令和7年度都道府県医師会広報担当理事連絡協議会が4月17日、日本医師会館小講堂とWEB会議のハイブリッド形式で開催された。
連絡協議会は黒瀬巌常任理事の司会で開会。
冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、日本医師会として組織強化を最重要課題として掲げている中、その実現及び国民の理解の下に日本医師会の政策を実現していくためにも、広報活動が極めて重要であることを強調。時代の変化とともに広報の手段も変わりつつある中、日本医師会でもSNSを使った広報に取り組んでおり、日本医師会公式YouTubeチャンネルの登録者数が1万2000名を、日本医師会LINE公式アカウントの友だち登録者数も4万名を超えたことを説明し、その効果が見え始めているとした。
引き続き、黒瀬常任理事が日本医師会の広報活動と今後の方向性について報告。主に令和6年度に実施した広報活動を紹介するとともに、近日中に実施予定の事業として、待合室で利用可能なゲームの提供や日医君3Dアバターを使用したショート動画を作成するための準備を進めていることを明らかとした。
次にLINEの運用状況について、昨年からコンサルティング会社の協力の下、その見直しを図ってきたことを紹介。友だち登録数やメッセージの開封率などにおいて、目に見える形で成果が上がっているとした。
YouTubeチャンネルの運用状況については、掲載コンテンツの種類や運営上のポイントを示した上で、特に診療報酬等に関する動画に関しては、「国民向けに伝えたい内容と会員向けの内容は、きちんと分けて伝えていかないと誤解を招く」と述べ、発信の仕方を検討していく考えを示した。
また、主要なSNSの特徴等を解説し、対象者によって媒体を使い分けていく必要性を強調した他、正確な報道をしてもらうためには記者と顔の見える関係を構築する努力が必要だとした。
以前から構想している広報サポーターシステムの構築については、その第一歩として、都道府県医師会広報担当理事向けメーリングリストとLINEグループの運用を開始したことを紹介し、今後活用を進めていく予定であるとした。
その他、黒瀬常任理事は日本医師会で行っているさまざまな事業に対する協力を呼び掛けた上で、「広報活動に『魔法の杖』はないため、一つ一つの企画を丁寧に的確に行っていきたい」と述べ、引き続き国民の理解を得ることと、会員への情報発信を両立させながら広報を行っていく意向を示した。
阪本栄日本医師会広報委員会委員長/大阪府医師会副会長は、本連絡協議会に先立ち実施した「SNSの活用に関するアンケート」(本年3月14日から31日に、都道府県医師会広報担当理事向けのメーリングリストを用いて実施したもの)の結果概要を報告。
結果の中では、(1)「現時点でSNSを広報活動に活用している」とした割合は半数以下の4割で、媒体はLINEやYouTubeが多く、「情報伝達の速さ」「再生件数などによって、ニーズが把握できる」といった点にメリットを感じている一方、コンテンツの作成やユーザーの獲得の点で苦労している、(2)「今後SNSの活用を検討している」と回答した医師会では、費用負担や発信する情報の内容について不安を感じている―こと等が明らかになったとした。
その上で、阪本広報委員長は、「SNSを活用している医師会ではメリットを感じつつもさまざまな不安を抱えながら運用を行っている」と指摘。更に、必要性を感じながらも相談先やモデルケースの乏しさから活用をためらっている医師会も多いとして、好事例の横展開や相談先の提示が必要とした。
二つの医師会から取り組み報告
次に、都道府県医師会のSNSを活用した取り組みとして、京都府医師会と沖縄県医師会から発表が行われた。
田村耕一日本医師会広報委員/京都府医師会理事は、研修医・若手医師とのつながりの場である「KMA.com」について紹介。
京都府医師会は、若手医師ワーキンググループや「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」など、若手医師に医師会に興味を持ってもらうためのさまざまな施策を行っているとした一方で、「入会率が上がらない」「入会しても研修修了後、府外への転出時に入会が途切れる」という課題があったことから、医師会と研修医・若手医師との「つながり」を重視し、医師会をより身近に感じてもらうためのツールとして、2023年4月から「KMA.com」を立ち上げたとした。
更に、これまでの総登録者数は613名であることや、LINE等を利用して情報発信していること等を説明した上で、「最終的なゴールは組織力強化である」と述べ、「KMA.com」から医師会入会につなげるための取り組みも含め、注力していく姿勢を示した。
當間隆也沖縄県医師会理事は、県と共に小児救急適正受診の一助として行っているLINE×AIチャットボットを活用した#8000LINEアカウントについて紹介。
沖縄県医師会では、救急現場の慢性的な逼迫(ひっぱく)を受け、平成22年に沖縄県と「#8000(小児救急電話相談事業)」の契約を締結するとともに、子ども救急ハンドブックを作成し啓発活動などを行ってきたとした上で、昨年、同ハンドブックのLINE版の作成及び連動した#8000LINEアカウントの立ち上げを迅速に行い、運用していることを説明した。
また、全国の一次救急医療機関を掲載し、適切な救急受診につながるよう改良を進めるなど、更にコンテンツの拡充を図っていく意向を示した他、沖縄県には小児医療関係者が議論する場がないことから、「沖縄県小児医療協議会」の設置を目指すとした。
質疑応答では、事前に寄せられた質問及び当日出された質問に対し、講師と日本医師会役員から回答が行われた。
総括した角田徹副会長は、京都府医師会と沖縄県医師会の事例は今後の各医師会の広報活動に向けて非常に役に立つもので、横展開も可能なものだと指摘。日本医師会としても引き続き、各種課題について広報委員会で議論しながら取り組んでいく姿勢を示した。