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令和8年(2026年)5月20日(水) / 日医ニュース

医療問題の解決には日本医師会を通じた情報発信が最も効果的

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医療問題の解決には日本医師会を通じた情報発信が最も効果的

医療問題の解決には日本医師会を通じた情報発信が最も効果的

自己紹介

 1982年に山口大学医学部を卒業し、同第一外科に入局。心臓外科を選択し、大学病院を中心に診療と研究に従事した。胸部外科認定医を早く取得したかったので1987~89年まで八戸市立市民病院心臓外科に勤務。高リスク手術をし続けるために必要と考え、1990年に日本医師会(日医)医師賠償責任保険に加入した。
 学位取得後、心臓移植等を経験するため、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン心臓病センター(1992~93年)に臨床留学した。その後、1999年末まで山口大学医学部附属病院に勤務。2000年から山口労災病院勤務となり、2016年から副院長、2020年から特別顧問、2023年から院長を務めた。
 医師会との関わりは2004~07年まで小野田医師会理事、2009~12年まで山口県医師会(県医)広報委員、2010~12年まで日医代議員、2012年から県医理事、常任理事、専務理事、副会長を経て2022年から会長を務めている。

医師会と深く関わるきっかけ

 2000年前後から医療訴訟が増え、小泉政権時に医療費抑制政策が採られたことで、医療崩壊の声があちこちから上がった。病院勤務医は一生懸命に働いていても報われず、職場から次々と立ち去っていく状況に問題意識を持つようになり、「早く誰か状況を変えて」と思っていた。現状に不満ではあったが、しばらくは外科医としての技量を上げ、良い結果を残すことに専念した(早期下部直腸癌に対する経肛門的内視鏡手術の工夫:手術60巻、1629-33、2006、The use of the continuous suture technique in dunking pancreatojejunostomy without stenting. Surg Today, 43:1008-12, 2013)。
 しかし、本来は誇れる職業である医師への不理解が強まっていると感じ、情報発信することにした。その当時も急性期病院の勤務環境は過酷で赤字傾向であり、「海外と比べ異常に高い医療材料費を下げ、得られた財源を崩壊の危機にある急性期医療に回せ」と主張(読売新聞:論点2007年1月25日)。また、「リーマンショックで経済がガタガタになった時、医療に財政支援することにより雇用を創出し、景気浮揚につなげるべき」だと主張した(読売新聞:論点2009年2月19日)。
 2009年に県医から広報委員への依頼があり就任。広報委員を1年務めていると、日医の代議員になって勤務医の立場から日医で発言してほしいと当時の木下敬介県医会長から依頼があり、お引き受けした。

日医代議員会での質問

 2010年4月の代議員会で、医療が健全に発展するための財源として「医療戻し税」の導入を主張。10月、医師会を強くする提言として、勤務医の参加促進と医師を守る組織の明確化を主張し、異動手続きの簡素化も求めた。
 2011年4月には、医師の善意がこれ以上廃れないように、中小病院の救急医療への参加ルールづくり、救急車の有料化、理不尽な裁判への対策について質問。同10月には、医師会が医師を守る組織であることを明確にし、控除対象外消費税対策、医療事故調査制度の早期実現を訴えた。
 2016年3月、「医療における消費税問題解決に向けた質問と国への働きかけ」という題で質問。
 2017年6月、日本の医療が健全に発展するための提言として、「医薬品や医療機器の国内外格差の解消」「院内・院外薬局の価格差解消」「オーソライズドジェネリック医薬品の活用」「AMEDの予算増額、国民の治験参加促進」「開発リスクの国の分担制度創出」を訴えた。
 2019年6月、医師の働き方改革推進と偏在問題解決に向けた提言として、地方で働く医師や、産婦人科や救急、外科などの時間外労働が多い科の医師個人にインセンティブを付けること、救急車の適正利用と働き方改革を推進する財源として再び救急車の有料化を訴えた。

県医師会長になって行った主なこと

 山口県でも喫緊の課題は若手医師不足である。2022年に県医会長になって、どうしてもつくりたかったのは、時間外救急に携わる医師にインセンティブを付ける制度であった。「時間外救急をきちんと診る医師と、断る医師が同じ評価ではいけない。きちんと診る医師を増やし、救急のレベルを上げることは県民のためになる。時間外救急は主に若手医師が担っているので、きちんと評価されればやりがいも出て、若手医師の増加にもつながる」と知事や県議会議長を説得し、県行政と協議を重ねた。その結果、2024年に救急勤務医支援事業ができた。
 また、2023年、山口大学医学部附属病院長と相談して、若手医師の研究支援制度を創出し、県医学会総会と医学会誌への報告を義務付けた。
 本年2月には、県内医師定着に最も効果があると考えられる専攻医歓迎会を開催した。
 医療機関の収入のほとんどは診療報酬であり、診療報酬を上げるためには理論と数の力が民主主義では必要であると考え、診療報酬改定前には決起集会を開催している。

医師会員になることのメリットなど

 医学生への講義や初期臨床研修医歓迎会・交流会や県内の病院勤務医との懇談会などでは、八つのメリット〔(1)医療に関して理不尽だと思うことを効果的に解決できる組織は医師会である、(2)財務省などが医療費抑制を主張するが、組織がなければ医療を守れない、(3)医学部卒業後5年間は医師会費を免除している、(4)医師賠償責任保険は30歳以下では1万5000円で加入でき、最も対応がいい、(5)大学院生は市町村国保よりも安い医師国保組合に入会できる、(6)産業医資格を取得でき、専門医共通講習などの生涯研修セミナーに参加できる、(7)研究助成を受ける資格が付与される、(8)山銀ゴールドカードの年会費が無料〕を提示している。初期研修医の7割は日医会員になっており、会員数は微増である。
 現在の医療事故調査制度が成立したのは2014年であるが、いきなり司法が関与する制度でなく、まずは院内事故調査を優先させる制度になったのは日医の力があったからである。
 一時しのぎのメリットや経済優先になりがちな力に対抗するためには、理論と政治力が必要であり、シンクタンクである日医総研の理論に支えられた日医の政治力が医療環境の改善に必要である。

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