FACE to FACE
野島 大輔 × 小久保 美央

野島(以下、野):小久保さんとの出会いは、僕がIFMSA*で留学を管轄する役職を務めていた時にフランス留学の報告を依頼したことがきっかけでしたね。同じような留学経験がある小久保さんには、話すうちにシンパシーを感じるようになりました。
小久保(以下、小):野島さんは話しやすくて人のバリアをすぐ解く方という印象でした。他学部を卒業後に医学部に入ったことを知り、強い信念がある方だなと思っています。どのような経緯があったのですか?
野:両親が医師なので医学部に興味はありましたが、思春期は海外への憧れのほうが強かったんです。まずは英語を学ぼうと、高校時代に1年間アメリカに留学しました。帰国後は早稲田大学の国際教養学部で学び、在学中には海外で仕事をするという夢も叶いました。それもあってか、やはり医学部に行きたいという気持ちが何度も湧き上がり、卒業後に受験することを決意したんです。医学部を諦めなかったのは、医師ほど誰かの生活を向上させることのできる仕事はないと思ったからです。また、母が子育て後に医師として再び学ぶ姿を見て、いくつになっても成長できる仕事だと感じたことも影響しています。
小:私は将来、得意な英語を使って社会に貢献したいと思っています。一方で、医師は資格職なので意外と働く国が限定される側面もあります。そうしたしがらみを超えて新しい働き方ができないか模索中なのですが、野島さんは今後英語を活かしてどんな働き方をしたいですか?
野:現在関心があるのは、プライマリ・ケアと産業医療です。これから日本では外国人雇用が増えていくと予想されますが、日本を支える外国の方々が健やかに働くことができ、困ったときには頼れる場所を提供したいと考えています。臨床に携わりながら、皆が見落としがちなマイナーな需要を見つけたいです。小久保さんはどうですか?
小:私は、目の前の患者さんだけでなく、より広い視野で物事を捉えたいと思っています。例えば予防的なアプローチなら、よりグローバルに発展させられるだろうと考え、法人を立ち上げて活動していたこともあります。自分を育ててくれた日本にまずは貢献しつつ、そこからグローバルな活動につなげていけたらいいなと思っています。
野:今の自分にできることに取り組みながらも、外の世界への関心は忘れずにいたいですよね。というのも、医学生の日常は医学部のコミュニティ内で完結しがちです。だからこそ僕は危機感を持って学外に出たし、IFMSAの活動を通じて大学に留学の枠を作ったりもしてきました。こうした活動を通じて周りの医学生の視野や選択肢を広げることが、再受験の自分にとっての使命だと思っています。
小:私も、将来医師になると決まっているからこそ、学生のうちに色々な人の生活を見たいと思い、海外に行ったりアルバイトしたりしてきました。医療はミスが許されない分野だからか、医学生も完璧を求めて尻込みしがちだけれど、学生だからこそ挑戦できることもあるはずです。
野:僕はここまで紆余曲折を経てきたからか、レールを外れることへの恐怖心がないし、むしろ他の人がやらないことをやっている時のほうが「生きてる」と感じられて楽しいですね。
小:私もです! 自分で選び取る人生のほうが楽しくて健康的だし、モチベーションも湧きますよね。求めれば機会は得られるのだから、皆にも色んな経験をしてほしいなと思います。
*IFMSA…International Federation of Medical Students’ Associations(国際医学生連盟)。日本支部としてIFMSA-Japanがある。
野島 大輔(獨協医科大学6年)
早稲田大学国際教養学部卒業。早大時代、アメリカ在住の日本人作曲家のマネジメント業に携わる。自身のアメリカ留学経験を活かし、IFMSA-Japanにて医学生留学の運営に従事、2年間理事を務める。5年次にはウガンダ共和国マケレレ大学病院小児科へ短期留学。現在、Doctors’ Styleの学生幹事を務めている。
小久保 美央(杏林大学6年)
高校生の時にアメリカに留学。留学中にメキシコを訪れた際の経験などから、医師を志すようになる。大学入学後も、フランス・イギリス・アメリカに留学し、視野を広げてきた。大学のESS部では、これまでよりも留学生の受け入れ人数を増やすことに尽力した。また、予防医療に関する活動も行っている。



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