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令和5年(2023年)3月20日(月) / 日医ニュース

病院統合を控えて

勤務医のひろば

病院統合を控えて

病院統合を控えて

 私は北海道の南空知医療圏という地域の中核病院に勤務している。南空知医療圏とは、札幌市から約40キロメートル離れた、岩見沢市を中心とした4市5町からなる医療圏である。神奈川県とほぼ同じ広さに約15万人が暮らしている、ご多分に漏れない人口減少・高齢化地域である。
 中心都市である岩見沢市内には、市立総合病院と労災病院という二つの中核病院があるのだが、2019年に厚生労働省が掲げた公立・公的病院の再編・統合の検討を受け、2020年に全国で選定された12の再編重点支援区域の一つとなった。2021年7月に両病院の統合の合意がなされ、2027年春に新病院として開院予定となった。
 「人口変動で地域の医療需要が減っていく中、一地方都市に二つも同じような機能を持った病院(しかも赤字)は、補助金を出すから整理してはどうか」というわけである。言われてみればごもっともで、ありがたい話であるが、事はそう簡単ではなく、問題が山積みである。
 当初は、市と労災病院本部の間で対等統合の合意だったが、実情は市が老朽化した現病院の新築に当たり、労災病院を閉院させ、労災病院職員のうち、希望者は全員受け入れるという流れである。
 市立病院の職員は何も変わらないが、労災病院職員は就職はできるものの、職務や資格、待遇などが維持される確約はない。
 医師に関しても、両院で重なる診療科では、両院の医師が「仲良く一緒にやりましょう」とはならず、引き上げや退職が生じると思われる。
 岩見沢市は、東京オリ・パラ、コロナ禍、ウクライナ問題などで資材、人件費の高騰が直撃し、市の財政圧迫の懸念におののいている。まだ青写真の段階だが、既に開院予定が1年延長され、どうなることか。
 なかなか遭遇する機会がない病院統合を、その渦中から見守っていきたいと思っている。

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