保健所が担う様々な仕事

保健所が担う役割を概観する

保健所が担う業務は、大きく「対人保健」「対物保健」「企画調整」の三つに分類されます。対人保健業務には感染症対策やエイズ・難病対策、精神保健対策、母子保健対策などが含まれます。対物保健業務には食品衛生関係業務、生活衛生・環境衛生関連の業務などが含まれます。企画調整業務には、地域の医療計画の立案や維持、所管の市町村全域にわたる調整、医事・薬事衛生業務などが含まれます。

保健所の機能の違いと自治体との関係

政令指定都市や中核市、特別区は、「政令市型」と呼ばれる保健所を設置しています。また、政令市型の保健所が置かれていない地域をカバーするように、「都道府県型」の保健所が設置されています。

都道府県型保健所は、公衆衛生業務を、所管区域内の市町村と分担して行います。健康相談・保健指導・乳幼児健診・予防接種・各種検診など、住民により身近な業務は、市町村が設置する保健センターが担います。都道府県型保健所は、地域の医療機関や医師会と調整し、より広域的・専門的な業務や、市町村の後方支援を担います。

政令市型保健所の多くは、都道府県型保健所が担う業務に加え、市区町村の業務とされている対人保健サービスも担います。

これらの活動の基盤となるような、都道府県全体の保健衛生計画の策定や予算獲得、条例の制定、人材の計画的な確保などは、都道府県の本庁が担っています。

地域保健活動は、このように保健所と自治体、各関係機関が連携・調整することで支えられているのです。

 

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上記の保健所の施設案内図は架空のものです。全国の様々な保健所の施設案内図をベースに、政令市型の保健所を想定して、編集部で再編しています。

 

生活衛生・環境衛生(対物保健分野)

人々の生活に関わり、衛生管理が必要な施設に対して、営業許可や届出、監視や立入検査などを行います。対象となる施設には、宿泊施設、理容院・美容院、クリーニング店、公衆浴場やプール、興行場(映画館・劇場・音楽堂・野球場など)などがあります。その他、貯水槽水道施設の設置に関する業務や、飲用井戸の衛生管理の指導、特定建築物*の設置や維持管理状況調査、火葬場・納骨堂・墓地等の開設等に関する業務なども行います。

保健所には、「環境衛生監視員」と呼ばれる職員がおり、施設への立入検査や実態調査などを行っています。主に薬剤師や獣医師、その他、大学や高等専門学校で水産学・農学・保健衛生学などを修めた人などが、監視員を務めています。

*特定建築物…百貨店や興行場、学校、図書館、博物館・美術館、店舗や事務所、旅館など、特定の用途に使用される建築物であり、特定用途に使用される延べ面積が3,000⑦以上(小学校・中学校等の場合は8,000⑦以上)である建築物のこと。

食品衛生(対物保健分野)

「保健所の仕事」というと、食品衛生関連のことが思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。保健所は食品衛生法に基づき、食品等事業者(飲食店や食品製造施設、食品販売施設など)の営業許可、営業施設の監視・指導、食中毒の調査・検査や違反業者への行政処分、食品等事業者や一般の住民に対する衛生教育・情報提供などを行っています。

保健所には、「食品衛生監視員」と呼ばれる職員が勤務しています。監視員の多くは薬剤師や獣医師、食品衛生行政関連の実務経験のある栄養士などです。監視員は、営業施設への立入調査・検査権限や、試験検査のために必要な食品や添加物を無償で収去できる権限を持っています。食品に関する苦情や相談への対応も行います。

母子保健(対人保健分野)

母子保健法に基づいて、母親と乳幼児の健康保持・増進に関わる活動を行います。

市町村の保健センターや政令市型の保健所では、妊産婦・乳幼児の健康診査や、母子健康手帳の交付、両親学級や育児学級、妊産婦・新生児訪問指導など、より基本的で住民に身近なサービスを行っています。

都道府県型の保健所では、先天性代謝異常等検査や不妊専門相談、女性の健康教育、未熟児の訪問指導、未熟児養育医療、小児慢性特定疾患の治療研究事業、障害児や長期療養児に対する療育相談など、より専門的で広域的なサービスを実施しています。その他、保健センター機能を担う市町村への広域的・専門的・技術的支援も行います。

 

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感染症対策

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精神保健

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