2026年3月19日
第9回 生命(いのち)を見つめるフォト&エッセー 受賞作品
中高生の部【文部科学大臣賞】
「人は支え合って生きてゆく」
岩佐 葵(16歳)神奈川県
祖母は私の中で強さとやさしさを併せ持つ存在だった。祖父が亡くなってからは一人暮らしをしていたが、毎朝決まった時間に起きて台所に立ち、決まった朝食を作るなど、非常に健康的な生活を送っていた。時には近所の人とコーラスを楽しみ、時には私の宿題をのぞき込んで数学の問題の解き方を教えてくれる、そんな自慢の祖母だった。私は漠然と祖母は100歳まで元気に生きるに違いない、と信じて疑わなかった。
しかし、日常は急に崩れ始めた。祖母が認知症を発症したのだ。最初は少し物忘れが増えたかな、と思う程度だった。だが、症状は次第に深刻になり、1日に何度も電話がかかってきては、不安を訴えたり、怒りを爆発させたりするようになった。スマートフォンから漏れ聞こえる泣き声や荒い口調を聞くたびに、私は胸をしめつけられた。遠く離れて生活していることもあり、すぐに駆け付けることもできない。数分おきにかかってくる電話にうんうんと
祖母が認知症と診断されてから、家族の中には疲労と
そんな折、祖母の部屋で1冊のノートを見つけた。そこには震える字で「自分の頭がおかしい」「死んでしまいたい」などが
やがて祖母は施設に入居した。医師や看護師、介護士の方々に囲まれながら、祖母は少しずつ穏やかさを取り戻していった。ある日看護師の方が「認知症の方には、否定せず、安心できる言葉をかけることが大切なんですよ」と教えてくださった。その一言に、私達は目から
認知症は特別な誰かだけの問題ではない。日本では高齢化が進み、すでに誰の家庭でも起こり得る課題だ。だからこそ、家族の力だけに依存するのではなく、地域や社会全体で支える仕組みが必要だと感じる。支える側の孤立を防ぎ、本人の尊厳を守るためには、多様な人との関わりが欠かせないのではないだろうか。私はこの経験を通して、寄り添うという言葉の意味を考えるようになった。寄り添うとは、必ずしも相手を完全に理解することではない。自分自身を犠牲にして伴走することでもない。たとえ短い時間でも、声をかけ、共に過ごし、相手の存在を認めることが大切なのではないだろうか。そうした小さな積み重ねが、病気や孤独に苦しむ人の心を支えるのだと知った。
祖母の人生の最期の数年間は、決して
第9回 受賞作品
一般の部: 【 厚生労働大臣賞 】
【 日本医師会賞 】
【 読売新聞社賞 】
【 東京海上日動あんしん生命賞 】
【 養老孟司審査員特別賞 】
【 玄侑宗久審査員特別賞 】
中高生の部:【 文部科学大臣賞 】
【 養老孟司審査員特別賞 】
【 水野真紀審査員特別賞 】
小学生高学年の部(4~6年生):【 文部科学大臣賞 】
【 水野真紀審査員特別賞 】
小学生低学年の部(1~3年生):【 文部科学大臣賞 】
【 玄侑宗久審査員特別賞 】
