交流ひろば

医学生匿名座談会
~女子医学生の結婚観を聴いてみた~(前編)

コロナ禍で、医学生同士が集まる機会が少なくなった昨今。
日頃なかなか話すことができない本音を語り合うために、医学生が主体となってオンライン座談会を開きました。

パートナーに働いてほしい?

真野(以下、真):コロナ禍で飲み会などがなくなり、医学生同士で集まって本音を語り合う機会が減ってしまったように感じます。僕たちはその代わりとなるような場を作りたいと思い、ドクタラーゼ誌面を借りて、医学生の匿名座談会を開こうと考えました。

今回は女子医学生の皆さんに、「医師同士の結婚」というテーマでお話を聴きたいと思います。

同じ男子医学生に対しては、こういったテーマで気軽に会話をすることができるのですが、女子医学生の皆さんがどう考えているのかに関しては、普段はちょっと聴きにくいため、ぜひこの機会にお話を聴かせてもらえればと思います。

出口(以下、出):まず皆さんにお聴きしたいのは、「パートナーには働いてほしいか?」ということです。

参考までに、僕の知人の男子医学生数人に同じことを聴いてみたところ、「働いてほしい」「働いてほしくない」両方の答えがありました。

働いてほしい理由として挙がったのが、「二人とも働いていたほうが経済的なリスクが少ないから」でした。医師は激務であることから、体を壊す可能性など万が一のことを考えてのことのようです。他にも、「相手が働いている方が、話題が増えるから」「専業主婦だと家にこもりきりになってしまうが、外で働くと気分転換になると思うから」といった理由が出ました。

一方、働かないでほしい理由として挙がったのが主に「家事をしてほしいから」です。これは、医学生として自分の将来の激務や収入の安定を加味している部分もあると思います。

皆さんはどう思いますか?

女子医学生A(以下、A):相手がもし働きたくないと思っているなら、専業主夫になってもらって構わないです。私は、仕事を頑張っている男性を好きになる傾向があるのですが、仕事を辞めても専業主夫として頑張ってくれたら、その姿を変わらずリスペクトし続けられると思います。ただし、もし経済的な問題が生じたら、そのときは働いてもらうかもしれません。

女子医学生B(以下、B):私は家事が好きではないため、むしろパートナーには専業主夫になってほしいです。家事を分担するとなると、分担方法やお互いのやり方などで揉めそうな気がするので、そういう意味でも相手が専業主夫だとありがたいですね。

女子医学生C(以下、C):私は、そもそも家事をあまりパートナーにやってもらおうと思わないです。時間と労力はお金で解決できるならそうしたいと考えているため、家事はできる限り外注したいです。時短家電などを積極的に取り入れたいとも考えています。そのため、パートナーが働くかどうかについては特にこだわりがありません。もし育児などのために専業主夫になりたいと言うなら、それを受け入れると思います。

女子医学生D(以下、D):私の場合は、金銭面での不安から働いてほしいです。もし自分が働けなくなった場合や、海外留学や旅行に行きたいと思ったとき、相手に収入源があまりない状態だと、その間の家計も自分に負担がかかるというプレッシャーを感じてしまいます。また家に帰った後に仕事の意見交換などをすることで得られるものもあると思うので、働いてほしいですね。

医師同士の結婚はメリットか

:では、次に「パートナーが医師だった場合のメリット・デメリット」について聴きたいと思います。こちらも、僕たちの周りの男子医学生に聴いたときの答えから紹介します。

メリットとしてまず挙がったのは、「世帯収入が多くなる」でした。医師は働き方に関わらず収入が安定しているため、パートナーがもしアルバイトでも、経済的に安定するということです。他にも、「協力して開業できる」「一緒に勉強できる」「転職がしやすい」といった意見がありました。

:デメリットとしては、まず、医師は通常業務に加えて、夜も当直やオンコールが入るため、「生活リズムが合わず家で会えない」「休みも合わせづらい」といったすれ違いを危惧する声がありました。

皆さんはどう考えますか?

