会活動に取り掛かりやすい勤務医部会が県あるいは郡市医師会にも必要である。

勤務医にとっての医師会活動

 平成30年12月末時点の福岡県医師会会員は8905名で、勤務医会員は4982名(56%)に増加したが、被雇用者である勤務医は、病院での業務に追われて医師会活動に充てる時間が少ない。診療業務を縮小できるごく一部の役職者がようやく活動に参画できるのが現状で、県医師会役員27名のうち勤務医は4分の1の7名に過ぎない。
 これをもって、いまだに医師会は開業医組織と感じて入会しない理由に挙げる勤務医もいるが、開業医役員の多くが自院と自己を犠牲にして勤務医に関する業務までカバーしている。開業医役員の誰もが勤務医を経験しており、医療の現状と将来に向けての課題については勤務医とは比較にならないほど精通している。
 少子超高齢社会では公も民も、開業医も勤務医も、分け隔てなく協働しなければ地域医療を維持できないことを認識し、真摯(しんし)に医療の質の向上、地域医療の充実、将来に向けた医療提供体制の整備、そしてそこで働く医療従事者の豊かな生活のために活動されている。
 勤務医が入会しない理由として、「メリットがない」「入会しなくても困らない」「会費が高い」「医師会活動が分からない」「関心がない」などの意見がある。
 医師会には勤務医にとっても多くのメリットがあるが、あまり周知されていない。日医医師賠償責任保険は煩雑な手続きや患者対応に弁護士の支援が受けられる。
 医師国保は常勤医ではない場合には一般の国保よりも低額で利用できるし、日医年金は優良年金制度で堅実である。
 生涯教育やキャリア形成支援に向けた各種講演会が開催され、専門医制度の"共通講習"に該当するものもある。研修会や講演会の際には、女性医師に対するキャリア支援事業として保育施設が併設される。
 個人的には、医師資格証が学会や専門医機構との連携により専門医申請や更新手続きが簡略化できればありがたいし、専門医制度の導入を機に、学会の年会費や参加費等が必要経費として認められれば更に嬉(うれ)しい。
 医療の大きな変革期だからこそ、医師会は組織強化を図って、より強く医政を動かすべきで、そのためには、より多くの勤務医が医師会に入会し、開業医と一体になって医師会活動を担う必要がある。
 行政や他人任せではなく、医師会主体となって地域医療の継続とそこで働く医師の働きがいを担保することが望まれる。

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