医学生×一般学生 同世代のリアリティー
就職活動(就活)編-(前編)
今回は「就職活動(就活)」をテーマに、就活を終えたばかりの学生3名(学生A・B・C)と、医学生3名(医学生D・E・F)の6名で座談会を行いました。
今回のテーマは『就活』
医学生は医学部に入る段階で、医師になることがほぼ決まっており、専門分野や医局・研修病院の選択をするだけです。けれど一般の学生の多くは、大学に入る時点で職業は決まっておらず、「就活」を通しキャリアを作っていくのです。
就職先ってどうやって決めるの?
医D:就活の前に、まず「この仕事に就きたい!」って考え始めるのはいつぐらいからですか?
学A:大学に入る時は、何となく志望の学部があって、あとは偏差値で大学を決める、みたいな感じでした(笑)。なりたい職業が明確にあって、大学に入る人は少ない気がします。
学C:僕は教育学部に入りましたけど、教育学部生がみんな教師を目指しているわけでもないんです。僕はコンサルティング業界に内定が決まったんですが、まだどういう仕事をするかもよくわかっていないですね(笑)。
医F:そうなんですか?
学B:同じ業界でも、会社によって仕事内容は違うし、同じ会社でも配属された部署によって全然違うことをしますから。
学C:自動車メーカーに就職したって、みんなが自動車工場で車を作っているわけではなく、広告担当もいれば、人事担当もいる…、そんな感じです。
学A:就職活動が近くなると、「業界研究」をしなさいって言われるんです。志望する業界は、どんな事業を営んでいて、どんな人材を求めているのか…。その業界で働く先輩を訪問して話を聞いたり、業界研究セミナーに行くこともあります。
就活の流れ?まずは説明会から?
医E:私は4年なんでまだですけど、6年生は研修病院を選ぶためにセミナーに行ったり、先輩の話を聞いたりする人もいるみたいです。
学A:ああ、医学部でもそういうことあるんですね~。
医D:ちなみに、就活では何社くらい受けるんですか?
学B:僕の周りは平均40社くらいでしたけど、100社近く受けている人もいたなあ。
医D:100社!?
学C:そこまで受ける人はあまりいないけど、僕らも説明会だけならもっと多いですよ。
医F:説明会って?
学A:会社の就職説明会ですね。3年生の後半くらいから、企業の採用サイトに登録しておくと、説明会の案内が来るようになるんです。その情報を見て、手帳の空いている日程にどんどん説明会を入れていく…。
医D:そこまでだと、まだその会社を「受けてる」ってことにはならないんですか?
学C:はい。そして説明会に参加してみて、いいなと思ったらエントリーするんです。これが正式な応募に当たるもので、エントリーシート(ES)という履歴書のようなものを提出します。このESが認められれば、面接や筆記試験に進めます。
面接では何を聞かれるの?
医E:面接は何回くらいするんですか?
学A:大体は3~4回ですね。多い会社は10回以上あります。
医D:10回も!何をそんなに聞かれるんですか?
学B:内容は会社によるんでしょうけど、面接の回を重ねるほど「偉い人」が試験官になるのが普通だと思います。
学C:ある企業は面接ごとに○×△が付けられて、×が2回付いたらアウト、○が5回付いたら合格だとか…。採用する方も、多くの人の目で、できるだけいい人材を選びたいって思っているんでしょうね。
医F:大変そう…。ちなみに面接で受かる・受からないって何で決まるんですか?
学B:面接ではその人の個性やコミュニケーション力、論理的な思考力が見られていると感じます。これは文系も理系も同じでしょうね。僕は工学部なんですが、「大学で学んだ内容が仕事ですぐ役立つことはない!」と言われました。会社で役立つ能力は、研修や実務の中で身につくものだからこそ、知識や技術より、その人の人となりを見ているんだと思います。
学C:ちなみに、学生生活が充実していた人は言うことに説得力がありますよ。就活のマニュアル本にもいろいろなアドバイスが書いてあるんですが、うわべをつくろっても説得力はなくて、結局は自分が経験して実感したことを話す人の方が好印象なんだと思います。
医D:やっぱり性格が暗そうな人は受からないんでしょうか?
