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【精神科】佐久間 健二先生
(藤田医科大学医学部 精神神経科学講座)-(前編)

佐久間先生

――佐久間先生が精神科医になられた経緯を教えてください。

佐久間(以下、佐):もともと、父が小児科の開業医、兄が精神科医、母と姉が看護師という一家で育ち、医師を志すようになりました。家族の影響などから、学生時代には漠然と小児科か精神科を考えていましたね。ただ、実習などで回るとどの科もそれぞれ興味深く、科を決める時にはかなり迷いました。最終的な決め手は、精神科領域は他科と比べ未解明の事柄が多く、生涯探求できそうだったからです。

例えば、統合失調症といった、100人に1人が発症するといわれる代表的な病気ですら、未だ原因がよくわかっていないのです。母校であり現在の勤務先でもある藤田医科大学では、統合失調症の原因遺伝子の解明を進めており、より根本的で新しい治療法の開発が期待されています。発展途上な分野だからこそ、若手でも新しい研究に携われる。自分も何か爪痕を残せるかもしれないと考えました。

――専門研修ではどのような経験を積んでこられましたか?

:入局と同時に大学院に入学し、1年目では大学院の授業と並行して、集中的に臨床に必要な基礎知識と技術を身につけました。当院では主治医担当医制をとっていて、1年目が担当医となり、主治医と相談しながら治療方針や計画を立てます。また週に一回、教授も交えて、全入院患者についてカンファレンスを行います。フィードバックを頂ける機会が多いので、実力がついたと思います。

また、身体疾患により発症・増悪した精神疾患を、他科からの依頼で診察することも1年目の役割です。統合失調症、うつ病、双極性障害、器質性精神病、摂食障害、薬物中毒、術後せん妄、認知症などを経験しました。

2年目になると外来治療や1年目のサポートに加えて、本格的な研究が始まります。

――先生はどのような研究をなさっているのですか?

:当院の大学院は、遺伝・睡眠・薬理学の3チームに分かれていて、私は薬理学チームに所属しています。我々のグループでは精神疾患に対する、エビデンスに基づいた最新・最適な治療法を確立することを目指しています。現在、最もエビデンスレベルが高いとされる研究法としてメタアナリシスがあります。

我々医師は、常に論文で最新の情報を得て、患者さんに還元する必要があります。しかし、教科書や参考書の内容が最新のデータではない場合や、間違った内容であることもあるので、参考にするデータの引用先を確認し、適切であるか評価する必要があります。また現行のガイドラインにおいても、改訂して最新の情報を反映するまでには時間がかかるので、ガイドラインと最新の文献の両方を確認し吟味する必要があります。しかし、論文を検索すると、様々なデータが出てきます。たとえランダム化比較試験などの比較的信頼性の高い研究であっても、同じアウトカムに対して全く違う結果が出ることも珍しくありません。それでは困ってしまいますから、複数の論文を集めて統計的に解析し、臨床疑問に対して現時点での答えを与えるのがメタアナリシスです。私は今、メタンフェタミン依存症に対する、禁煙薬であるバレニクリンの効果と安全性に関するメタアナリシスを行っています。

メタアナリシスは診療ガイドラインを作成する際も重要視されます。私も、以前は向精神薬の適正使用ガイドライン、今は統合失調症の薬物治療ガイドラインの作成委員会に参加しています。各分野の権威ある先生方と一研究者として共に仕事ができるので、非常にやりがいがあります。それらの仕事に加え、科学研究費助成事業の一環として、せん妄に対する薬物治療の介入研究を行っています。