:確かに、金銭的なメリットは大きいですね。私がデメリットだと感じるのは、大学や自治体の都合による異動でパートナーと離れてしまう可能性があるということです。相手が同じ医局であっても、異動先によっては単身赴任になってしまうなど、住む場所の問題は大きなデメリットではないかと思います。

私自身は、パートナーと別居はしたくないです。パートナーには日々の愚痴を聴いてもらったりして、また気持ちを切り替えて仕事に向かいたいです。

:私もパートナーに今日一日のことを聴いてもらう時間が必要なので、結婚したら絶対に一緒に暮らしたいですね。しかし先輩方を見ていると、結局離れて暮らすことになってしまった人たちのほうが圧倒的に多い印象もあります。

:私は、パートナーとは常に一緒にいなくても大丈夫なので、離れて暮らしたり、生活リズムが合わなかったりしても問題ないかもしれません。結婚するということは、その人を独占する権利をお互いに渡し合うことだと思っているので、その独占権さえ得られたらそれで満足です。

:私はもし結婚したとしても、自分の時間を持ちたいタイプなので、お互いそれぞれの場所を拠点として、それぞれ仕事に励む暮らし方はむしろ良いなと感じます。いくら好きな人でも四六時中一緒だと疲れてしまいそうですし、適度に一人の時間も持てるような距離感が個人的には望ましいです。私はアカデミックなキャリアを歩みたいと考えていることもあって、双方ともに自分のキャリアを大切にして、お互いに譲ったり遠慮したりしないのが理想です。

:お互い医師同士だと、近過ぎるがゆえの衝突もあるかもしれませんよね。医師の世界は狭いため、小さなミスや誤解が良くない噂となってパートナーに伝わってしまうとギクシャクしてしまいそうです。

:医師をパートナーにしたくないという訳ではありませんが、医師同士だと家でも仕事の話題が中心になりそうで、仕事とプライベートの境界がなくなるのではという不安があります。私の家は母が開業医で父が会社員なので、医師同士の結婚というものがまだイメージできないところがあります。

 

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医学生匿名座談会
~女子医学生の結婚観を聴いてみた~(後編)

医師以外との結婚って?

:皆さんは、医師とそれ以外の職業の方、どちらと結婚したいと考えますか?

:私は医師の方がいいかもしれません。医師は就職してからもずっと勉強し続けなければならないため、医師ではない相手が家でくつろいでいるときに、ひとりで勉強しているのは寂しく感じるかもしれません。やはり、仕事に対する姿勢が近いということは大きい気がします。

:私は医師以外の人でも良いかなと思っています。他学部の人と話していても、それほど価値観の違いを感じたことはないですし、今後もし相手と収入に差ができたとしても、そのことで相手が卑屈にさえならなければいいと思っています。

ただ、働き始めると出会いの場は職場しかなくなるため、消極的な理由で「医師しかいない」と考える女子医学生が周りに多いとは思います。

:確かに、卒業後も臨床研修などで忙しくて、プライベートな時間は取りにくいですよね。

私はそもそも、医師以外に女性医師を恋愛対象に見てくれる男性がいるのかどうかが気になります。医師以外の人には、「稼ぎが良さそう」「頭がいい」「勉強ばかりしてきた人」といったイメージを持たれることもあって、どうしても結婚相手は医師しかいないと思ってしまうところがあるのです。

:確かに、私はアルバイト先で医学部と告げた時、他大学の他学部の男子学生に少し引かれてしまったことがありました。

:私もそれが嫌で、何を専攻しているか聞かれると「医療系」と濁して言うときがあります。医学生だと告げてしまうと、私自身ではなく肩書きだけを見て話をされているような気がしてしまうのです。

でも、そんな理由で将来のパートナーを同じ医師に限定してしまうのももったいないですよね。

:医師以外の人と結婚した女性医師の話を聴いてみたいですね。それを聴いたら、女子医学生も他の職業の人にアプローチしてみようという意識が持てそうな気がします。

:それはいいかもしれませんね。別の学部に進んだ高校時代の友人に話を聴いたり、その友人の知人を紹介してもらったりして、医学生以外の学生と交流を持ってみたいと思いました。そうすれば、また世界が広がるかもしれませんね。

:お話を聴かせていただき、ありがとうございました。女子医学生ならではの悩みに、僕自身は気付けていない部分が色々あったように感じました。

:皆さんと一緒に勉強をしている立場として、また今後一緒に働いたり研究したりする立場として、今回じっくりお話を聴けて良かったです。

 

旭川医科大学3年
出口 貴祥

「今回はじっくり皆さんのお話を聴けて良かったです」

 

 

旭川医科大学3年
真野 竣

「本音を話していただきありがとうございます!」

 

 

女子医学生A

「一緒の時間を大切にするのは医師同士の結婚だと難しいかも…」

 

 

 

女子医学生B

「私はパートナーには専業主夫になってほしいです」

 

 

 

女子医学生C

「学部を聞かれたら「医療系」と濁して言うときがあります」

 

 

 

女子医学生D

「医師以外の人と結婚した女性医師の話を聴きたいです」

 

 

※取材:2021年12月
※取材者の所属は取材時のものです。