医療機関における口腔ケア
~合併症予防の視点~

最近は医療機関において、患者さんへの口腔ケアを行うことが重視されはじめています。口腔ケアは、患者さんのQOLを高めるだけでなく、合併症を予防したり、疾患の治療をスムーズに行うためにも非常に重要なのです。

 

 

河合 総司(医師)
地域の総合病院に勤務する医師。院内の多職種連携に力を入れている。座右の銘は「初志貫徹」。

医療機関の「食べる」への取り組み

近年、医療機関の入院・外来患者への口腔ケアが注目されています。医科での治療と並行して口腔ケアを行うことが、合併症の予防や入院日数の短縮につながるとわかってきたからです。

高齢者や、脳卒中などで麻痺が残る患者は、誤嚥性肺炎のリスクが特に高くなります。そのため経管栄養などが用いられることがありますが、胃の内容物が逆流するなどして肺炎を生じてしまうことがあります。また、「口から食べていないから」といって口腔ケアが不十分になると、口腔内の細菌が増加し、かえって肺炎リスクを高めてしまいます。近年は、口から食べつつ、口腔ケアを入念に行うというアプローチが広まりつつあります。

がん患者にとっても口腔ケアは大切です。化学療法を行うがん患者の約30~40%が、口内炎や味覚異常、口腔感染症などの合併症を発症すると言われています。治療の負担に加え、口の痛みや食べられない・しゃべれないストレスが重なると、QOLは著しく下がってしまいます。また、口腔合併症が重症化すると、抗がん剤の量を減らしたりしなければならず、がん治療自体にも影響が出てしまいます。がん治療を始める前に虫歯や歯周炎などをできるだけ治療し、セルフケアの指導を続け、それでも口腔合併症が重症化してしまったら、速やかに歯科での治療につなげることが重要です。

 

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