義肢装具士
国立障害者リハビリテーションセンター病院
三ツ本 敦子さん
義肢・装具をオーダーメイド
先天的に、または外傷・病気により手足を失った人が使用する人工の手足を義肢といいます。また、四肢や体幹の機能に障害を負った人が、その機能の補助や患部の保護のために装着する器具が装具です。義肢装具士は、医師の処方のもとに、一人ひとりにぴったりと合う義肢・装具を製作する国家資格です。今回は、国立障害者リハビリテーションセンター病院に勤務する三ツ本さんにお話を伺いました。
「義肢・装具は、まず装着部位の採寸・採型(型採り)を行い、組み立てた後、仮合わせと調整を重ねて患者さんの体に適合させることで完成します。組立自体は無資格の技術者にも可能なので、義肢装具士は採型と適合を行う専門職といえます。」
義肢装具士のほとんどは民間の製作会社などで働いており、三ツ本さんのように病院に常駐する人は珍しいのだそうです。
「当院では、患者さんは急性期病院から紹介を受けて来る方が多く、私たちは初診から診察に立ち会います。合併症の有無、義肢を装着する部分の傷の治り具合などの身体状況を医師と共にチェックし、医師の処方が出たら製作を開始します。仮合わせして痛みなく装着できるようであれば、義肢の装着訓練を開始しますが、その後も医師や理学療法士・作業療法士と連携し、訓練中の不具合などに対してこまめに調整を行います。」
患者さんの精神面への気配り
初めて義肢を使う人の多くは、この先の生活の見通しが立たず、不安に思っています。義肢装具士は、多職種のスタッフと共に、患者が今後の生活を前向きに考えられるようサポートしています。
「患者さん同士の交流も心の支えになるようですね。だんだんと心を開いてもらって、『使いやすかったよ』と声をかけていただいたり、『もう少しこうしてほしい』などの率直なリクエストを頂けるようになると嬉しいです。」
他科の医師にも知ってほしい
整形外科・リハビリテーション科の医師と連携することが多い義肢装具士ですが、三ツ本さんは、その他の診療科を目指す医学生にも、義肢・装具に関心を持ってほしいそうです。
「患者さんの中には、幻肢痛*でリハビリが困難な方もいます。幻肢痛の仕組みは未解明の部分も多いため、この分野に関心を持つ先生が増え、研究がもっと進んだらいいなと思います。また、産科の分野とも連携を取っていきたいですね。お子さんに先天性の四肢形成不全が判明した場合、動揺される親御さんも多いでしょう。私たちが早めに相談に乗ることで、ご両親の安心や、生まれた後の円滑なサポートにつながると思います。」
*幻肢痛…外傷や病気によって四肢を切断した患者が、失ったはずの手足の部分がまだあるように思われ(幻肢)、痛みを感じること。幻肢痛の発症機序については不明な点も多いが、近年の研究で大脳など中枢神経系が関与していることがわかってきている。
※この記事は取材先の業務に即した内容となっておりますので、施設や所属によって業務内容が異なる場合があります。
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