交流ひろば

COVID-19禍のinfodemicから考える医療者の役割 -人と医療の研究室Student Groupのお誘い-

人と医療の研究室Student Group 京都府立医科大学医学部医学科3年 李 展世

私たちは「医療の役割」や「健康とは何か」などの根源的なテーマに関連する活動を行う学生グループです。現在はCOVID-19関連の社会の動きを中心テーマとしています。ここでは、「医療情報」と「医療者・医療系学生の役割」という切り口から私たちの議論の一部をご紹介します。

COVID-19が流行する渦中で、不正確な情報が世に大量に出回ることを指した“infodemic”という概念*1が注目を浴びています。SNS等のインターネット上の強力な発信手段が普及している現代、正しい医療情報を社会へと届けることの重要性はますます高まっていると考えられます。

そもそも「情報」とは何でしょうか。情報の定義は多岐にわたりますが、医療情報については「正しい判断をするために不確実性を減らすもの」という定義が採用されています*2。 医療において100%正しい治療や薬剤といったものはなく、その効果は確率で表される不確実なものです。このような医療における不確実性を減じるために用いられる情報が「医療情報」であると考えられます。

医療情報の中には、科学的根拠に基づいた情報(臨床研究などの学術論文)や、それを専門家が解釈して社会へ発信した情報に加えて、さらにそれを非医療者が解釈した情報が混在しています。そして中には、「新型コロナウイルスは27°Cで死滅するのでお湯を飲むとよい」といった根拠のない情報も含まれています。

実体験(ナラティブ)という形での情報も忘れてはなりません。実体験は、個人の感情や先入観によって必ずしも正確性が保たれていないものの、定量的データからは見えてこない現状を知る点で一定の価値があると思われます。私たちは、実体験(ナラティブ)を記録に残すことの重要性に注目して、医療系学生・若手医療者向けのアーカイブホームページ *3を立ち上げました。

「医療者の役割は何か」という問いは私たちが注力しているテーマの一つです。その問いに対する一つの答えとして、医療情報を状況に応じて社会に還元する「翻訳者」としての役割があると考えています。ここでの「翻訳」には大きく分けて二つの意味があります。一つは、臨床で目の前の患者さんに向けて医療情報を提供し、患者さんの意思決定を助ける役割。もう一つは、公共の場で市民に向けて信頼性の高い医療情報をわかりやすい形で提供し、人々の判断を助ける役割です。

私たち医療系学生も同様の構造を模倣することができます。学生はまだ専門家ではありませんが、一定の医学知識はあり、比較的、論文や専門家による情報に対するチャンネルも持ちやすい環境にあります。このCOVID-19禍においても、全国の医学生によって情報提供を行う様々な取り組みがなされています。私たちも、民間の助成金*4をいただき、独自の視点から COVID-19についてのパンフレットを作成中です。

本稿では「翻訳者」としての医療者の役割について、COVID-19の話題も交えながら紹介しました。「人と医療の研究室Student Group」では、医療と社会の関わりに関心のある学部生を若干名募集しております。議論の内容に関心を持っていただけた方はお気軽にご連絡ください。

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【参考URL】(最終閲覧2020/05/17)
*1World Health Organization, Novel Coronavirus(2019-nCoV) Situation Report-13 https://is.gd/Cc1XVo
*2メディカルノート, 「医療情報とは何か」
https://is.gd/oOTREh
*3人と医療の研究室, 「私たちにとっての新型コロナウイルス感染症 -医療系学生・若手医療者の視点- 」https://is.gd/Pl1uWV
*4一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)https://www.link-j.org

 

5/9 COVIDISCUSSION!」開催報告

TEAM関西×関東医学部勉強会サークルKeMA×広島学生GIM

2020年5月9日に開催いたしました、TEAM関西、関東医学部勉強会サークルKeMA、広島学生GIM共催のオンライン討論式勉強会「5/9 COVIDISCUSSION!」のご報告です。

本勉強会は、「外出ができない今だからこそ全国の医学生とつながれるのではないか」「将来医療に携わる者として今回のパンデミックについて考えたい」という考えのもと、企画されました。当日は、北は北海道大学、南は琉球大学まで全国35大学から合計68名の医学生が参加し、全12グループに分かれて議論の場を持ちました。

イベントの冒頭には、TEAM関西のメンバーからCOVID-19の「構造・疫学」「特徴」「検査・診断」「治療」「感染対策」の各項目について適切な文献に基づいたレクチャーが行われました。低学年の学生にとっては基本的な内容を、高学年の学生にとっては最新の知見を学ぶ機会となり、その後の議論を深めることに役立ちました。

メイン企画では、TEAM関西・KeMA・広島学生GIMのスタッフがファシリテーターとなり、各班5~6人のグループでディスカッションを行いました。第一部では、「コロナの何が怖いの?」をテーマに、それぞれCOVID-19の不安に思っていることや脅威に思う点について考えを出し合いました。その後、全体司会の進行のもとで、各グループから出た意見を共有しましたが、医療的な側面だけでなく、社会的・経済的な影響まで考慮するような意見もあり、各々の視野を広げられたように感じました。第一部で出た意見の中から「医療関係者でない、一般の方が正しい情報を得るにはどのようにすべきか」を第二部の議題として抽出し、再度グループディスカッションを行いました。「医療者側からの情報の伝え方」「一般の方が情報を受け取る際の注意点」「医療従事者同士の情報共有について」などの様々な視点で、活発な議論が繰り広げられました。

本勉強会は、全国の医学生に今回のパンデミックについて考えを深める機会を提供しました。このような人とのつながりを保ちにくい状況のなかでも、医学生同士で交流する場を設けることができたことを嬉しく思います。

【プログラム】
#1. COVID-19情報のおさらい
#2. ワークショップセッション
「コロナの何が怖いの?〜医学的/社会的/経済学的観点から〜」

【団体紹介】

・TEAM関西

Facebookhttps://www.facebook.com/groups/281044805274694/

WEBhttps://teamkansai2.web.fc2.com/

・関東医学部勉強会サークルKeMA 

Facebookhttps://www.facebook.com/kema.education/

WEB https://kemaeducation.wordpress.com/

・広島学生GIM

Facebookhttps://www.facebook.com/hiroshima.student.gim
WEBhttps://hiroshimagim.herokuapp.com/