学B:一言で「暗い」って言っても難しいですけど…。仕事にもよりますよ。例えばプログラマーや技術者は、一見明るさがなくても、周囲とちゃんとコミュニケーションが取れるなら充分に仕事ができますし。
学A:なんか不採用が続くと、「お前はコミュニケーション能力がない!」って言われている気がしてくるんです。そうすると、余計に「どう振る舞ったらいいんだろう」ってわからなくなって、トンネルを抜け出せなくなる人もいると思います。
医学生×一般学生 同世代のリアリティー
就職活動(就活)編-(後編)
運が大きい?ここが変だよ就活!
医D:就活で理不尽だと思うことってありますか?
学A:理不尽とは言えないかもしれないですが、自分としては「うまく話せた」と思っても落ちていたり、「ダメかな」と感じていた所が受かっていることもあります。自分の感覚とズレがあると、「何が評価されているのか」がわからなくなって、自信が持てなくなります。
学B:「うちの会社のカラーに合ってない」っていう理由で落とされる場合もあります。そんな時は必死に反省点を考えてもどうしていいかわからない。
医F:落ちたところと受かったところで、面接での違いって何だと思いますか?
学A:最終的に「ここが悪かったから落ちた」っていう明確な理由はわからないですね。
学C:偶然受かったってことの方が多い気がします。企業研究を頑張ったところより、考える前に行動した結果たまたま「合った」ということもあるし。
学B:本当に偶然の要素も大きいと思います。朝から面接していて疲れている面接官に当たり、話が盛り上がらなかったり、前後にインパクトのある人がいたら忘れられるかもしれない。
学A:運の要素がすごく強いのに、ワンチャンスしかないっておかしいですよね。僕ら学生は、人生で新卒の就活って1回しかできないのに…って思います。
就活に悩み、精神科に通院する人も
医D:お話を聞いていて、就活って大変なんだなあと、なんとなくですがわかりました。
学A:まあ、100社受ける人や、面接を10回も受ける人はそういないですけどね。
学B:でもやっぱりみんな苦労してますよ~。さっきワンチャンスって話が出たけど、思い詰めちゃって精神科にかかったり、せっかく就職できたのに、期待と現実のギャップですぐに辞めちゃう人は珍しくないし…。
医E:就活が思うように行かず、追いつめられて自殺してしまう学生もいるとか…。
学A:確かに。何十社も受けて全滅だと、人生終わりって気持ちにもなると思います。
学C:医学生の人達からしたら、毎日スーツ着て説明会を回って…というのが異常な世界に見えるかもしれませんね。でも僕らにとっては、自分の将来を決める大事な時期だし、ここで失敗したら一生うまくいかないんじゃないかっていう不安との闘いです。大学の空気もピリピリするし、やっぱり必死ですよ。
医F:なるほど~、今回話を聞かなければ、その感覚もわからなかったですね。
逆に質問!なんで医学部を選んだの?
学B:最後に、逆に質問してもいいですか? 僕らからしたら「どうして医者になりたいと思ったの?」というのが素朴な疑問なんですが。
医D:将来の安定とか収入もありますけど、一番の動機は命に興味があったからですね。医者になってこうしたいというよりも、人の生死に触れることによってもしかしたら自分の中で何かが変わるんじゃないか、と。まだ漠然としているんですが。「人助けがしたい!」といった立派な目標は、今のところ私には言えないですね~。
医E:私は親が精神科医っていうこともあって同じ道を目指してるんですけど、単純に人と話をするのが好きなんです。自分も楽しくてそれが人助けにもなるならいいなあ、と。
医F:私は父が医者で母も医療関係の仕事をしていて。親から「あんたも医者になりなさい」と言われて、特に自分の中で反対する理由がなかったというか、言われるがままというか…。
学C:いいですね~、皆さん本音って感じで(笑)。僕ら就活をする人間も結局「何となく」なんですよ。自分が何をしたいのか、実際会社に入ってどんな仕事をするのか、何となくしかイメージできてない。
学A:就活では、それを面接の場とかでどうにか言葉にしようとするんですよね。何十社も受けている時点で確実に何となくだし(笑)。医者を目指す人も、僕らのように企業に就職する人も、同世代が抱える問題って同じなのかなあという気がします。
学B:医学生って勉強や試験がすごく忙しいって聞いたことがあるから、なかなか将来のことを考える余裕もないんじゃないですか?
医E:確かにそうかもしれません。自分がどこでどう働くかを、そこまで真剣に考える機会ってないですからね。
学C:なんか、医学生って遠い存在でしたけど、同じような悩みも持っていることがわかって、親近感が湧きました。
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