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令和7年(2025年)11月5日(水) / 日医ニュース

令和7年度補正予算及び令和8年度予算編成で"真水"による対応を求める決議を採択

令和7年度補正予算及び令和8年度予算編成で“真水”による対応を求める決議を採択

令和7年度補正予算及び令和8年度予算編成で“真水”による対応を求める決議を採択

 第20回国民医療推進協議会(以下、国医協)総会が10月14日、日本医師会館小講堂とWEB会議のハイブリッド形式で開催され、政府が予算編成の時期を迎えるに当たり、43の参加団体の総意として、国民が将来にわたり必要とする医療・介護を守るため、3項目の対応(①令和7年度補正予算での対応②令和8年度予算編成での対応③財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による大規模で抜本的な対応)を求める決議(下掲)を採択した。

 総会は城守国斗日本医師会常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつを行った松本吉郎国医協会長/日本医師会長は、医療機関などの経営は著しく逼迫(ひっぱく)し、賃金上昇や物価高騰等に対応できるような状態ではないとして、補助金と診療報酬の両面からの対応の必要性を改めて訴えた。その上で、「適正化等の名目により、医療・介護の財源がこれ以上削減されれば、地域の医療・介護の崩壊は避けられない。前例のない大規模で抜本的な対応、特に"真水"による思い切った対策が必要である」と強調した。
 引き続き、参加団体からあいさつが行われた。高橋英登国医協副会長/日本歯科医師会長は、「高齢化に伴う医療費の伸びへの手当てだけでは医療は守れない。国民にとって最も大切なのは、社会インフラとしての医療である」と指摘し、国民皆保険制度を堅持するためにも、医療機関経営の安定が必要だとした。
 岩月進国医協副会長/日本薬剤師会長は、人事院勧告プラス3・62%の国家公務員と同等に医療業界も扱う方向での補正予算の作成や、来年度の診療報酬改定を進めることを要望。「特に、今は薬価差益がほとんど無い状況だが、薬を適正に回していくためには、一定程度の余裕が必要となる」と主張した。
 秋山智弥国医協副会長/日本看護協会長(代読:勝又浜子日看協副会長)は、「物価高騰に伴うあらゆるコストの上昇が経営を圧迫し、さまざまな経営努力をしても追い付かない」とするとともに、賃上げの不十分さから、他産業への人材流出も懸念されるとして、他産業並みの賃上げや労働に見合う処遇改善が必要であると訴えた。

診療所の緊急経営調査などを基に現状を説明

 議事では、茂松茂人日本医師会副会長が決議に向けた趣旨説明として、まず四病院団体協議会が10月6日に公表した「2025年度病院経営定期調査―中間報告(集計結果)―」を概説。
 医業利益の赤字病院割合については、令和5年度の69・9%から令和6年度は73・8%に、経常利益の赤字病院割合も令和5年度の51・1%から令和6年度は63・6%に悪化したとし、「特に100床当たりの経常利益を比較すると、明らかに下がっており、病院経営の厳しい状況が浮き彫りとなっている」と述べた。
 また、日本医師会が9月17日の定例記者会見で公表した「令和7年 診療所の緊急経営調査」の結果を基に、医療法人全体では(1)医業利益の赤字割合は、令和5年度の31・3%から令和6年度は45・2%に悪化、(2)経常利益の赤字割合は令和5年度の24・6%から令和6年度は39・2%に悪化、(3)医業利益率・経常利益率共に、平均値と中央値が悪化―しているなど、大変厳しい状況であることを説明。
 更に、2022年度の国民医療費の財源構成に触れ、「医療費の財源を考える際には『税金による公助』『保険料による共助』『患者の自己負担による自助』の三つのバランスを考えながら進め、自己負担のみを上げないことが重要である」と述べるとともに、低所得者への配慮も不可欠だとした。
 自助に関しては、わが国の患者一部負担割合は、公的医療保険のある先進諸国に比べると既に高い状況にあることを指摘。公助に関しては、消費税が令和2年度の21・0兆円から令和7年度予算の24・9兆円へと、3・9兆円増加するなど税収が上振れしているとして、消費税の増収分を適切に社会保障に使うことを求めた。
 共助に関しては、賃上げにより収入が増えており、今年も「最低賃金プラス約6%」「春闘プラス5・26%」「人事院勧告プラス3・62%」とされるなど、現行の保険料水準のままでも現役世代に新たな負担を求めることなく対応することは十分可能との考えを示した。
 その上で茂松日本医師会副会長は、「消費税の税収は増税前に1%当たり2・66兆円であったものが、現在では3・3兆円程度と7000億円弱増額している」「現役世代の収入は増えており、協会けんぽなど保険者の保険料収入も上振れしている」とし、これらを活用することで物価・賃金の変動への対応を強く求めたいとした。

