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令和7年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会が5月23日、日本医師会館小講堂でテレビ会議システムを併用して開催された。
協議会は今村英仁常任理事の司会で開会。
まず、令和6年度全国医師会勤務医部会連絡協議会について、戸次鎮史福岡県医師会常任理事が、令和6年10月26日に福岡市内で「勤務医の声を医師会へ、そして国へ~医師会の組織力が医療を守る~」をテーマに開催し、その成果を「ふくおか宣言」として取りまとめたことなどを報告した。
また、令和7年度の同協議会については、宮田剛岩手県医師会常任理事が、「勤務医が生き生きと活躍できる場を作る~混沌を成長の機会に~」をテーマに、11月8日に盛岡市内で開催予定であることを説明。高齢化の先進国である日本、その中でも高齢化と人口減少が先行する東北において勤務医のあり方を考えるべく、講演並びにシンポジウムを実施すること等を紹介した。
協議では、今村常任理事が「医師偏在対策」について講演。昨年末、政府が示した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」について、一つの取り組みで是正できるものではないとの日本医師会の主張が反映され、複合的な対策とされたことを評価した上で、目新しいものとして、「重点医師偏在対策支援区域」を設け、優先的・重点的に対策を進めることが打ち出されている点を挙げた。
議論となった医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件に関しては、「当初は診療所の管理者にまで拡大する動きもあったが、最終的に公的医療機関及び国立病院機構・地域医療機能推進機構・労働者健康安全機構が開設する病院までに限らせて頂いた」と強調。
外来医師多数区域における新規開業に関しては、「開業の規制につながるような条項が入る可能性があったが、自由開業を堅持する方向で押し戻した」とした。
全国的なマッチング機能の支援に関しては、日本医師会が受託しているとし、「各都道府県医師会と密にコミュニケーションを取った上で機能の充実を図っていく」と述べ、協力を求めた。
更に、「治す医療」から「治し支える医療」へ変わりつつある中で、医療機関の機能分化と収斂(しゅうれん)、地域連携が必要になるとし、かかりつけ医機能報告制度への勤務医の協力にも期待を寄せた。
続いて、猪股雅史大分大学医学部医師会長が「医師会と大学との協働について」と題して講演。医師の偏在や医師不足、診療科の偏在、医師の高齢化などが課題である同県では、地域枠を導入して、2010年に大分大学医学部と大分県による「地域医療学センター」を設立し、2018年には大分大学医学部と大分県医師会による「大分大学医学部医師会」を設けるなど、大学・自治体・医師会の三位一体で地域医療の課題解決に当たってきたことを概説した。
同大に在籍する学生1118名と教職員等1927名(うち臨床医は約600名)が医師会活動に加わることで、地域医療の推進につながっていくとの方針の下、医局単位でまとめて入会の手続きをしてもらっていることを説明。現在では、医学部医師会員は353名で、その約3分の1が日本医師会員であるとし、更なる入会促進を図っていくとした。
地域医療学センターについては、地域枠学生への教育・指導・メンターなどを行う県の委託事業であり、(1)県下約60のクリニック等でのシャドウイング実習、(2)医師会病院を始めとする県内の16施設での滞在型地域医療実習、(3)自治医科大学生との地域医療研修―などを実施している他、高校生を対象にしたセミナーも開催し、地域医療への興味を促していることを紹介。
猪股医学部医師会長は、「地域枠卒業医師はこの10年間で確実に増え、それに伴い地域医療への若手医師の参画も増えている。大分県は全国ワースト5位だったが、この20年の間に医師多数県に近い状態となった」と述べた。
次のステップとして、若手医師が派遣先でも専門医を取得できる体制整備を行うべく、「大分大学内科医療人材育成事業」を展開したことを説明。医師会病院を始めとするへき地医療拠点病院が大学に助教人件費(寄附講座)を納め、医局が各病院へ助教1名を配置して専攻医を1名以上派遣するというモデルをつくったことで、7年間で41名の専攻医の派遣が実現したことを報告した。
その後に行われた質疑では、寄附講座のあり方などについて質問が相次ぎ、猪股医学部医師会長が回答。「地域の医師会や病院が出資する寄附講座のお陰で、地域の医療機関で人材育成をすることが可能になったが、派遣されることで専門医を取得するための症例数が不足しないよう、3年間の中でプログラム責任者が個別に配慮している」とした。
総理官邸での陳情のため遅参した松本吉郎会長は、石破茂内閣総理大臣に医療の危機的な窮状を直接、訴えてきたことを報告。
特に、病院の厳しい経営状況や、勤務医・大学教員の給与の低さを説明して医療に関する財源確保を要望したとし、「消費税を8%から10%へ増税した際の1%は2・7兆円だったが、増収で現在は3・3兆円に上振れしている。1%分は社会保障に充てることになっているので、その6000億円の差額分をしっかり社会保障に回すよう求めてきた」と強調した。
医療制度の持続のために尽力―釜萢副会長
最後に閉会のあいさつを述べた釜萢敏副会長は、「平成16年に医局への反発を背景として医師臨床研修の仕組みが大きく変わったが、その後の経過を見ると、必要なところに医師を派遣する医局の機能は大事であったことが改めて認識されている」と述べ、定年退職した医師の活用や、医師の偏在対策などに早急に取り組み、医療制度を持続させるために尽力していく姿勢を示した。