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令和8年(2026年)4月20日(月) / 日医ニュース

勤務医にとっての「新たな地域医療構想」~病床数等の議論から地域の医療提供体制全体の課題解決の議論へ~

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勤務医にとっての「新たな地域医療構想」~病床数等の議論から地域の医療提供体制全体の課題解決の議論へ~

勤務医にとっての「新たな地域医療構想」~病床数等の議論から地域の医療提供体制全体の課題解決の議論へ~

 筆者は、県の保健所に勤務する公衆衛生医師である。本稿では、今後の地域での医療提供体制が検討されている「新たな地域医療構想」について、勤務医の働き方に関係する事項を中心に述べる。
 なお、以下は医師会員としての筆者の私見である。

地域医療構想について

 国は2014年に「地域医療構想」を制度化し、2025年の医療需要の予想等を踏まえ医療機関の機能分化・連携を深め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とし、都道府県等が「地域医療構想」を定め、「地域医療構想調整会議」において協議を行うこととした。

新たな地域医療構想について

 国は2025年に医療法を改正し、医療・介護の複合ニーズ等を抱える85歳以上の増加と人口減少が見込まれる2040年頃を見据え「新たな地域医療構想」を推進することとした。
 「新たな地域医療構想」は、入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携等を含むさまざまな課題解決を図るもので、病床の機能分化・連携に加え、地域の実情に応じた各医療機関の役割分担を明確化し、医療機関の連携・再編・集約化を図るものとされている(図)

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勤務医にとって「新たな地域医療構想」のもつ意味とは

 現在多くの医療機関が赤字経営となっており、その要因に人件費、医療材料費等の上昇が指摘されている。
 また、構造的な課題としては、高齢化と疾病構造の変化等を背景とした病床利用率の低下傾向やコロナ後における受療行動の変化等が指摘されている。
 令和8年度診療報酬改定もあり、地域によっては、大規模急性期病院が高度専門医療に特化し、地域の病院が高齢者救急等を担うことが検討されていると聞いている。
 これらのことは、高度専門医療機能の集約化と、それに対する地域の病院の医療機能の変化を生じさせ、その変化は、そこで働く医療従事者の専門性の変化にもつながるため、勤務医にとって影響が大きいと言える。

それぞれの医療機関内での議論が望ましい

 各地域での人口構成や医療機関の配置、機能分担の状況等は異なる。
 また、地域によって、開業医の減少や高齢化、診療機能の変化、高齢者救急における医療と介護の連携状況等に違いがあることにより、地域に密着した中小病院の果たす役割の重要性が増しているとの指摘もある。
 医療は多くの専門スタッフで構成される人材集約型の事業である。各医療機関が「新たな地域医療構想」への対応を検討する際には、既述の事項を踏まえ、地域に必要な(つまり地域が求める)医療機能と、医療従事者の専門性のバランスをとって方針を決定することが望ましい。その際には、そこで働く医療従事者による議論が重要になると考える。
 また、そうした議論を行うためには、国や都道府県の示した方針や、後述する地域医療構想に関する協議体(地域医療構想調整会議)での協議の動向を把握することが重要であり、議論の際に中心となるのは、その専門性からいっても勤務医であろう。

地域医療構想調整会議について

 地域医療構想に関する協議体として、ほぼ全国の2次医療圏ごとに「地域医療構想調整会議」が開催され、地域の状況に応じた議論がなされている。以下に筆者の所属する会議の状況を述べる。
 委員構成は、医師会、薬剤師会、歯科医師会、看護協会、病院協会、私設病院協会、精神科病院協会、有床診療所協議会、医療法人協会、管内市町(地域包括支援センター含む)等である。筆者の地域は、県内唯一の医師少数区域であり、これに対し令和7年度に「区域対応方針」を作成し、さまざまな課題を協議している。
 筆者の感じた協議の特徴は、(1)県医師会、産業医科大学と県が協力し、人口や疾病動向の将来推計等を「地区診断」として取りまとめて使用している、(2)県医師会の「地域医療構想アドバイザー」から積極的にコメントを受け進めている、(3)医療関係者に加え、市町(及び地域包括支援センター)からも活発に発言がある―ことである。
 基礎自治体である市町村にとって、地域医療は重要なテーマで、例えば、ある市からは「高齢者福祉施設における救急対応の課題と改善要望」について消防署と連携した事例の報告などがなされた。医療の課題に対して、医療の受け手である住民への周知、相談対応、介護との連携等で市町村の果たす役割は今後も重要と考える。

今後の予定について

 国によると、2026年から2027年度上半期をめどに、地域(地域医療構想では「構想区域」と呼ぶ)ごとに、現状の把握等や課題の設定を行い、2028年度中までに取り組みの方向性を決定し、2035年度をめどに一定の成果を確保することとなっている。
 本稿が、勤務医の先生方が地域医療構想に関心をもち、医療機関内での議論が行われることを通じて、2040年に向けた地域の医療体制の整備が進む一助になれば幸いである。

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