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令和3年(2021年)6月20日(日) / 日医ニュース

「医師の働き方改革」「新型コロナウイルス禍における勤務医の勤務環境の問題点」をテーマに活発に討議

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「医師の働き方改革」「新型コロナウイルス禍における勤務医の勤務環境の問題点」をテーマに活発に討議

「医師の働き方改革」「新型コロナウイルス禍における勤務医の勤務環境の問題点」をテーマに活発に討議

 令和3年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会が5月21日、日本医師会館で開催された。新型コロナウイルス感染症が流行状況にあることを鑑み、協議会の模様は、WEB会議システムを通じて各都道府県医師会に配信された。
 協議会は、勤務医担当の橋本省常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った中川俊男会長は、「各地域において、コロナ対策に多大なるご尽力を頂いている先生方に御礼申し上げる」と感謝の意を表明した。
 その上で、感染力が強い変異株の蔓延(まんえん)等により、新規感染者数が増加傾向にあり、勤務医に掛かる負担も大きくなっていることを危惧。「この協議会が、コロナ禍における勤務医の勤務環境の問題点について、各医師会において共有される場となることを願う」と述べた。
 また、もう一つの議題である「医師の働き方改革」については、日本医師会として、「医師の健康」と「地域医療」が両立する制度の実現を目指し、国に対して強く働き掛けていくとした。
 次に、令和3年度の全国医師会勤務医部会連絡協議会の開催担当である上田朋宏京都府医師会理事より、同協議会の概要について説明が行われた。
 続いて、城守国斗常任理事から、2018年6月に「働き方改革関連法」が成立したことに伴い、医師の働き方改革に向けて、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」で作成されたフレームワークを基に、同検討会の後を受けて発足した「医師の働き方改革の推進に関する検討会」において協議された内容について改めて説明。
 病院常勤勤務医の週労働時間の区分別割合を見ると、平成28年と令和元年の調査では共に、4割弱の勤務医が年間960時間超の時間外労働を行うだけでなく、1割弱の勤務医が、1920時間超の時間外労働に従事していることが明らかになったとするとともに、「勤務医の過重労働により地域医療が支えられている実態を踏まえ、医師の時間外労働規制については、以下のような特例が設けられることになった」と述べた。
 (1)A水準:年間の時間外・休日労働時間が960時間以内に収まる医師を雇用する医療機関へ適用される。
 (2)連携B水準:本来の勤務先での診療に加え、大学病院・地域医療支援病院等で、地域医療提供体制確保のために副業・兼業を行う医師を雇用する医療機関を想定。
 (3)B水準:「三次救急医療機関」「二次救急医療機関かつ年間の救急車受入台数1000台以上」等、さまざまな要件を満たす医療機関に勤務する医師を雇用する医療機関を想定。
 (4)C―1水準:臨床研修医・専攻医を受け入れる医療機関を想定。
 (5)C―2水準:特定の高度な技能の修得のため、集中的に長時間修練する必要のある医師を雇用する医療機関を想定。「高度な技能」の内容は、「審査組織」により具体案が作成される見込み。
 その上で、B・C水準に該当する医師を雇用する医療機関に関しては、「『評価機能(仮称)』に水準認定申請を行う。評価機能は申請内容を基に評価を行い、その結果を都道府県に提出し、それをもって、都道府県は当該医療機関の指定について判定を行うことになる」とした。
 また、「追加的健康確保措置」に関しては、①連続勤務可能時間は28時間まで②C―1水準の臨床研修医は15時間まで③勤務間インターバルは原則9時間④勤務間インターバルを実施できなかった場合は「代償休息」を付与する⑤当月の時間外・休日労働が100時間に到達する見込みが高い場合は、産業医または講習を受けた医師が面接指導を実施する⑥時間外・休日労働が月155時間超となった場合は、労働時間短縮のための就業上の具体的な措置を取る―とされていることを紹介した。
 続いて、二つの講演が行われた。
 木村百合香東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長は、自身がコロナ「重点医療機関」に勤務している立場から、新型コロナウイルス感染症診療に当たる勤務医の診療面でのさまざまなジレンマを紹介した他、東京都のコロナ「重点医療機関」を対象に行った調査結果として、同医療機関においてはバーンアウト尺度の上昇が顕著であることや、個人的達成感と勤務時間とは負の相関を示したことなどを報告した。
 宮田剛岩手県医師会常任理事/岩手県立中央病院長は、「コロナ禍での勤務医の勤務環境」というテーマで、乏しい医療資源を有効活用するための集約化、専門部隊による入院と搬送の調整、コロナ治療従事者の孤立や不公平感を解消するための定期的カンファレンス実施等の情報共有の必要性・有効性等について解説。その後の協議では、活発な質疑応答が行われた。
 最後に、総括を行った今村聡副会長は、医師の働き方関連法案が参議院で可決・成立する見込みであることに触れた上で、「日本医師会は、コロナ禍にあって、勤務先医療機関の形態や機能、規模の大小にかかわらず、今回の制度改正が現場で働く医師の苦労に報い、支えとなるものでなければならないと考えている。引き続き、必要な財政的支援が医療全体に行きわたるよう、国に対し全面的な支援を要望していく」と強調。
 加えて、今後も勤務医の声に耳を傾けながらさまざまな問題に取り組むとするとともに、新型コロナウイルスワクチンの接種推進に全力を傾けていくとの決意を表明し、協議会は終了となった。

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