FACE to FACE

interviewee 田沢 雄基 × interviewer 西村 有未

各方面で活躍する医学生の素顔を、 同じ医学生のインタビュアーが描き出します。

田沢さん

西村(以下、西):田沢さんは幅広い活動でリーダーシップを発揮していらっしゃいますが、そもそも医師を志したきっかけは何ですか?

田沢(以下、田):僕の家は両親が忙しく、半分は両親に、もう半分は祖父母に育てられました。両親には「人と違うことをしなさい」、祖父母には「人の役に立つことをしなさい」と教えられたのですが、その両方を満たせる職業は医師なんじゃないかと思ったのが、この道を選んだ理由です。

西:いまは医療×ITを軸に活動されていますが、最初からITに関心があったんですか?

田:大学に入った当初は、人手不足だと言われていた救急や産科に関心があったんです。でもいざ大学に入ってみると、救急や産科志望の同級生はたくさんいました。人と違うことをして社会の役に立ちたいという目標は、どうやらそちらでは達成できなそうだと思いました。そんな時に、サークルの活動で伊豆大島の救急医療を見学する機会があったんです。交通事故の患者さんをヘリで搬送することになったのですが、ファーストコールから病院に着くまで5時間くらいかかっていたんです。東京に住んでいれば助かる命が、離島だと助からない。そんな現状を目の当たりにして、この状況を何とか解決できないかと思いました。

西:医療の現場を直接見ることで、自分が取り組むべき課題が見つかったんですね。その課題を解決するためにITに目をつけたのはなぜですか?

田:例えば離島医療についても、CTやMRIのデータを本土に送る通信インフラを整備して、遠隔読影を制度的にも支援できれば、かなり改善できるんじゃないかという感覚がありました。そんな大学4年生の頃、IT企業で半年間インターンしたのですが、そこで当時話題になっていたビッグデータという概念に出会ったんです。近年どんどんスマートフォンが普及していて、今後は患者さんがスマホで自分の健康を管理して、医療機関はそこから送られるデータを解析して病気を予防できるようになるかもしれない。そういう医療とITを融合させる所に、自分が活躍できる場があるんじゃないかと思って、大学5年の時に仲間と起業しました。

西:起業後は、医療学生向けのインターンやイベント情報を発信する「医療学生ラウンジ」を開設したり、医療系アプリの開発コンテストを主催したりと、様々な活動をしてらっしゃいますよね。今後はどういった活動をされる予定なんですか?

田:初期研修が終わったら大学院に行くつもりです。医学博士だけでなく、公衆衛生学とMBAもしくはイノベーションデザインの修士を取るつもりです。

西:卒業後も精力的に活躍されるんですね。田沢さんのような活動がしたいけど、あと一歩が踏み出せないという後輩に向けてメッセージをもらえますか?

田:一見派手に思われるかもしれませんが、僕の活動も最初のきっかけは大学1年の時にたまたま流れてきたサークル勧誘のメーリスに、何の気なしに返信したことでした。自分ならではの形で社会に貢献するやり方を見つけたいと思ったなら、やはり最初の一歩を踏み出してみないと達成できません。後輩のみなさんも、最初は小さな行動からでいいので、まずは面白そうだと思ったことに手を出してみてください。いま勇気を出して始めなければ、後でそれをやろうと思うと倍以上の勇気と労力が必要になるかもしれません。

FtoF
interviewee 田沢 雄基(慶應義塾大学医学部6年)
大学在学中の各種コンサルティング企業でのインターン経験により、ヘルスケア領域におけるデータ解析に興味を持ち、5年次に株式会社エスティムを起業。

interviewer 西村 有未(東京大学医学部4年)
多くの人を精力的に引っ張る田沢さんは凄いなと憧れながらも、その原動力は何だろうと思っていました。目の前の試験や実習に追われ目標を持って活動できない学生が多いなか、低学年のときに感じた問題を解決するためにまっすぐ活動をされてきた田沢さんから、大変刺激を受けたインタビューでした。(西村)

※医学生の学年は取材時(2014年3月)のものです。
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