FACE to FACE
interviewee 井上 鐘哲 × interviewer 中居 薫花

中居(以下、中):井上さんは、今年4月に大阪医科大学で開かれた医学生生理学クイズ日本大会2017(PQJ2017)*1の共同代表を務められましたね。私もお声がけいただいてスタッフとして参加し、とても勉強になりました。この大会は、昨年岡山大学で開催された第1回PQJに続く第2回ですが、井上さんがPQJの主催を引き継いだきっかけは何でしたか?
井上(以下、井):PQJは、マレーシアで2003年から毎年開催されている「国際生理学クイズ大会(IMSPQ)」をモデルにしたものです。現在は世界各地でIMSPQのようなクイズ大会が開催されるようになっていて、僕も昨年3月、タイで行われたSIMPIC*2という国際クイズ大会に参加しました。アジア全域の優秀で意識の高い学生たちと親交を深めることができ、「日本でも意欲の高い医学生のコミュニティを作って広げていきたい」と強く思いました。そしてその翌月、英語でクイズを行うPQJ第1回大会が岡山大学で開催されたんです。僕はその時、いち参加者として主催者の方々とお話しし、ぜひもっと大きな大会に育てていきたいなと思って、自校で第2回大会の主催者を任せていただくことになりました。
中:大会を作っていくうえで掲げていた目標を教えてください。
井:参加者全員に「濃密な体験」と「フレンドシップ」を提供することです。クイズ大会には勝ち負けがあり、優勝チーム以外は全員敗者として帰ることになります。でもせっかく参加したのだから、悔しい思いだけでなく、何かしらいい思い出を持ち帰ってもらえるよう意識しました。まず「濃密な体験」についてですが、医学部の勉強は、机の上でひたすら問題を解くような孤独なものが多いと思います。でもそのなかで、例えば先生に質問しに行ったり、人と議論したりと印象的な体験を経れば、頭に残りやすい。クイズは、そんな「濃密な体験」の最も良い形の一つだと思うんです。難しい問題にアクションを起こして答える、解説という形でフィードバックする。こうして多方面から知能を刺激されれば、その体験は一生覚えていると思うんです。そこで、あえて選択式ではなく、絵を描いて答える問題を出したりもしました。
中:もう一つの「フレンドシップ」についてはどうでしたか?
井:クイズ終了後に参加者同士で話し合ったり、メッセージボードにメッセージを書き合ったり、連絡先を交換したりとコミュニケーションが生まれていたので、目的は達成されたのではないかと思います。PQJを通じて築いた人間関係を、将来に活かしてほしいです。
中:色々な人に会って刺激を受けることで、新たな目標を持つ機会にもなりそうですね。今回の経験を踏まえて、井上さんは今後、PQJをどのように展開していこうと考えていますか?
井:今回はクイズだけでなく、挨拶やアナウンスまで全て英語で運営できたので、今後は国際イベントも開けるかもしれません。今後の課題は、こうした場になかなか出てこない学生にどうアプローチするかということです。今回参加してくれた学生が、学んだことを各大学に持ち帰って、大学内に新たなコミュニティをつくっていってほしいですし、大学側もぜひ、そうした学生の活動を積極的に支援していってほしいです。僕も、今回のPQJのマニュアルやノウハウを公開したりして、他大学でのPQJ開催やコミュニティづくりに協力していきたいですね。
*1 医学生生理学クイズ日本大会2017…2017年4月16日(日)、大阪医科大学にて開催。
WEB:http://bit.ly/pqj2017
*2 SIMPIC…微生物学・免疫学・寄生虫学 国際コンペティション(Siriraj International Medical Microbiology, Parasitology and Immunology Competition)
井上 鐘哲(大阪医科大学4年)
医療を通じて人類の未来を明るくすることに人生の意義を見出し、大阪大、米国カーネギーメロン大でロボット工学を学んだ後に医学の道に進む。大阪医大では国際交流部や茶道部に所属し、80名以上の交換留学生と親交を結ぶ。PQJ2017共同代表、スタンフォード大睡眠科学研究所インターン等を経験し、現在大阪医科大学医学競技大会準備委員会代表。茶道裏千家中級、統計検定2級。TOEIC 990点取得。facebook.com/kaneaki21
PQJ2018開催予告
医学生理学クイズ大会2018(PQJ2018)は、鳥取大学にて2018年5月19日(土)・20日(日)に開催予定。 WEB: https://physiology-quiz-festival.jimdo.com/
中居 薫花(大阪医科大学2年)
PQJ2017にスタッフの一人として関わらせていただき、私自身が想像を超えるほどの刺激を受けました。PQJの理想は全国から集まった医学生の交流ですが、今大会はまさにそれを体現した場になったと思います。今後も井の中の蛙になることなく、このような大会で参加者と積極的に交流することで絶えず「化学反応」を起こして自分を磨いていきたいと思います。
※医学生の学年は取材当時のものです。



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- 医師への軌跡:志水 太郎先生
- Information:Autumn, 2017
- 特集:医学生よ、声をあげよ 医学教育への学生の参画を考える―第5回医学生・日本医師会役員交流会―
- 特集:運営委員3名の振り返り座談会―学生が主体性を持って医学教育に参画できる未来へ―
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- 特集:医学教育の専門家に聴く ①医学教育の第三者評価
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