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令和4年(2022年)12月20日(火) / 日医ニュース

令和4年度 全国医師会勤務医部会連絡協議会「医療新時代を切り開く勤務医の矜持~コロナを克(こ)えて~」をメインテーマに開催

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令和4年度 全国医師会勤務医部会連絡協議会「医療新時代を切り開く勤務医の矜持~コロナを克(こ)えて~」をメインテーマに開催

令和4年度 全国医師会勤務医部会連絡協議会「医療新時代を切り開く勤務医の矜持~コロナを克(こ)えて~」をメインテーマに開催

 令和4年度(第42回)全国医師会勤務医部会連絡協議会(日本医師会主催、愛知県医師会担当)が10月15日に、「医療新時代を切り開く勤務医の矜持~コロナを克(こ)えて~」をメインテーマとし、名古屋市内で3年ぶりの現地参集開催で行われ、全国から196名が参加した。
 冒頭のあいさつでは松本吉郎会長が、医師会の会務運営において、(1)地域から中央へ、(2)国民の信頼を得られる医師会へ、(3)医師の期待に応える医師会へ、(4)一致団結する強い医師会へ―を柱に掲げており、特に医師会の組織強化は喫緊の課題であるとした他、柵木充明愛知県医師会長は、「勤務医との一層の協働が必要である」と述べた。
 その後は、コロナ禍により新たな局面を迎えた地域医療構想・働き方改革・医師確保対策を軸にした二つのシンポジウムでの議論を通じて、医療新時代に向けた「愛知宣言」が取りまとめられた。

特別講演Ⅰ「医師会の組織強化に向けて」

 松本会長は、日本医師会が医療界を代表する国のカウンターパートとしての役割を担っているのは、全ての医師を代表する組織として対外的にも認識されているからであると強調。日本医師会がプレゼンスと発言力を高め、国民の健康と生命を守り、医師の医療活動を支えるという医師会の役割を果たしていくためには、組織強化が不可欠であり、その推進に当たり、「令和5年度より実施する医学部卒後5年目までの会費減免期間延長は、全ての医師会が取り組んで頂きたい」として、協力を求めた。

特別講演Ⅱ「社会の共有財として『知のコモンズ』をめざす東海国立大学機構の挑戦~総合知の活用による人類社会の課題解決への取り組み~」

 松尾清一東海国立大学機構長は、「日本は過去30年間での未来への投資不足から国際的プレゼンスが急落しているばかりでなく、少子超高齢化と人口減少という問題も抱えており、コロナ禍で学んだように多領域の叡智(えいち)結集によって未来医療を共創する必要がある」と述べた。

特別講演Ⅲ「2040年の医療介護」

 香取照幸上智大学教授/未来研究所臥龍代表理事は、「コロナ禍で、国民皆保険を支えるわが国独特の医療システムの構造問題が露呈した」とし、その解決のためには、「医療提供体制の構造改革」「病院の機能分化と連携」「選択と集中」「地域完結型医療への転換」が急務となっていると指摘した。

シンポジウムⅠ「医療新時代の病院機能分化と連携推進~アフターコロナのあるべき姿を問う~」

 長谷川好規国立病院機構名古屋医療センター院長は、コロナ禍で露呈した病院の感染対策構造、病床と医療者の確保、病原体遺伝子検査体制の問題点を指摘し、医療システム刷新の重要性を述べた。
 松浦昭雄一宮市立市民病院長は、医師会・病院・保健所間で情報共有システムを構築するとともに、医師会長・病院長による訪問活動を行うことにより、第6波襲来前に各医療機関の役割分担ができたことを報告し、自治体の枠を超えた連携の必要性を述べた。
 度会正人JA愛知厚生連安城更生病院長は、地域医療連携推進ネットワーク設立による情報共有と連携強化の段階から、機能分化に踏み込む必要性を強調した。
 太田圭洋名古屋記念財団理事長は、医療提供体制改革や行政権限の強化が急速に進められることに危機感を示すとともに、病棟ではなく、病院機能分化の議論が必要であるとした。
 伊藤伸一愛知県病院団体協議会長は、県内五病院団体が結束した協議会と構想区域別自主的協議体の設立の経緯や、コロナ病床確保促進のための病院間情報共有システムFRESH―AICHIを紹介。「本県で地区医師会との連携の下に、あいち五病協が一定の機能を果たしたように、各県でも各自主的協議体が機能分化と連携推進の調整機能を担っていくべき」と主張した。

シンポジウムⅡ「医師の働き方改革~光と陰~」

 成瀬友彦春日井市民病院長は、働き方改革に向けた積極的な取り組みを紹介した上で、医療の質が低下する懸念を示し、医療の質の担保が求められるとした。
 河野弘日本海員掖済会名古屋掖済会病院長は、コロナ医療も含めて、全ての患者を断らず受け入れる救命救急センター機能の継続のために重要な特定診療科の現状について、負担軽減のために求められる医師の増員が困難な状態にあることを報告した。
 細井延行名古屋鉄道健康保険組合名鉄病院顧問は、時間外労働が960時間を超える医師の超過時間を同院の医業収入に当てはめて試算すると、年間約2億1000万円減収となるとの結果を報告。医師業務削減・宿日直許可の検討を進めつつも、経営上の要となる特定診療科には慎重な対応も求められると指摘した。
 湯澤由紀夫藤田医科大学長は、労働時間縮減による地域医療崩壊や研究力低下の回避には制度設計、人的財政的支援、国民の理解が必要であるとするとともに、「医師のプロフェッショナリズムの徹底教育があってこその働き方改革である」と強調した。
 春原晶代聖霊会聖霊病院長は、愛知県医師会男女共同参画委員会が行った「働き方改革が地域医療に及ぼす影響に関するアンケート調査」の結果を基に、200床以上の病院の半数以上が、医師の増員なしには2024年以降の救急体制を維持することはできない実態があることを報告し、病院間連携と役割分担、地域住民への周知の必要性を訴えた。

愛知宣言採択

 小出詠子愛知県医師会理事/勤務医部会副部長が「愛知宣言」(下掲)を提案し、満場一致で採択され、協議会は閉会となった。

愛知宣言
 少子超高齢化時代の日本における2040年の医療提供体制を展望して、地域医療構想実現に向けたさらなる取組み、医師・医療従事者の働き方改革、実効性のある医師偏在対策が「三位一体」として推進されている。一方、新型コロナウイルス感染症は、我が国の医療提供体制の潜在的課題を露呈させた。医師の時間外労働上限規制における適用開始が2024年に迫っているなか、医療関係者はそれぞれの存続をかけて、これら解答困難な命題に対峙している。国民の膨大な医療ニーズが長時間労働を厭(いと)わない医師・医療従事者の自己犠牲によって支えられている実態が正しく理解され、「医療者の健康への配慮」と「地域医療の継続性」との両立が図られることが極めて重要である。医療を取り巻く環境が急速に困難なものに変化しつつある現在、勤務医は積極的に発信して日本の医療の望ましい変革を牽引してゆくべきである。
次の通り宣言する。
一、地域における医療関係者の自主的協議の取り組みを、連携推進と機能分化のために組織化し、地域の医療を守る基盤として進化発展させる。
一、医師の働き方改革は、持続可能で質の高い医療提供体制の構築と両立させながら進める。
一、勤務医は医療現場の声に裏打ちされた説得力のある議論展開を主導してゆく。
令和4年10月15日
全国医師会勤務医部会連絡協議会 愛知

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