11月20日に国民医療を守るための総決起大会を開催

 続いて、福田稠日本医師会副会長が国民医療を守るための国民運動の活動概要を説明。持続可能な社会保障制度の確立に向けて、国民が将来にわたり必要な医療・介護を安心して受けられるための適切な財源の確保を政府に求めていくものであるとし、10月14日から12月上旬に掛けて活動を展開するとした。
 具体的には、11月20日(木)午後2時より、「国民医療を守るための総決起大会」を、日本医師会館大講堂と道府県のサテライト会場をWEBでつなぎ、かつてない規模の参加者の下で開催する予定であるとして、都道府県医療推進協議会に対し、同協議会構成団体等に広く総決起大会への動員を呼び掛けることなどの協力を求めた。
 更に、参加団体の総意として、①令和7年度補正予算での対応②令和8年度予算編成での対応③財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による大規模で抜本的な対応―の3項目を求める決議を総会で採択することを提案し、決議案を朗読。同案は満場一致で採択され、今後は、政府を始め各方面に上申していくこととなった。
 最後にあいさつした松本会長は、「多くの賛同者を集めることが政府や国民に対しての発信力につながる」として、「国民医療を守るための総決起大会」への多くの参加を呼び掛け、総会は終了となった。

※11月20日に開催する総決起大会の模様は下掲のURLからご覧下さい。

総決起大会はこちらからhttps://www.youtube.com/live/oMGDRcTXy_I

決議
 医療・介護は公定価格で運営されているが、物価・賃金の急激な上昇に診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定が追いついておらず、医科歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションや介護事業所等は、著しく経営状況が逼迫しており、閉院や倒産が相次いでいる。
 令和7年度最低賃金はプラス6%強、人事院勧告はプラス3.62%、また「骨太の方針2025」でも示された2025年春季労使交渉の平均賃上げ率は5.26%等となっているが、医科歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションや介護事業所等は、とてもこれらに対応できるような状態ではない。
 適正化等の名目により、医療・介護の財源を削って財源を捻出するという方法でこれ以上削減されれば、地域の医療・介護の崩壊は避けられない。
 よって、国民、患者、利用者の健康を守り、さらには国民皆保険を堅持するため、以下の対応を求める。
1.令和7年度補正予算での対応
 医科歯科医療機関、薬局、訪問看護ステーションや介護事業所等に対し、補助金と診療報酬・介護報酬等報酬の両面からの早急な対応を行うこと。
2.令和8年度予算編成での対応
 令和8年度診療報酬改定をはじめ、令和8年度予算編成において、賃金上昇と物価高騰、高齢化、医療の技術革新に対応した大幅なプラスとすること。
3.財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による大規模で抜本的な対応
 これまで適正化という名の下で社会保障費は削られ続けてきたが、あくまで財源を純粋に上乗せするいわゆる「真水」による思い切った緊急的な対策を行うこと。
以上、決議する。
 令和7年10月14日
国民医療推進協議会

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