閉じる

令和7年(2025年)11月5日(水) / 日医ニュース

定期的な検診や医療機関への適切な受診の必要性について理解を求める

定期的な検診や医療機関への適切な受診の必要性について理解を求める

定期的な検診や医療機関への適切な受診の必要性について理解を求める

 日本医師会シンポジウム「知って安心!女性のがんを正しく学ぼう!」を10月5日、日本医師会館大講堂で開催した。
 当日は、応募者の中から抽選により当選した約380名の参加者が会場に集い、「子宮頸がん」や「乳がん」の実態及び治療法、予防・対策などを学ぶとともに、定期的な検診や医療機関への適切な受診による早期発見・早期治療の重要性を再認識した。
 本シンポジウムは、女性特有のがんである「子宮頸がん」並びに「乳がん」の若年化が進み、20~40歳代で発症するケースが急増していることから、その症状や予防法、治療法などを解説する他、早期発見・早期治療に結び付けるためにも、定期的な検診や日頃から医療機関への適切な受診が必要であることを知ってもらうことを目的として開催したものである。
 冒頭あいさつした松本吉郎会長は、がんについて、「その多くは高齢になるほど発症リスクが高まるため、若い女性にはあまり関係のない病気と思われがちだが、女性特有のがんは若年化が進んでおり、20~40歳代でも発症するケースが増加傾向にある」とする一方、「子宮頸がん」や「乳がん」は、医学・医療の進展により、早期発見ができれば完治する可能性の高い病であると説明。「本シンポジウムを通じて、正しい知識を身に付け、自身だけでなく、周りの方々の日頃の健康な生活に役立てて欲しい」と呼び掛けた。

251105g2.jpg 続いて、高尾美穂女性のための統合ヘルスクリニックイーク表参道副院長が「子宮頸がん」について講演した。
 がんに関して高尾副院長は、50歳代までは男性よりも女性の方が罹患(りかん)率が高く、特に子宮頸がんは20代、30代共に罹患数が1位になっていることを示し、意識を高めるよう求めた。
 その一方で、この年代はキャリアを積んでいく時期のみならず、妊娠出産、子育ての時期にも重なっていることから、検診を受ける割合が低くなっていることを危惧。「がんへの罹患は人生に大きな影響を及ぼす可能性も高く、子宮頸がんは過形成や異形成の段階で気付くことができる病気。最低2年に1回、少しでも異常を感じている場合にはそれよりも短い期間で検査を受けることで安心にもつながり、その次のアクションを変えることもできる」として、定期的に検診を受けることの意義を強調した。
 また、子宮頸がんは、性交渉によるウイルス感染によって発症することから、予防法・対策が明らかながんであり、HPVワクチンの接種がその対策の一つになると説明。加えて、手術法やそのリスク、化学療法や放射線治療等についても触れ、「早期発見できれば、妊娠出産の可能性が残せるばかりか、残念ながらその可能性を失ったとしても命だけは残すことができる」と強調。「現在は、医療機関にかかれば、何かしらの道筋を得られる時代であり、体、命、希望を損なわずに済む可能性がある」として、異常を感じた場合にはかかりつけ医や専門医療機関に相談するというアクションと共に、規則正しい生活習慣の実行を呼び掛けた。

251105g3.jpg 次に、島田菜穂子ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長が「乳がん」について講演した。
 その現状に関して島田院長は、(1)患者の割合は増加しており、身近な病気となっている、(2)早期発見できれば助かる病気であり、乳房も残せる・戻せる時代となっている、(3)それぞれの人に合った個別化医療が進んでいる、(4)乳がん経験者の多くが社会復帰し、活躍している―ことなどを説明し、正しい知識・最新の情報をもち、備えることの重要性を強調した。
 乳がんの対策に関しては、30代後半から急激に増え、家庭や社会で最も活躍する年代に多く発症することから、「発症リスクを下げる(1次予防)」「早期発見(2次予防)」「上手に治す(3次予防)」があると説明。
 「1次予防」においては、定期的な運動習慣が乳がんの発症のみならず、再発リスクを低減すること、「2次予防」においては、しこり2センチ以下の早期発見・早期治療で9割の人が治癒すること、「3次予防」においては、乳がんにはさまざまなキャラクターがあり、それに応じた治療が重要であることなどを解説した。
 加えて、乳がんの早期発見、最適な治療のためには「ブレスト・アウェアネス」が必要だとして、セルフチェック方法を紹介。「セルフチェックの際に少しでも異常を発見したら、迷わずかかりつけ医や専門医療機関を受診して欲しい」とした。
 また、乳がんの検診方法(マンモグラフィ、超音波検査)や3種類の治療方法(薬物療法、放射線療法、手術療法)について詳説した他、「ピンクリボン運動」についても紹介。「がん対策は、意識・知識をもち、行動に移すことが大事になる」と述べ、それらを実行してもらうことで、乳がんによる悲しみのない社会が実現することに期待を寄せた。

 続いて、黒瀬巌常任理事が日本医師会のがん対策について説明。がん対策は(1)予防、(2)治療、(3)共生―の3本の柱を基本として、これらを一連として捉えることが重要だとするとともに、これらを支えているのが"かかりつけ医"であると強調。「かかりつけ医は複数人もつことも可能であり、かかりつけ医機能報告制度等を活用することで、ぜひかかりつけ医を見つけて欲しい」と述べた。
 また、日本医師会の役割については、さまざまな機関や関係者等と連携し、地域医療を面として支えている医師をサポートすることや、かかりつけ医機能を高めることに加えて、医療現場の声を国に届け、支援等を求めたり、がんを始め健康情報を国民に届けたりすることも重要な役割の一つになっていると説明した。
 更に、がん対策の一つである禁煙に関する取り組みとして、日本医師会の会員を対象とした喫煙意識調査の定期的な実施の他、小冊子『禁煙は愛』の作成や「世界禁煙デーイベント」などを行っていることを紹介。その上で、同常任理事は「一緒に考えてくれるかかりつけ医をもつことも、がん対策の一つになる」として、かかりつけ医をもつよう改めて呼び掛けた。
 その後のパネルディスカッションでは、検診の頻度や"自分ごと化"するための方策、がんが発覚した時のサポート、かかりつけ医を見つけるためのポイント等について、演者間で活発な討議が行われた他、Q&Aセッションでは、事前に募集した質問に演者から回答を行い、シンポジウムは終了となった。

お知らせ
 今回のシンポジウムの模様を収録した動画は後日、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載する予定となっていますので、ぜひご覧下さい。
日本医師会広報課

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる