大学紹介
岩手医科大学
【教育】プロを育てる連携教育
岩手医科大学 医学部長 佐藤 洋一
岩手医科大学は、明治30年に東北地方の医療の貧困を憂いて設立された病院と医学校、看護婦と助産婦の養成所がもとになっています。本学の学則冒頭には、「誠の人間を育成する」と掲げています。すなわち、本学の教育を特徴付けるのは「地域医療」と「多職種連携」そして「全人教育」です。現在、盛岡市内の手狭なキャンパスから郊外に学部機能を順次移転している最中で、この新キャンパスでは、他に類を見ない試みがなされています。各学部固有の建物はなく、医歯薬看の4学部で共通の教育棟と研究棟が建てられました。東西に分かれた建物群の間には南北にキャンパスモールが走り、戸外に出ることなく各棟を行き来することができます。共修ができるように多様なラーニングコモンズが用意され、少人数グループ学修に欠かせないスタディールームも70室以上整備されております。実習室もできる限り共有化とユニバーサル化を進めました。これは、複数学部の学生が共修するための工夫です。
本学医学部では、地域医療研修を1年生、3年生、5年生で行っていますが、それに加えて大規模な多職種連携教育が可能で、キャンパスモールやユニバーサル化した実習室、そしてスタディールームが威力を発揮しています。この連携教育には各学部の教員が参画し、知識面だけでなく協調性や企画力など多面的に学生を評価しております。準備に時間がかかりますが、連携教育を通じて、学生はそれぞれの職種に誇りを持つと同時に多職種を尊重し、更にはそうした協同作業を客観的に行うことができるようになります。Pride, Respect and Objectiveの頭文字は期せずしてPROとなります。
2019年には、学生と教員、そして患者の皆様が近い関係になるように設計された新病院も開院する予定です。誠の人間という究極のプロフェッショナルを養成するにあたって、教員一同、励んでいるところです。
【研究】医歯薬連携による学際的研究推進
岩手医科大学 医歯薬総合研究所 所長 佐々木 真理
岩手医科大学における研究の最も大きな特徴は、専門・講座・学部の垣根を越えた学際的共同研究を互いに協力し合って進めることができる自由な校風と開放的な環境といえるでしょう。本学の矢巾キャンパスには学部ごとの建物はありません。二つの研究棟に医学部・歯学部・薬学部の研究室が隣接して配置され、共同研究機器・スペースも多数設けられています。また、医学部・歯学部を跨ぐ統合基礎講座や共同研究部門の医歯薬総合研究所が種々の共同研究を積極的にサポートしているのも特徴です。
現在も複数の研究プロジェクトが全学的に進められています。例えば、「超高磁場7テスラMRIを機軸とした生体機能・動態イメージングの学際的研究拠点プロジェクト」では、医学部・歯学部・薬学部・医歯薬総合研究所・教養教育センターから20講座50名以上の研究者が参加し、研究テーマごとに有機的な領域横断的研究グループを作って多角的な視点から意見交換をしながら先進的な画像研究を行っています。また、震災復興事業である「東北メディカル・メガバンク計画」では、いわて東北メディカル・メガバンク機構を組織し、被災地を中心とした地域住民の皆様の大規模健康調査を行うとともに、生命情報科学、基礎医学、臨床医学の研究者が力をあわせて種々のコホート研究や遺伝子解析研究などを精力的に進めています。
本学は本年度創立120周年を迎えました。念願の看護学部が新設され、医療系総合大学としてますます発展していこうとしています。研究においても、医歯薬看連携によって本学の特徴である学際的共同研究基盤がより充実していくことが期待されます。
【学生生活】オール岩手で学生を育てる
岩手医科大学 医学部 5年 曽我 仁美
同 5年 高橋 啓悟/同 5年 吉直 大佑
高橋:岩手医科大学は、医・歯・薬・看護学部の医療系4学部が揃った医療系総合大学です。1年次は医学部生全員と、他学部の希望者で寮生活をします。寮には個人の部屋と、12室ごとに設けられた共同の「ユニットスペース」があるので、プライバシーも守りつつ、みんなと仲良くなれます。僕は今でも同じユニットだった友人と試験勉強をしています。
吉直:岩手県には医学部が岩手医科大学にしかないこともあり、県内の医療機関とのつながりが深く、実習が充実しています。地域医療実習で大学の外の病院に出た際に、人員も設備も大学病院の環境とは全く違う、地域医療のリアルを目の当たりにして、とても勉強になりました。
曽我:私たちは2017年のシムリンピック*に出場したのですが、その際にも県内の病院の先生に超音波検査の指導をしていただきました。大学でもたくさんのシミュレーターを自由に使えるようにしていただき、大学内外のたくさんの方に応援していただきました。
高橋:岩手医科大学の先生方は、学生をすごく気にかけてくださっていると感じます。授業や実習に関するアンケートを通じて学生の要望を医学部長に伝えられたり、医学部長からのメッセージが学年のグループチャットに届いたりするんですよ。
吉直:日ごろの勉強は学生同士が助け合って学ぶ雰囲気があるのに、学生有志でサークルを作る文化がないのは課題だなと思っています。シムリンピックに出て、他の大学の手技のレベルの高さに驚きました。サークルを立ち上げて、学生同士で学んでレベルアップしていけたらと考えています。
*シムリンピック…全国の医学生が3人一組で参加し、身体診察・救急蘇生・基本手技などの種目で臨床実習の成果を競う大会。
※医学生の学年は取材当時のものです。


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- 医師への軌跡:志水 太郎先生
- Information:Autumn, 2017
- 特集:医学生よ、声をあげよ 医学教育への学生の参画を考える―第5回医学生・日本医師会役員交流会―
- 特集:運営委員3名の振り返り座談会―学生が主体性を持って医学教育に参画できる未来へ―
- 特集:交流会を終えて
- 特集:医学教育の専門家に聴く ①医学教育の第三者評価
- 特集:医学教育の専門家に聴く ②新たな専門医の仕組み
- 特集:全体ディスカッション
- 「食べる」×「健康」を考える①
- 同世代のリアリティー:テレビ番組制作の仕事 編
- 地域医療ルポ:栃木県宇都宮市|ひばりクリニック 髙橋 昭彦先生
- チーム医療のパートナー:看護師(がん化学療法・がん放射線療法)
- 10年目のカルテ:内分泌代謝内科 堀内 由布子医師
- 10年目のカルテ:感染症内科 西村 翔医師
- 10年目のカルテ:リウマチ・膠原病内科 須田 万勢医師
- 日本医師会の取り組み:これからの「医師の働き方」
- 医師の働き方を考える:夫婦二人三脚で、離島の6千人の健康を支える
- 大学紹介:岩手医科大学
- 大学紹介:名古屋大学
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- 日本医科学生総合体育大会:東医体
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